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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第4話 最初の手応え

 朝の作業は、土を掘るところから始まった。


 ユウトは家屋の近く、昨日目をつけておいた一角に立ち、地面を見下ろす。

 雑草が伸び、石が転がる、どこにでもある荒地だ。


「ここを……畑にする」


 小さく宣言してから、スコップを地面に突き立てた。


 硬い。

 思った以上に、土が締まっている。


「まあ、最初はこんなもんか」


 無理に力を入れず、表面の草を取り除く。

 石をどけ、土を返し、また石をどける。

 単調だが、嫌いな作業ではなかった。


 しばらくしてから、ユウトは一度手を止め、地面に手のひらを当てる。


 ――《生活基盤最適化》。


 昨日までよりも、感覚がはっきりしていた。

 土の中の水分量、栄養の偏り、根が張りやすい深さ。


「……なるほど」


 畑に向かない理由が、はっきりと分かる。

 同時に、「どうすればいいか」も見えてきた。


 ユウトは魔力をほんの少し流し、土を撫でる。

 劇的な変化は起きない。

 だが、硬さが和らぎ、スコップが入りやすくなった。


「これくらいで十分だ」


 能力に頼り切るつもりはない。

 あくまで、手助けだ。


 作業を再開する。

 土を返し、表と裏を入れ替え、空気を含ませる。

 気がつけば、最初よりも明らかに手応えが変わっていた。


「……畑、だな」


 小さな区画。

 たった数歩分の広さ。

 それでも、昨日までは存在しなかったものだ。


 ユウトは持ってきた種袋を取り出す。

 保存用として携えていた、耐久性の高い作物の種。


「全部は使わない」


 失敗する前提で、少量だけを蒔く。

 覆土し、軽く踏み固める。


 それだけだ。


 水をやり、深く息を吐く。


「……あとは、待つしかないか」


 昼前には、汗で背中が湿っていた。

 だが、疲労よりも、妙な満足感のほうが強い。


 昼食は、昨日と同じ野草のスープ。

 だが、不思議と味が違って感じられた。


「作った、って感覚があるからか」


 午後は、畑の周囲を整える。

 踏み荒らされないよう簡単な目印を立て、排水用の溝を掘る。


 どれも小さな作業だ。

 だが、積み重ねれば形になる。


 夕方。

 ユウトは畑の前に立ち、もう一度地面を眺めた。


 芽は、まだ出ていない。

 当然だ。


 それでも。


「……ちゃんと、進んでる」


 確信があった。


 この土地は、応えてくれる。

 手をかければ、その分だけ。


 日が沈む前に、井戸の周囲を補強し、家の中を整える。

 昨日より、動きに無駄がない。


 夜。

 焚き火を前に、ユウトは畑の方向をちらりと見た。


 暗闇の中に、何も見えないはずの場所。

 それでも、そこに「未来」があると分かる。


「明日も、やることは山ほどだな」


 だが、その言葉に重さはなかった。


 焦らなくていい。

 一つずつでいい。


 ユウトは焚き火の火を落とし、静かに横になる。


 荒れ地での生活は、少しずつだが、確かに形を持ち始めていた。


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