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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第18話 少しのずれ

 朝の空気は穏やかだった。


 だが、焚き火の前に立った瞬間、ユウトは小さな違和感を覚えた。


「……量、減ってるな」


 鍋の中の野草が、いつもより少ない。

 誤差の範囲と言えば、それまでだが――続けば困る。


 ロウは気づいた様子で、すぐに答えた。


「朝、エリナが少し多めに取りました。畑仕事、長くなるって」


 エリナは悪びれず、頷く。


「空腹だと判断が鈍る。効率が落ちる」


 理屈は、通っている。


 ユウトは一瞬考え、それ以上は言わなかった。


「分かった。次からは、量を決めよう」


 それで終わりにする。

 だが、その小さな出来事は、確かに残った。


 午前中、畑の作業は順調だった。

 エリナの指示で区画が整理され、水の回りも改善されている。


 ただ、ロウの動きが、少し鈍い。


「……ロウ、どうした?」


 声をかけると、ロウは苦笑した。


「いや、畑のやり方が分からなくて。邪魔になるくらいなら、別のことをやろうかと」


 エリナは即座に答える。


「畑は任せて。ロウは住居」


 その言い方に、棘はない。

 だが、線は引かれた。


 ロウは頷き、黙って別の作業へ向かう。


 昼前、ミルナが森から戻ってきた。


「……空気、少し変」


 短い言葉だが、核心を突いていた。


「喧嘩じゃない。ただ、噛み合ってない」


 ユウトは頷く。


「分かってる」


 午後、住居予定地で作業をしていると、ロウが声を上げた。


「この梁、こっち向きの方がいいんじゃ?」


 エリナは畑から顔を上げる。


「それだと、冬に風が抜ける」


「でも、今は材料が足りない」


「だから、今やる必要がない」


 言葉は冷静だ。

 だが、噛み合わない。


 ユウトは二人の間に立つ。


「今日は、仮でいい」


 二人を見る。


「完璧を目指さない。続ける前提で作る」


 エリナは一瞬だけ黙り、頷いた。


「……了解」


 ロウも、ほっとしたように息を吐く。


 夕方、作業を終えて焚き火を囲む。


 今日の食事は、朝よりも少ない。

 誰も文句は言わない。


 だが、全員が気づいていた。


 一人のときは、考えなくてよかったこと。

 二人のときは、話し合えば済んだこと。


 三人、四人になると――

 「決めないといけない」ことが増える。


 ミルナが、ぽつりと言った。


「……村、面倒」


 ユウトは苦笑する。


「そうだな。でも」


 一拍置いて、続ける。


「面倒を、放置しないのが村だ」


 ロウが、ゆっくりと頷く。


「決まり、必要ですね」


 エリナも同意する。


「最小限でいい。数字が合う形で」


 火が、ぱちりと弾ける。


 今日一日は、大きな失敗も、成功もなかった。

 だが、確実に一歩進んでいる。


 この場所は、

 人が集まれば自然に回る場所ではない。


 だからこそ、

 回すための「ずれ」を、今のうちに見つけていく。


 村になる前の、必要な摩擦だった。


ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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