文芸部の見学
放課後の廊下を進む。節電のため電気は消えていたが、窓から差し込む西日で廊下は明るい。新入生の勧誘のために、手作りの看板を持った先輩方が声を上げながら通り過ぎていく。音楽部は歌を歌いながら行進していて、その熱量に少し引いてしまう。
ああ、引いてしまうのがダメなんだろうな、と思う。一つのことに没頭していて、自分のやりたいことに青春を捧げている人を一歩引いた視点で見てしまうのが、たぶんダメなんだ。自分もその中に身を投げ込まないと、きっと自分は変われない。
考え事をしながら歩いていたのが悪かった。廊下の突き当りを左に曲がったところ、視界が障害物で埋め尽くされる。
「うわっ!」
本を持った人と衝突する。あまり勢いが強くなかったからお互い転倒することはなかったが、向こうは運んでいた本を落としてしまった。
「ああ、すみません。前が見えていなくて」
と向こうは謝ってくる。僕より少し背が低い男子生徒だった。襟の校章の緑色を見るに、二年生らしい。
「いえ、こちらこそすみません。ごめんなさい」
廊下に散らばってしまった本に手を伸ばす。夏目漱石の『こころ』、ポール・オースターの『ムーン・パレス』、ドストエフスキーの『罪と罰』、三島由紀夫の『奔馬』、ユゴーの「レ・ミゼラブル」の分冊……。様々な色の付箋がそれらには貼られている。
前が見えていなくて、と言ったが、これだけの量の本を抱えていたのであれば、無理もない話だった。バランスを崩して転倒しなかったのが不幸中の幸いだ。
「……本、好きなんですか?」
向こうが、そう聞いてきた。
「え? ……どうしてそう思ったんですか」
「表紙を確認するように、本を集めていたから」
「ああ……いや、別にそういうわけでは」
「よかったら差し上げましょうか」
と予想外の提案をされて僕は少なからず驚く。
「え、いや、いいですよ。申し訳ないですし」
「遠慮しなくてもいいんですよ。これらはもう、必要のないものですから」
図書室の本を廃棄しているのだろうか? 確かに、相手が持ち運んでいた本は、何度も読まれたらしく、形が少し歪んでいるように見えた。
結局、僕は提案をお断りした。提案を呑んだら、全ての本を引き受けなければいけないような気がしたからだ。あいにく、前が見えなくなるほどの本を引き受ける余裕には僕にはなかった。
「ありがとうございました」
男子生徒はまた、両手に本を抱え、よたよたと廊下を進んでいき、勧誘に勤しむ部員の波に見えなくなった。あの調子だと、またすぐに誰かにぶつかって本を落としそうなものだが、必要以上に心配するのも筋違いだろう。彼がどこを目指しているのかは知らないが、僕にもいかなければいけない場所がある。
特別教室が集まる、西の校舎。その二階にある多目的室の扉の前に立つ。
文芸部の部室だ。
遠くからは吹奏楽部の演奏が聞こえてきた。曲目はわからないが、賑やかなその音楽は聴いていて楽しい。青春を彩るBGMとまでは言えないけれど、無音であるよりかはあってくれたほうがいい。
ちょっと、緊張する。
ま、緊張してもどうしようもないか。
深呼吸を二度してから、引き戸を開ける。
「…………」
誰もいなかった。狭い教室には、机と椅子がいくつか並んでいる。右側の壁にある黒板には窓ガラスから斜めに差し込んだ真四角の光がくっきりと写っていた。その反対側には本棚が並べられていて、様々な色の背表紙の本が差し込まれている。息を吸うと、それらが醸し出す古い空気の香りがした。
「……休み、なのかな」
扉を閉めて部屋の中に入る。空いている机に通学鞄を置き、窓から外を覗いた。校庭では、野球部、サッカー部、陸上部やラグビー部がウォームアップで走っているのが見えた。声を上げ、並んで走っている彼らを見ていると、なんだか自分がひどく孤独な存在であるような気がする。事実そうなのかもしれないが、かといって彼らに参加する勇気は僕にはなかった。孤独でなければいい、というわけでもないのだ。
