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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第26話 一時の居場所

 夕方前、森の方から慌ただしい足音が聞こえた。


 走る音ではない。

 だが、迷いと焦りが混じっている。


「……来る」


 ミルナが短く告げる。


 ユウトは家の前に立ち、全員に目配せした。


「泊まりじゃない可能性が高い。慌てるな」


 やがて現れたのは、若い女だった。

 背負い袋は軽く、片足を引きずっている。


「……すみません」


 声は掠れていた。


「少しだけ、休ませてください」


 即座にエリナが足元を見る。


「捻挫。無理して歩いた」


 ロウが水を用意し、ユウトは静かに問いかける。


「日没までに動けるか」


 女は少し考え、首を横に振った。


「……無理です」


 ユウトは頷いた。


「分かった。今日は休め」


 ロウが驚いた顔をするが、何も言わない。


 女は焚き火のそばに座らせ、足を冷やす。

 エリナは余った布で簡単な固定をする。


「骨は無事。明日には歩ける」


「……ありがとうございます」


 女の声に、涙はなかった。

 それが、余計に現実的だった。


 名は、リナ。

 一人で街を目指していたという。


「ここに、住めますか」


 率直な問いだった。


 ユウトは即答しなかった。


 代わりに聞く。


「今すぐ、住む理由は?」


 女は視線を伏せる。


「……行き場が、ない」


 ロウが一瞬だけ口を開きかけ、止めた。


 エリナが静かに言う。


「ここは、定住前提の場所じゃない」


 冷たい言葉だが、嘘はない。


「生活を回す余裕が、まだない」


 リナは唇を噛み、頷いた。


「……分かってます」


 その理解の早さに、ユウトは少しだけ安堵した。


「今夜は休め。明日、歩けるようになったら、道を教える」


「それだけで、十分です」


 夜、焚き火のそばで簡単な食事を取る。


 量は決まっている。

 誰も、特別扱いはしない。


 リナはそれを黙って受け取った。


「……噂、聞きました」


 食後、ぽつりと言う。


「断る村だって」


 ロウが苦笑する。


「正確には、選ぶ、です」


「……だから、来ました」


 全員が、少しだけ驚く。


「何でも受け入れる場所なら、頼れなかった」


 リナは焚き火を見つめる。


「ここなら、線を越えないで済む」


 ユウトは静かに息を吐いた。


「泊めるのは、今夜だけだ」


「はい」


「朝、足が動けば、送る」


「お願いします」


 夜が深まり、リナは休んだ。


 残った三人と一人は、火を囲む。


「……正しかったのかな」


 ロウの小さな声。


「正しい」


 エリナは即答する。


「定住させていたら、次が続かない」


 ミルナは短く言った。


「……線、守った」


 ユウトは火を見つめる。


「居場所を作るのと、囲い込むのは違う」


 今日の支援は、短い。

 だが、確かに意味があった。


 ここは、救いの場ではない。

 だが、通過点にはなれる。


 村になる前に必要なのは、

 留める力ではなく、送り出す力だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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