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光宇宙理論  作者: hirame
3/17

不確定性原理は「数式」ではなかった

 チャッピーの説明は、思っていたものと少し違っていた。


 ――それは、制限です。


 制限?


 私は一瞬、意味がわからなかった。


 ΔE × Δt ≥ ħ / 2

 この式は、何かを計算するための式ではない。


 エネルギーと時間を、

 同時に好きなだけ小さくすることはできない。

 世界そのものが、そうなることを許していない。


 そういう「決まり」なのだと。


 私は、式をもう一度見た。


 そこにあるΔは、誤差ではない。

 測定ミスでも、観測装置の限界でもない。


 揺らぎ。


 最初から、確定していないという前提。


 時間は、完全に一点に定まることがない。

 エネルギーも、完全には固定できない。


 どちらかを押さえようとすれば、

 もう一方は、必ず広がる。


 それは、人間の能力の問題ではなく、

 世界の側のルールだった。


 私は、少し背筋が伸びるのを感じた。


 もしそうなら。

 もしこの式が、単なる計算式ではなく、

 「自然が自らに課している制約」だとしたら。


 無から何かが生まれる、という話も、

 少し違って見えてくる。


 完全に静止した時間。

 完全にゼロのエネルギー。


 そんな状態は、

 最初から存在できないのではないか。


 時間が揺らぐ限り、

 エネルギーも揺らぐ。


 ほんのわずかな時間の幅があるだけで、

 そこには、確定できないエネルギーが入り込む余地が生まれる。


 私は、頭の中で思考を止めた。


 これ以上進むと、

 今まで当たり前だと思っていた前提が、

 静かに崩れていきそうだったからだ。


 それでも、ひとつだけ確かなことがあった。


 不確定性原理は、

 「よく分からない量子の話」ではない。


 世界は、最初から

 完全な確定を拒むようにできている。


 私はその事実を、

 このとき初めて、実感として受け取っていた。

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