第39話 守られるということ
昼過ぎ、三人組が通り道に現れた。
服装は質素だが、揃っている。
歩き方に迷いがない。
先頭の男が一歩前に出る。
「余白の村で間違いないか」
今度は確認ではない。
確定の響きだった。
ロウが答える。
「そう呼ばれています」
男は小さく頷く。
「地方管理所の者だ」
空気がわずかに変わる。
エリナは畑から視線を外さない。
「用件は」
「提案だ」
男は穏やかに続ける。
「この一帯の正式な保護下に入らないか」
ロウが一瞬、息を止める。
「保護、ですか」
「治安維持、交易優遇、物資支援」
淡々と並べられる条件。
「代わりに、定期報告と最低限の協力を」
ユウトは、今回は家の前に立った。
だが、前に出ない。
ただ、三人の背中を見る。
エリナが先に聞く。
「最低限とは」
「緊急時の物資提供。人員の通過協力」
ロウが小さく言う。
「生活は削られませんか」
男は少し笑う。
「削る必要はない。守るのだから」
甘い言葉だった。
だが、エリナの目は揺れない。
「守られる代わりに、止まれなくなる」
男は沈黙する。
「義務は増える」
エリナは続ける。
「報告は増える。判断は外に影響される」
ロウが静かに息を吐く。
「基準が、ずれる」
ミルナが短く言う。
「……囲われる」
男は否定しない。
「制度の中に入るだけだ」
その言葉を、ユウトは聞いていた。
だが、口を挟まない。
ロウが、エリナを見る。
「どうします?」
エリナは即答しない。
焚き火の音だけが小さく響く。
やがて、エリナが言う。
「今は、不要」
ロウも頷く。
「守られなくても、回ってます」
ミルナは短く言う。
「……囲われない」
三人の意見は揃った。
ユウトは、そこで初めて前に出る。
「結論は出た」
男を見る。
「断る」
男は驚かない。
「理由は」
「止まれなくなるからだ」
静かな声だった。
男はしばらく三人を見つめ、やがて頷いた。
「……理解はできる」
それ以上は何も言わず、去っていく。
夕方、焚き火を囲む。
「少し、怖かったですね」
ロウが言う。
「便利そうでした」
「便利は、重い」
エリナは淡々と返す。
「守られると、守らねばならない」
ミルナが火を見つめる。
「……今日、村だった」
ユウトは頷く。
今日は、彼が決めたのではない。
三人が、基準に従って判断した。
そして、断った。
余白の村は、
守られる道を選ばなかった。
それは、弱さではない。
止まれる強さだった。
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