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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第12話 二人分の限界

 朝、ユウトが目を覚ますと、家の中にもう一つの気配があった。


 布の敷かれた隅で、ミルナが丸くなって眠っている。

 耳が、ぴくりと動いたが、起きる様子はない。


「……静かだな」


 昨日までと同じ朝。

 だが、どこか違う。


 ユウトは音を立てないよう外に出て、井戸へ向かった。

 水を汲み、畑を確認し、焚き火の準備をする。


 やることは、増えている。


 自分一人のときは、後回しにできた作業。

 今は、そうもいかない。


 火を起こし終えた頃、ミルナが外に出てきた。


「……おはよう」


「起こしたか?」


「大丈夫」


 短いやり取り。

 だが、自然だった。


 二人で朝食をとる。

 干し肉と、野草。

 量は多くない。


 ミルナは黙って食べながら、周囲を見回している。


「……ユウト、忙しい」


「そう見えるか」


「一人のときより」


 否定できなかった。


「二人分、だからな」


 ミルナは少し考え込む。


「……楽?」


「楽な部分もある」


 正直に答える。


「だが、全部じゃない」


 午前中は畑の手入れに時間を割いた。

 芽が増え、世話が必要になってきている。


 水をやり、雑草を抜く。

 気づけば、想定よりも時間がかかっていた。


「……今日は、狩り、行けない?」


 ミルナの問いに、ユウトは首を振る。


「行けないな。畑を放置できない」


 ミルナは不満そうではなかったが、少しだけ視線を伏せた。


 午後は保存食の整理。

 干し肉の場所を変え、風通しを調整する。


 作業は順調だ。

 だが、余裕はない。


「……冬」


 唐突に、ミルナが言った。


「この量、足りない」


 ユウトは干し肉を見上げ、計算する。


「……ああ。足りないな」


 正確な数字を出すまでもない。


「二人でも、これだ」


「増えたら?」


「もっと足りない」


 言葉にすると、現実がはっきりする。


 一人なら、多少無理がきいた。

 だが、二人分となると話は違う。


 怪我。

 病気。

 天候不順。


「……ここ、続けるなら」


 ユウトは手を止め、ミルナを見る。


「人が、必要だ」


 ミルナは驚かなかった。

 むしろ、納得したように頷く。


「……そう思った」


「だろうな」


 夕方、作業を終えて家の前に座る。

 二人分の道具が、並んで置かれている。


 増えたのは、物だけじゃない。

 考えることも、責任もだ。


「……一人は、楽だった」


 ユウトの呟きに、ミルナが答える。


「でも、続かない」


「そうだ」


 否定はなかった。


 空が赤く染まり、影が伸びる。


 ここは、まだ村ではない。

 だが、一人の場所でも、もうない。


「……次は、どうする?」


 ミルナの問いは、静かだった。


 ユウトはすぐには答えず、荒れ地を見渡した。


 畑。

 家。

 井戸。


 そして、その先。


「考える。人を、どうやって増やすか」


 それは、決意というより、生活の判断だった。


 二人分の暮らしは、限界を示している。

 同時に、次へ進む理由を、はっきりと示していた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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