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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第1話 追放先は、何もない土地でした

王都の仕事は、

生活よりも効率が優先される世界だった。


人がどう暮らすかより、

どれだけ早く形にするか。

それに疑問を持ち続けた結果、

俺は辺境へ追放されることになった。


送られた先は、

人が住むことを諦められた土地。

壊れた家と、荒れた土だけが残っている。


怒りは、あまりなかった。

むしろ――肩の力が抜けた。


もう、誰かに急かされなくていい。

なら、ここでやることは一つだ。


争わず、無理をせず、

ただ「暮らせる形」に整える。


これは、

何もない辺境から始まる、

静かな村づくりの記録である。

 その通達は、あまりにも事務的だった。


「本日付で、君の開拓任務は終了だ。次の赴任先は――ここになる」


 机の上に置かれた地図を見た瞬間、ユウトは小さく息を吐いた。

 王都から何日もかかる辺境。かつて開拓が試みられ、失敗した土地。

 人の住まなくなった場所には、名前すら残っていない。


「……なるほど。追放、というやつですね」


 上司は否定もしなければ、肯定もしなかった。

 戦争用の開発計画を断り、生活優先の案を出し続けた結果がこれだ。

 功績は横取りされ、邪魔者は遠ざけられる。


 怒りがなかったわけではない。

 だが、それ以上に、肩から力が抜けていく感覚があった。


「もう、誰かの顔色をうかがって仕事をしなくていいんだな……」


 そう呟いた自分の声が、ひどく穏やかだったことに、少し驚く。


 数日後。

 荷馬車に最低限の道具と食料を積み、ユウトは一人でその地に降り立った。


 目の前に広がるのは、荒れた平地。

 雑草と石が混じり、耕された形跡はほとんど残っていない。

 少し離れた場所に、壁の崩れた家屋が一軒。屋根も半分ほど落ちている。


「……うん。ひどいな」


 誰に聞かせるでもなく、そう言った。


 だが、不思議と絶望はなかった。

 王都で味わった息苦しさに比べれば、この静けさは心地いい。


 まずは状況確認だ。

 ユウトは地面に手を当て、意識を集中させる。


 ――《生活基盤最適化》。


 淡い感覚が広がり、土地の状態が頭に流れ込んでくる。

 水脈は深いが存在する。

 土は痩せているが、改良は可能。

 魔物の気配は、今のところ薄い。


「住めない、ってほどじゃないな」


 能力は万能ではない。

 一瞬で畑が実るわけでも、家が建つわけでもない。

 だが、「生活を成立させるための最短手順」が、ぼんやりと見える。


 まずは水だ。

 ユウトは崩れた家屋の近くに、仮の溝を掘り始めた。

 日が傾くころには、集めた雨水が小さな窪みに溜まっている。


 次に、寝床。

 倒れた壁材を立て直し、屋根の穴を布で塞ぐ。

 見た目は悪いが、風は防げる。


 日が沈む。

 焚き火の前に腰を下ろし、乾パンをかじる。


 ……静かだ。


 王都では、夜になっても音が消えることはなかった。

 誰かの怒鳴り声、馬車の音、終わらない仕事の気配。


 ここには、それがない。


「明日は……井戸だな」


 独り言が、闇に吸い込まれていく。


 夜半、遠くで獣の鳴き声がした。

 反射的に身構えたが、近づいてくる様子はない。


 ユウトは焚き火に薪をくべ、炎を少し強くした。


「大丈夫だ。慌てるな」


 誰に言い聞かせるでもなく、そう呟く。


 この場所で、無理をするつもりはない。

 急がない。争わない。

 ただ、暮らせる形にするだけだ。


 やがて、まぶたが重くなる。

 硬い地面の上で横になり、空を見上げると、星がやけに近く感じられた。


 ――翌朝。


 冷たい空気と、鳥の声で目が覚める。

 身体は痛いが、不思議と気分は悪くない。


 ユウトはゆっくりと起き上がり、朝の光に照らされた荒地を見渡した。


「……さて」


 何もない。

 だが、昨日よりは、確実に「ここで暮らす」輪郭が見えている。


 彼は道具を手に取り、一歩を踏み出した。


 この場所が、ただの荒れ地で終わらないことを、

 まだ誰も知らない。


ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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