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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第53話 囲わないという難しさ

 朝、セイはまだ眠っていた。


 毛布にくるまり、焚き火の残り火のそばで小さく丸まっている。


 ロウが小声で言った。


「……どうしますか」


 ユウトはすぐに答えない。


 エリナが先に言う。


「滞在」


「それだけですか」


 ロウの声には迷いがある。


「子供です」


「だから?」


 エリナの問いは冷静だ。


「守るべきでは?」


 沈黙。


 ミルナが森の縁から言う。


「……守ると、囲う」


 ロウは苦しそうに笑う。


「分かってます。でも」


 一拍。


「出ていけ、とも言えない」


 ユウトは焚き火の灰を崩す。


「言わない」


「じゃあ」


「選ばせる」


 ロウが顔を上げる。


「七歳ですよ」


「七歳でも、選べる」


 エリナが静かに言う。


「全部は無理。でも、今ここにいるかどうかは選べる」


 リオルが小さく言う。


「僕も、最初は子供だった」


 ロウはため息をつく。


「でも、食料は有限です」


「削らない」


 エリナは即答する。


「削られるなら、受け入れない」


 その言葉は重い。


 セイが目を覚ました。


 焚き火を見て、ゆっくり起き上がる。


「ここ、あったかい」


 それだけ言う。


 ユウトはしゃがみ込む。


「ここは囲わない」


 セイは首を傾げる。


「囲わない?」


「出ていってもいい。

 残ってもいい」


「どっちがいいの」


「自分で決める」


 セイはしばらく考え、言った。


「まだ、寒い」


 ロウが小さく笑う。


「なら、今は残る?」


 セイは頷く。


「うん」


 それだけだ。


 誓いも契約もない。


 ただ、その日の選択。


 昼。


 セイは畑の端に座り、エリナの作業を見ていた。


「やってみる?」


 エリナが聞く。


 セイは小さく頷き、土に触れる。


 夜。


 焚き火を囲む。


「……囲ってないですよね」


 ロウが確認する。


「囲ってない」


 ユウトは答える。


「出ていく道は残してる」


「でも、情は生まれる」


 ロウは正直に言う。


「当然だ」


 エリナは静かに言う。


「情があっても、縛らなければ囲いではない」


 ミルナが短く言う。


「……選ばせる」


 リオルが紙に書く。


 ――子供にも、選択はある

 ――保護はするが、囲わない


 ユウトはそれを見て、止めなかった。


 火は静かに揺れる。


 余白の村は、

 子供を迎えた。


 だが、囲ってはいない。


 それは難しい。


 だが、それでも基準は崩れなかった。


 迷いながらも、壊れない。


 それが、この村の形だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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