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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第34話 その後の話

 その噂は、直接ここに届いたわけではなかった。


 森を抜けた先の小さな休憩所で、

 偶然耳にした話を、ミルナが持ち帰った。


「……あの人、文句言ってなかった」


 焚き火のそばで、淡々と告げる。


「若い男。昨日の」


 ロウが少しだけ身を乗り出す。


「何て?」


「『ちゃんとしてた』って」


 短い言葉だった。


 ユウトは何も言わず、続きを待つ。


「余ってるように見えたけど、

 本当に決まってるんだな、って」


 エリナが小さく息を吐く。


「確認された」


「うん」


 ミルナは頷く。


「怒ってなかった。

 “試しただけ”って言ってた」


 ロウが苦笑する。


「やっぱり、試されたんですね」


「線をな」


 ユウトは焚き火を見つめる。


 外の人間は、悪意だけで動くわけじゃない。

 基準が見えれば、それを確かめる。


 それだけのことだ。


 午後、畑の手入れをしながら、ロウが言った。


「……少し、安心しました」


「何が?」


「断ったことで、悪い噂になるかもって」


 エリナは即答する。


「基準が一貫していれば、崩れない」


「でも、全員が納得するわけじゃない」


「納得は必要ない」


 エリナは土を払う。


「理解で十分」


 夕方、また通り道に人影が見えた。


 今度は、立ち止まらない。


 軽く会釈をして、そのまま通り過ぎる。


「……距離が、定まった」


 ロウが言う。


 近すぎず、遠すぎず。


 寄りかからず、敵にもならない。


 夜、焚き火を囲む。


「断られた側が、悪く言わない」


 ユウトは静かに言う。


「それは、強いな」


 ミルナが火を見つめる。


「……怖くない場所」


「甘くないけどな」


 ロウが笑う。


 エリナは頷く。


「甘くない方が、続く」


 今日、何かが増えたわけではない。


 だが一つ、確かなものが増えた。


 この村の“評判”は、

 感情ではなく、構造でできている。


 だから、崩れにくい。


 焚き火の火が、小さく弾ける。


 余白の村は、

 受け入れなかったことで、信頼を得た。


 それは、静かで、地味で、

 だが確実な前進だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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