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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第10話 並んで働く

 昼前、森の縁に動きがあった。


 ユウトが井戸のそばで作業をしていると、草を踏む音が近づいてくる。

 斧に手を伸ばしかけてから、思い出して手を止めた。


「……来たか」


 姿を現したのは、ミルナだった。

 肩には、小型の獣を一頭担いでいる。


「約束」


 短くそう言って、地面に獲物を下ろした。


「守るんだな」


 ユウトは頷き、獲物を確認する。

 大きくはないが、肉付きは悪くない。


「これなら、十分だ」


 ミルナはじっと、その様子を見ている。

 獲物の扱いを見極めているのだろう。


 ユウトは包丁を取り出し、手早く解体を始めた。

 血が流れ、土に染み込む。


 ミルナの耳が、ぴくりと動いた。


「……無駄、少ない」


「慣れてるだけだ」


 内臓を分け、肉を切り分ける。

 保存用と、今日食べる分。


 作業は静かに進んだ。


 やがて、ミルナが口を開く。


「水、ここ?」


「そうだ」


 井戸を指すと、ミルナは近づき、覗き込んだ。


「……深い」


「一人で掘るのは大変だった」


 事実を言っただけだ。

 誇るつもりも、卑下するつもりもない。


 ミルナは何か考えるように黙り込み、やがて言った。


「手、貸す」


 ユウトは一瞬だけ驚いたが、すぐに頷いた。


「助かる」


 二人で水を汲み、運ぶ。

 無駄な言葉はない。


 だが、作業は不思議と噛み合っていた。


 畑に水をやり終えた頃、ミルナが芽に目を留める。


「……育ってる」


「ああ。まだ小さいがな」


 ミルナはしゃがみ込み、土を指で触った。


「悪くない土」


「そうか」


 評価されることに、妙な嬉しさを感じる。


 昼、焚き火で肉を焼く。

 香ばしい匂いが、辺りに広がった。


 ミルナの視線が、肉から離れない。


「……熱い」


「冷ませばいい」


 少し待ってから、二人で食べる。

 言葉は少ないが、沈黙は重くない。


「……うまい」


 ミルナがぽつりと言った。


「それは良かった」


 午後は、肉の保存作業に移った。

 干す場所を決め、風通しを考える。


 ミルナは手際よく、紐を結び、位置を調整する。


「森だと、こうする」


「参考になる」


 教えるでも、教えられるでもない。

 ただ、並んでやっている。


 作業が一段落した頃、ミルナは家の方を見た。


「……ここ、泊まる?」


 問いというより、確認だった。


「必要なら。だが、無理はさせない」


 ミルナは少し考え、それから首を横に振った。


「今日は、戻る」


「分かった」


 それでいい。


 夕方、ミルナは森へ帰っていった。

 振り返らず、音も立てずに。


 ユウトは一人、干し肉を見上げる。


 朝にはなかったもの。

 今日、二人で作ったもの。


「……悪くないな」


 並んで働くというのは、

 思っていたよりも、自然だった。


 荒れ地には、確実に「生活の気配」が増えていた。


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