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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第56話 何の村

 夕方、焚き火の火が落ち着いたころ。


 セイがぽつりと聞いた。


「ここ、何の村?」


 ロウが少し笑う。


「余白の村、って呼ばれてます」


「それは名前」


 セイは首を振る。


「何する村?」


 沈黙が落ちる。


 エリナが畑を見て言う。


「作る」


「何を」


「生活」


 セイは首を傾げる。


「南も作ってた」


 正しい。


 ユウトは火を見る。


「止まる村だ」


 ロウが視線を上げる。


「止まる?」


「増やさない。削らない。囲わない」


 セイは考える。


「止まってるだけ?」


「違う」


 ミルナが短く言う。


「……選ぶ」


 セイは火をじっと見つめる。


「選ぶ村?」


 リオルが小さく笑う。


「いいね、それ」


 エリナは静かに言う。


「選ばせる村」


「誰が」


「来た人」


「住む人」


「自分」


 セイは少し考え、言った。


「じゃあ、出ていく人もいる?」


「いる」


 ユウトは即答する。


「止めない」


「さみしくない?」


 一瞬だけ、誰も答えない。


 ロウが言う。


「さみしいです」


 正直な声。


「でも」


「囲う方が、重い」


 エリナが続ける。


 セイはしばらく黙る。


「じゃあ、ここは」


 一拍。


「出ていってもいい村?」


 ユウトは少しだけ笑った。


「そうだ」


「残ってもいい?」


「そうだ」


「怒られない?」


「削れば怒られる」


 ロウが笑う。


 セイも小さく笑う。


 火が揺れる。


「じゃあ」


 セイは小さく言う。


「ここは、選べる村」


 沈黙のあと、ユウトは頷いた。


「それでいい」


 リオルが紙に書く。


 ――余白の村は、選べる村である


 エリナはそれを見て、止めなかった。


 夜風が余白の区画を通る。


 余白は、空きではない。


 余地だ。


 選ぶための余地。


 焚き火の前で、セイが言う。


「今日は、残る」


 誰も引き止めない。


 誰も喜びすぎない。


 ただ、受け止める。


 余白の村。


 止まる村でもない。


 守る村でもない。


 選べる村。


 火は静かに燃えている。


 その火は、囲いではない。


 ただ、そこにある光だった。

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