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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第11話 火を挟んで

 焚き火の火は、いつもより少し小さめだった。


 干し肉を作るため、薪を節約している。

 それでも、火があるだけで夜の気配はずいぶん違った。


 ユウトは焚き火のそばに腰を下ろし、串に刺した肉を回す。

 向かい側には、ミルナがいた。


 森に戻ると言っていたはずだが、今日はまだ動く気配がない。


「……今日は、泊まるのか?」


 独り言に近い問いだった。


 ミルナは火を見つめたまま、少し間を置いてから答える。


「夜、動きにくい」


「そうか」


 それ以上は聞かない。

 理由を詮索するつもりはなかった。


 しばらく、肉の焼ける音だけが続く。

 沈黙は、もう気まずくなかった。


 やがてミルナが口を開く。


「ユウト」


「ん?」


「……ここ、ずっと使う?」


 問いは短い。

 だが、その裏に含まれるものは多かった。


「使うつもりだ」


 即答だった。


「少なくとも、今はな」


 ミルナは耳を伏せ、焚き火をつつく。


「……ここ、いい場所。でも」


 言葉が、そこで途切れる。


 ユウトは肉を火から外し、皿代わりの木片に置いた。


「続かない、って顔だな」


 ミルナは一瞬だけ目を見開き、すぐに視線を逸らした。


「……人、増えたら」


「森に居づらくなる、か?」


 ミルナは小さく頷く。


「前も、そうだった」


 それ以上は語らない。

 だが、それで十分だった。


 ユウトは焚き火を見つめながら、静かに言う。


「無理に引き止めるつもりはない」


 ミルナの耳が、ぴくりと動く。


「ここは、誰かを縛る場所にする気はない」


 自分の言葉を、噛みしめるように続ける。


「無理をした生活は、長く続かない」


 ミルナは、初めてユウトの顔を見た。


「……それ、ユウトの考え?」


「ああ」


 少しだけ、間を置いて付け加える。


「ここを作るときの、基準でもある」


 ミルナは火を見つめ、しばらく黙っていた。

 やがて、ぽつりと言う。


「……ここ、人の匂い、少ない」


「まだな」


「……増えたら、変わる」


「変わるだろうな」


 否定はしない。


「だから、考えないといけない」


 ミルナは首を傾げる。


「何を?」


「どうやって続けるか、だ」


 火が、ぱちりと音を立てる。


「人が増えれば、楽になることもある。だが、面倒も増える」


「……嫌?」


「嫌じゃない。必要なら、やる」


 その答えに、ミルナは少しだけ目を細めた。


「……不思議」


「そうか?」


「ユウト、人のこと、使わない」


 ユウトは小さく笑った。


「使い捨ての生活は、もう懲りた」


 それきり、二人は黙って肉を食べた。


 夜は深まり、森の音が増える。

 だが、焚き火の周りだけは、静かだった。


 食事を終えたあと、ミルナは立ち上がる。


「……今日は、ここ」


 短くそう言って、家の方を指した。


「分かった。場所は、空けてある」


 それだけで十分だった。


 ミルナは家の中へ入り、ユウトは焚き火の後始末をする。


 火を落としながら、ふと思う。


 一人で完結する生活は、確かに楽だ。

 だが、それは長くは続かない。


「……考える時期、か」


 小さく呟き、家へ向かう。


 荒れ地での生活は、静かに。

 だが確実に、次の段階へ進もうとしていた。


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