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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第50話 助けないという選択

 南の女が去った夜。


 焚き火の音が、いつもより大きく聞こえた。


 誰も、すぐには口を開かない。


 最初に声を出したのはロウだった。


「……本当に、よかったんでしょうか」


 ユウトは火を見ている。


「何が」


「助けなかったことです」


 エリナは何も言わない。


 ミルナも森の縁で黙っている。


「基準は守りました」


 ロウは続ける。


「囲わない。背負わない。

 正しいです」


 一拍。


「でも、苦しんでるのは事実です」


 沈黙が落ちる。


 ユウトはすぐに答えない。


「助けると、囲いになる」


 静かな声。


「分かってます」


 ロウは頷く。


「でも、完全に切り離すのも……」


 言葉が止まる。


 エリナがゆっくり口を開く。


「救う、とは何」


「困ってる人を楽にすること」


「今だけ」


 エリナは淡々と言う。


「今、楽にして、後で重くなるなら?」


 ロウは視線を落とす。


「……止まれなくなる」


「そう」


 ミルナが短く言う。


「……背負うと、沈む」


 ロウは焚き火を見つめる。


「でも、何もできないんですか」


 ユウトはそこで顔を上げた。


「できる」


 三人が見る。


「問いを渡した」


「それだけですか」


「それ以上は、奪う」


 ロウは眉を寄せる。


「奪う?」


「考える機会を」


 火が小さく弾ける。


「自分で止まる機会を奪う」


 エリナが頷く。


「依存を作る」


「助けると、頼られる」


 ロウは黙る。


 正論だ。


 だが、感情は簡単に整理されない。


 夜が深くなる。


 リオルが小さく言った。


「……僕も、最初は助けてほしかった」


 四人が振り向く。


「でも、ここは助けなかった」


「違う」


 ユウトは首を振る。


「選ばせた」


 リオルは少し笑う。


「だから、残った」


 沈黙がやわらぐ。


 ロウがゆっくり息を吐く。


「助けないのは、冷たいんじゃなくて」


「重くならないため」


 エリナが言う。


「でも、迷う」


 ロウは正直に言う。


「迷っていい」


 ユウトは答える。


「迷わなくなったら、基準は命令になる」


 焚き火が静かに揺れる。


 今日、村は揺れた。


 外ではなく、内側が。


 だが、壊れなかった。


 余白の村は、

 救わない。


 だが、切り捨てもしない。


 選ばせる。


 それが、痛みを伴う選択でも。


 火は揺れながら、消えない。


 迷いは残る。


 だが、それもまた、余白だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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