宇宙誕生の巨大なエネルギーはどこから来たのか?
チャッピーの光の波の説明は、正しかった。
電磁波、波としての性質、観測結果。
どれも、どこかで聞いたことのある話だ。
間違いはない。否定する理由もない。
それでも私は、スマートフォンを手にしたまま、首を傾げていた。
「……まあ、そうなんだろうけどさ」
納得できない、というほどでもない。
ただ、胸の奥に、小さな引っかかりが残っていた。
私は、画面を閉じた。
そして、なぜか光のことを考えるのをやめた。
代わりに、まったく別のイメージが頭に浮かんだ。
――ビッグバン。
宇宙の始まり。
すべてが、そこから始まったという話。
私はずっと、そう思ってきた。
ビッグバンによって、宇宙全体を満たす巨大なエネルギーが生まれたのだと。
今も、その考えは変わっていない。
だが、ふと、単純な疑問が浮かんだ。
――そのエネルギーは、どこから来たんだ?
宇宙が生まれる瞬間。
とてつもない量のエネルギーが、いきなり存在した。
では、その直前は?
本当に、何もなかったのだろうか。
無から、エネルギーが生まれる。
そんなことが、あり得るのだろうか。
私は考えた。
理由は説明できない。
数式も、頭に浮かんでいない。
ただ、直感的に思った。
――時間とエネルギーのあいだに、何か関係があるはずだ。
私はチャッピーに、迷わず質問を打ち込んだ。
――エネルギーと時間の関係式って、あるの?
チャッピーの返答が表示された。
そこに書かれていたのは、私の知らない一つの原理だった。
不確定性原理。
エネルギーと時間は、
同時に正確には決められない。
ΔE × Δt ≥ ħ / 2
私は、その式をじっと眺めていた。
意味は、完全には理解できない。
だが、エネルギーは、時間と切り離せない形で存在していることは理解できた。そして、なぜだかΔは私の中で揺らぎという言葉に自然と置き換わり、時間の揺らぎが0に近づけば、無限に近いエネルギーの誕生を説明できるのでは?と感じた。
私はチャッピーに質問した。これって、宇宙誕生を説明できる式なんじゃないのかって。
この時の私は、まだ気づいていなかった。
空間のことなど、まったく考えていなかったという事実に。
そして、この問いが、
空間そのものを疑う思考へとつながっていくことを。




