第48話 答えない答え
南の分かれ道から、若い女が一人やってきた。
装備は簡素。
手は荒れている。
「少し、話を聞きたい」
ロウが焚き火の前に案内する。
「滞在は日帰りですが」
「それでいい」
女は板と紙を見た。
「真似してる」
率直だった。
「分かっている」
ユウトが答える。
「うまくいかない」
女は続ける。
「基準はある。でも、人が迷う」
エリナが静かに言う。
「当然」
「なぜ」
「基準は支えであって、答えではない」
女は少し戸惑う。
「ここは、迷わないのか」
ロウが笑う。
「迷います」
ミルナが短く言う。
「……毎回」
リオルが紙を指す。
「書いてあるけど、決めてるのはその場」
女は焚き火を見つめる。
「私たちは、正解を求めてしまう」
「正解はない」
ユウトの声は静かだ。
「あるのは、削らない選択だけだ」
女は長く息を吐く。
「教えてほしい」
「教えない」
即答だった。
ロウが少し驚く。
だが、ユウトは続ける。
「基準は持ち帰れる。
だが、判断は持ち帰れない」
女は沈黙する。
「なら、どうすれば」
エリナが答える。
「止まる」
「止まる?」
「増やす前に、止まる。
困ったら、止まる」
ミルナが言う。
「……囲わない」
女は小さく頷く。
「私たち、囲おうとしてた」
焚き火が揺れる。
「守るつもりで、縛っていた」
ユウトは何も責めない。
「守りたいなら、逃げ道を残せ」
それだけ言う。
女は立ち上がる。
「答えは、持ち帰らない」
「持ち帰れるのは?」
「問い」
ロウが笑う。
「それで十分です」
女は深く頭を下げず、軽く会釈する。
「真似は続ける」
「止めない」
女は去っていった。
夕方、焚き火を囲む。
「教えませんでしたね」
ロウが言う。
「教えない」
ユウトは頷く。
「囲いになる」
リオルが紙に小さく書き足す。
――答えは持ち帰れない
――問いだけが残る
火は静かに揺れる。
余白の村は、
思想を広めない。
だが、問いは残す。
その問いが、
別の火を揺らすなら、それでいい。
ここは、通過点だ。
答えの場所ではない。
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