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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第49話 止まれなかった火

 南の分かれ道の女が、再び現れたのは三日後だった。


 足取りが重い。


「……失敗した」


 焚き火の前で、そう言った。


 ロウが水を差し出す。


「何が」


「増えた」


 短い言葉。


「止まれなかった」


 エリナが静かに聞く。


「なぜ」


「困っている人が来た。

 断れなかった」


 ユウトは黙っている。


「囲わないはずだった。

 でも、守ろうとした」


 女は続ける。


「気づいたら、誰も出ていけなくなっていた」


 沈黙が落ちる。


「食料は?」


 エリナが問う。


「削った」


「生活は?」


「重くなった」


 ミルナが短く言う。


「……止まらなかった」


 女は焚き火を見つめる。


「基準はあった。

 でも、感情に負けた」


 ロウは小さく息を吐く。


「断るの、難しいですよね」


 女は頷く。


「守りたいと思った」


「守ると、囲いになる」


 ユウトが静かに言う。


 女は顔を上げる。


「助けてほしい」


 その言葉は重い。


 だが、ユウトは首を振る。


「助けない」


 ロウが一瞬だけ目を見開く。


 だが、止めない。


「基準はある」


 ユウトは続ける。


「生活を削るな」


「止まれなくなるな」


「囲うな」


 女は目を伏せる。


「戻せるか」


「止まれ」


 短い答えだった。


「増やすな。

 まず、止まれ」


 エリナが補足する。


「減らす勇気も必要」


「出ていけ、と?」


「逃げ道を残せ」


 ミルナが言う。


「……選ばせる」


 女は長く息を吐いた。


「痛いな」


「当然だ」


 ユウトは火を見る。


「思想は軽い。

 運用は重い」


 沈黙。


 やがて女は立ち上がる。


「戻る」


「答えは?」


「持ち帰らない」


 小さく笑う。


「問いは持ち帰る」


 焚き火が揺れる。


 女は深く頭を下げず、去っていった。


 夜。


 ロウが言う。


「……助けませんでしたね」


「囲いになる」


 ユウトは答える。


「でも、冷たいとも思われます」


「いい」


 エリナが静かに言う。


「思想は、代わりに背負えない」


 リオルは紙を見つめる。


 ――止まれ

 ――減らす勇気を持て


 小さく書き足す。


 火は静かに燃えている。


 南の火は、揺れているだろう。


 だが、ここは揺れない。


 余白の村は、

 救わない。


 だが、問いは渡す。


 それが、この場所の形だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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