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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第42話 滞在という形

 朝、リオルはもう来ていた。


 焚き火のそばに座り、昨日写した紙を見返している。


「早いな」


 ユウトが声をかける。


「寝床は森の手前。

 囲われてないから、安心して眠れた」


 当然のように言う。


 ロウが小さく笑う。


「囲わないって、便利な言葉ですね」


「便利じゃないよ」


 リオルは顔を上げる。


「選べるってことだから」


 エリナが畑から戻る。


「滞在の条件を決める」


 それは昨日の続きだった。


 ユウトは頷く。


「定住ではない」


「日帰りでもない」


 ロウが言葉を探す。


「中間、ですね」


「滞在」


 リオルが言った。


「数日でも、数週間でも。

 でも、出ていく自由は残す」


 エリナは静かに問いかける。


「対価は?」


「働く」


 即答だった。


「何を?」


「書く。整理する。

 あと、畑も少しは手伝う」


 ミルナが短く言う。


「……体力、弱い」


「知ってる」


 リオルは肩をすくめる。


「だから全部はやらない」


 ユウトは少し考え、板を見る。


 基準はある。


 ――生活を削るな

 ――止まれなくなるな

 ――選べ

 ――囲うな


「生活は削らないか」


「削らない」


「止まれなくならないか」


「ならない」


「囲わないか」


「囲われない」


 ロウが笑う。


「完璧ですね」


 エリナは淡々と言う。


「期間は決めない」


「なぜ?」


「期限があると、囲いになる」


 リオルは頷く。


「出る時は、自分で決める」


 それで決まった。


 午後、リオルは紙を整理し始める。


「原則は上。

 例は別紙。

 判断理由は横にまとめる」


 文字が整うと、不思議と重さが変わる。


「……軽くなった」


 ロウが言う。


「読む順番があると、迷いにくい」


 エリナも頷く。


「言葉が整理されると、感情が減る」


 ユウトは静かにそれを見ている。


 これは拡張ではない。


 だが、村は確実に変わっている。


 夕方。


 通り道の商人が立ち止まり、紙を見る。


「書き直したのか」


「滞在者がな」


 ユウトが答える。


「滞在?」


「定住じゃない」


 商人は少し笑う。


「面白い村だな」


 夜、焚き火を囲む。


「……居心地いい」


 リオルがぽつりと言う。


「だから残る、って言わないのがいい」


 ロウが笑う。


「残ってもいいですよ?」


「囲わないなら」


 エリナが火を見つめる。


「滞在は、選択の連続」


 ユウトはゆっくり頷く。


 余白の村は、

 今日、“定住”でも“通過”でもない形を作った。


 それは、小さな制度だ。


 囲わず、縛らず、

 だが、関わりは残る。


 火は静かに揺れている。


 この村は、

 拡張ではなく、構造で進んでいる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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