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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第19話 決まりごと

 朝食の準備は、静かに始まった。


 ロウが火を起こし、ユウトが鍋をかける。

 エリナは畑を一周してから戻ってきた。


「今日は、配分を決めよう」


 最初に口を開いたのは、ユウトだった。


 宣言というより、確認に近い。


「昨日みたいなズレは、小さいうちに潰したい」


 ロウがすぐに頷く。


「助かります。決まってないと、気を使い続けることになる」


 エリナは少し考えてから言った。


「数値化できるなら、反対しない」


 それで十分だった。


 ユウトは枝を一本取り、地面に簡単な線を引く。


「食事は、一人分を基準にする」


 鍋を指す。


「重労働の日は、申告して増やす。黙って取らない」


 エリナは即座に頷いた。


「合理的」


 ロウも笑う。


「分かりやすいですね」


 次に、作業の話になる。


「畑は、エリナ主導」


 ユウトははっきりと言った。


「住居と生活回りは、ロウ主導」


 二人を見る。


「俺は全体。詰まったところを調整する」


 エリナは腕を組み、短く言う。


「責任範囲が明確になる」


 ロウも同意する。


「助かります。相談先が分かる」


 ミルナは少し離れた場所で聞いていた。


「……決まり、多い」


 ユウトは苦笑する。


「最低限だ」


 線をもう一本、地面に引く。


「無理はしない。体調が悪いときは、休む」


 ロウが真っ先に反応した。


「それ、明文化していいんですか?」


「ああ。言わないと、我慢する人が出る」


 エリナは少し考え、頷いた。


「長期的には、その方が効率がいい」


 決まりは、三つだけ。


 食事の配分。

 役割の主導。

 無理をしない。


 それだけだ。


 午前中の作業は、驚くほど静かだった。


 エリナは畑に集中し、

 ロウは住居予定地の資材を整理する。


 ユウトは二人の動きを見ながら、足りないところを補う。


 指示は出さない。

 聞かれたら答える。


 昼食の配分も、自然だった。


「今日は、畑きつい」


 エリナがそう言うと、ロウが量を調整する。


「了解」


 誰も、気まずくならない。


 ミルナは焚き火のそばで、肉を齧りながら言った。


「……面倒、減った」


「だろ」


 ユウトは笑った。


 夕方、作業を終えたとき、疲労はあった。

 だが、昨日より軽い。


「……回ってるな」


 思わず、そう口にする。


 ロウが頷く。


「ええ。小さいですけど、ちゃんと」


 エリナも、畑を見て言った。


「無駄が減った。数字が合い始めてる」


 夜、焚き火を囲む。


 決まりを作った実感は、ほとんどない。

 だが、確かに違っていた。


 これは、命令でも、契約でもない。

 生活の中で、自然に固まった形だ。


「……村、近い」


 ミルナの言葉に、ユウトは頷いた。


「ああ。でも、まだ名乗らない」


「なぜ?」


「名乗ると、背負うものが増える」


 火が、静かに揺れる。


 今日は、何かを作った日ではない。

 だが、何かが「定まった」日だった。


 村になる前に必要なのは、

 立派な建物じゃない。


 こうした、小さな決まりごとだった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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