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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第32話 基準の幅

 朝の空気は穏やかだった。


 昨日と同じように、焚き火に火が入り、鍋が温まる。


 だが、今日は少しだけ、作業の順番が違った。


 ロウが先に保存棚を見に行き、戻ってくる。


「干し肉、少し多めに作っておきませんか?」


 唐突な提案だった。


 ユウトは首を傾げる。


「理由は?」


「最近、通り道の利用が増えてます」


 声は落ち着いている。


「助けを求める人が、また来るかもしれない」


 エリナが即座に口を開く。


「現状維持で十分」


「でも、余裕があるなら」


「今の余裕は、内部用」


 言葉は淡々としているが、硬い。


 ロウは一瞬だけ黙る。


「外に出す余裕じゃない、ってことですね」


「ええ」


 エリナは畑を指す。


「今は、壊れにくい状態を作ってる段階」


 ロウは焚き火を見つめる。


「……僕は、少し違います」


 珍しく、はっきりと言った。


「壊れないだけじゃなくて、余裕を見せたい」


 その言葉に、空気が静かに止まる。


 ユウトは急いで口を挟まない。


「余裕を、見せる?」


「はい」


 ロウは続ける。


「線があるのはいい。でも、硬すぎると怖い」


 エリナの視線が、少しだけ鋭くなる。


「怖がられても問題ない」


「問題あります」


 ロウは穏やかに言う。


「通過点は、安心して通れないと意味がない」


 ミルナが森の縁からぽつりと呟く。


「……基準、違う」


 その通りだった。


 エリナは「壊れない」基準で考えている。

 ロウは「安心できる」基準で見ている。


 どちらも、間違いではない。


 ユウトはゆっくりと息を吐く。


「増やさない」


 二人を見る。


「だが、見せ方は変えられる」


「見せ方?」


「干し肉を増やすんじゃない」


 保存棚の位置を指す。


「見える場所に、少しだけ置く」


 ロウの目が少し明るくなる。


「余裕があるように、見える」


「中身は変えない」


 エリナはしばらく考え、頷いた。


「消費量は増えない?」


「増やさない」


「なら、許容範囲」


 それで決まった。


 午後、保存棚の一部を家の前に移す。

 量は同じ。

 配置だけが変わる。


 外から見れば、

 以前より整っていて、少し豊かに見える。


「……印象、変わる」


 ミルナが言う。


「ああ」


 ユウトは頷く。


 村は、数字だけで動かない。

 印象もまた、外との距離を決める。


 夜、焚き火を囲む。


「……すみません」


 ロウが静かに言う。


「基準、揺らしたくて」


「揺らしてない」


 エリナは即答する。


「幅を確認しただけ」


 それが、この村の強さだった。


 対立は、広がらない。

 基準は、折れない。


 ただ、少しだけ幅ができる。


 余白は、土だけじゃない。

 考え方にも必要だ。


 今日の変化は、小さい。

 だが、村の基準に、ほんの少しの柔らかさが加わった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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