「……帰るか」
そう呟いた瞬間、後ろで、引き戸が開く音がした。
女子生徒が、入り口のところに立っていた。
「こんにちは」
と彼女が言うのに少し遅れて、こんにちは、と返す。
「文芸部って、ここですか?」
「たぶんそう、そのはずだけど……今日は休みみたい」
「休み? あなたは?」
「僕は部員じゃない。見学に来たんだけど、誰もいなかった」
「ああ、ということは同い年」
相手も一年生か。部活動見学に来たのだろう。お互い、間違った日に見学に来てしまったわけだ。
「部活動紹介のパンフレットには、火曜日は活動日って書いてあったんだけど」
と言いながら、その生徒はブレザーのポケットから緑色の表紙の小冊子を取り出した。確か、少し前の集会で配られたものだ。僕はそれを、あまり見ないでどこかへ失くしてしまったが、こうして活用している生徒もいるらしい。
「……うん、やっぱり、火曜日は活動があるって書いてある」
ほら、と言いながら彼女はこちらに近づいてきて、冊子のページをこちらへ向けた。彼女の人差し指に示された文芸部の紹介欄には、確かに火曜日は活動日と書いてあった。
文芸部の紹介ページは、ほかの部活に比べて簡素だった。書いてあるのは活動を行っている教室、曜日、部員の数だけだった。その部員数も一名のみ。部員僅少で廃部になったりしないのだろうか。校則で部活を存続させるための最低限の人数が設定されている、と勝手にイメージしていたのだが。
「ねえ、ちょっと訊いてもいい?」
と向こうが訊ねてくる。どうぞ、と言う間もなく、彼女は質問を重ねる。
「文芸部って何をするところなの?」
「何をって……本とかに興味があってここに来たんじゃないの?」
「ある部活は全部回ってるんだよ。実際に見てみないとわからないこともあるし、見もせずに選択肢から外してしまうのはもったいないじゃない?」
「全部って……全部?」
頭の悪い問い返しに、彼女はふっと笑って応える。
「そう。全部って全部だよ。バスケ部にバドミントン部に科学部に。生物同好会、数学同好会にも行ったよ。今日は文芸部と放送部と新聞部、茶道部の日」
「へえ……凄いな、全部を回ろうとするなんて。嫌いな……というか、自分には向いてなさそうな部活も行ってるの?」
「うん。というか、実際に見てみないとどれが自分に向いているかどうかなんてわからないでしょう? やってみたら思っていたよりも楽しい、思っていたよりも自分に向いているものって、たくさんあると思うんだよね」
その言葉に、僕は少なからず感動を覚えた。
「実際そうなんだろうけど、だからといって全部の部活を見学しようと思う人はなかなかいない」
「もったいないよ、皆。せっかく堂々と部活を見学できる期間なのにさ。機会の莫大な損失です」
機会の損失。そんなこと、考えもしなかった。考えもせずに失われていく機会は、今までにもたくさんあったのかもしれない、となんとなく反省させられる心地だ。
「参考までに聞きたいんだけど、実際に見回って、これは思っていたよりも自分に向いているな、とか、逆にこれは向いてないな、とか思った部活ってあったの?」
「そりゃもちろん、昨日はソフト部でホームランを打ったよ。バットなんて昨日生まれて初めて触ったんだけどね。あれは気持ちよかったな」
カキン、という打球音がちょうどいいタイミングで校庭から聞こえた。
「数学同好会はちょっと合わないかも。数学、嫌いじゃないんだけどその話がずっとできるかどうかっていうのは、別の話だね。あそこに入ると、頭の中が数とグラフだけになっちゃっいそう。でも、そういう経験ができたってだけでも、見学に行った意味はあったかも」
