第45話 外から来た目
朝、目が覚めたとき。
ここが「拠点」ではなく、「居場所」になっていることに気づいた。
囲われていない。
門もない。
誰も見張っていない。
それなのに、戻ると決めた場所がある。
それが不思議だった。
焚き火は、すでに起きている。
ロウが鍋を見ている。
エリナは畑に向かう途中だ。
ミルナは森の縁に立っている。
ユウトは、何も指示していない。
それでも、全員が動いている。
「……命令がない」
思わず呟く。
前にいた場所は違った。
判断は上から降りる。
記録は命令だった。
間違えれば、罰があった。
ここは違う。
板の文字は、命令じゃない。
原則だ。
そして、その下に
――この記録は命令ではない
と書いてある。
「変な村」
小さく笑う。
午前中、通りすがりの男が水を求めた。
ロウが対応する。
エリナが量を見て、頷く。
ミルナが嘘を見抜く。
ユウトは、ただ見ている。
それで回る。
僕は、紙に書く。
だが、書いても固定しない。
書いたあとで、エリナが言う。
「例外を追加する」
ロウが言う。
「柔らかく書いて」
ユウトが言う。
「最終判断は現場だ」
そして、僕は書き直す。
夕方。
畑の余白に風が通る。
あそこは、何も植えない場所。
無駄じゃない。
余地だ。
「……この村は、余白でできてる」
基準にも余白がある。
定住にも余白がある。
滞在にも余白がある。
夜、焚き火を囲む。
「残るって、どういうことだと思う?」
ユウトが、僕に聞く。
試されているのではない。
ただ、聞いている。
「囲われないこと」
答える。
「でも、責任は持つこと」
ユウトは少し笑う。
「近いな」
エリナが静かに言う。
「残るとは、選び続けること」
ロウが付け足す。
「安心して、出ていけることでもあります」
ミルナが短く言う。
「……戻れる」
火は、静かに揺れている。
この村は、強くない。
大きくもない。
だが、壊れにくい。
なぜなら、誰も縛られていないからだ。
僕は、ここに残ると決めた。
だが、出ていく自由は消えていない。
それが、この村の形だ。
余白の村。
外から来た目で見ても、
やはり不思議な場所だった。
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