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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第46話 通過点の先

 その男は、二度目だった。


 以前、水だけを受け取り、泊まらずに去った者。


 今度は、焚き火の前で立ち止まった。


「少し、話をしてもいいか」


 ロウが頷く。


「滞在は日帰りですが」


「分かっている」


 男は板と紙を見た。


「ここは、避難所じゃないんだな」


 エリナが即答する。


「違う」


「では、何だ」


 その問いは、正面からだった。


 ユウトは少し考えた。


 今まで答えてこなかった問い。


「通過点だ」


 男は首を傾げる。


「それだけか」


「それ以上でも以下でもない」


 ミルナが森の縁から言う。


「……立ち止まれる」


 リオルが付け足す。


「でも、留めない」


 男は焚き火を見つめる。


「立ち止まれる場所は、貴重だ」


 それだけ言って、水を受け取り、去った。


 夕方。


 四人と一人が焚き火を囲む。


「通過点」


 ロウが呟く。


「少し、物足りないですね」


「なぜ」


「拠点でもない。村でもない。

 ただの“途中”みたいで」


 エリナは首を振る。


「途中だから、壊れない」


「でも」


 ロウは言葉を探す。


「何か、残せる場所にもなれるんじゃないですか」


 リオルが顔を上げる。


「残す?」


「通る人が、何かを持っていける」


 ユウトは火を見つめる。


「物資か?」


「違う」


 ロウは首を振る。


「考え方」


 沈黙が落ちる。


 ミルナが短く言う。


「……真似される?」


「されてもいい」


 エリナが静かに言う。


「囲わないなら」


 リオルは小さく笑った。


「思想の通過点」


 ユウトはゆっくり頷く。


「教える場所じゃない」


 一拍置く。


「見て、選ぶ場所だ」


 夜風が、余白の区画を通る。


 ここは、守られる場所ではない。


 ここは、囲う場所でもない。


 だが――


「真似してもいい」


 ロウが言う。


「同じ基準で回る場所が、増えても」


 エリナはしばらく考え、やがて言う。


「広げないが、止めない」


 ミルナが短く言う。


「……軽い」


 リオルは紙に新しい一文を書き加える。


 ――この場所は、通過点である

 ――だが、選び方は持ち帰ってよい


 ユウトはそれを見て、止めなかった。


 余白の村は、

 今日、役割を少し変えた。


 拠点ではない。

 避難所でもない。


 思想の通過点。


 火は静かに燃えている。


 この村は、広がらない。


 だが、影響は、静かに広がり始めている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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