ポジティブでいい考え方だと思った。僕だったらたぶん、行くだけ無駄だったと思ってしまうから。
「そういうわけで、私は文芸部について何も知らないんだよね。だから見学に来たんだけど……休みならしょうがない。文芸部がどんな部活か、君は知ってるの?」
「一般的には、本を読んだり、自分で作品を書いたりする部活だと思うけど」
「自分で書いたりもするんだ? ああ、そうか。それを文化祭で売ったりするのか。それはちょっとおもしろそうかも。てっきり、評論とか書いて難しい小説を論じ合ったりするだけかと思った」
「まあ、人によってはそういうこともするかもね」
「ここに来る前にちょっと調べたんだよ。学校のホームページに、部の活動記録とかアップされてて」
それは知らなかった。文芸部になんとなく興味を持っていた僕より、全ての部活を平等に見学している彼女のほうが、よっぽど文芸部に詳しい。
スマホで緑北高校のホームページを開く。部活動のページが用意されていて、そこから各部活の活動記録が閲覧できた。英語部、地球科学部、放送部などといった部員の少ない部活のページも、しっかり作られていた。
文芸部のページには、いくつかのPDFファイルがアップされていた。小説や詩などといった創作物は一つも載せられていない。閲覧できるのは文学作品に対する批評ばかりだった。
「これは、芥川龍之介、夏目漱石、ドストエフスキー……古典作品が多いな」
「これを見てさ、なんか難しそうな部活だって思ったんだよね。知らない作家も多いし。芥川龍之介とか、夏目漱石とかは知っているけど、横文字の名前の作家とかはほとんど知らない。みんな知っているものなのかな」
それらの作家の名前を僕は知っていたが、そう答えることで彼女に文芸部に対するネガティブな印象を与えてしまうんじゃないかと不安になる。相手が知らないことを知っている、というのは人によっては優越感の歪みというか、不和に繋がる。余計な気遣いで、このように考えること自体傲慢かもしれないけれど、僕は安全策を取って、どうだろうね、と曖昧な返しをした。
それにしても、このページに掲載された評論に扱われている作家には見覚えがある。……ただの偶然だろうか?
「小説とかが読みたいなら文化祭とかで出品した部誌があるはず。去年発行した部誌とか取っておいてあるんじゃないかな」
言いながら本棚を眺める。知らない人間が利用している本棚を見るのは、ちょっとおもしろい。その人の考えを盗み見ているような背徳感がほのかに沸き起こる。
意外にも、小説はあまり本棚には収められていない。多いのは学術書、それも物理や化学の本が多かった。ところどころ本棚に歯抜けのような隙間が見られる一方で、赤い装丁の科学雑誌「Newton」が、棚の一角にぎゅうぎゅうに押し込められていた。棚の脇には、南京錠のかけられた小さな金庫のような、年季の入った箱が置いてある。部誌はその中に保管されているのだろうか?
不意に、廊下のほうから聞きなれない音がした。僕たち二人は閉められた引き戸に視線を向ける。あーあ、やっちゃった、というくぐもった音が扉の向こうから聞こえてきた。
女子生徒が扉を開ける。扉の前にいたのは、生徒ではなく先生だった。
「あ、申し訳ない」
と先生は言った。彼女は廊下に散らばってしまった本を集めていた。比較的若い。三十台前後だろうか。
「扉を開けようと思ったんだが、どうにもミスってしまってね。この有様だよ」
「大丈夫ですか?」
女子生徒がかがんで本を拾うのを手伝った。近づくと、彼女の背中越しに落ちている本の表紙が目に入った。夏目漱石の『こころ』、ドストエフスキー『罪と罰』……。さすが古典的名作、やはり流行っているらしい。
助けを得て本を集めた先生は、それらの本を部室の机の上に置いた。二十冊ぐらいだろうか、山積みにされた古典的名作は独特の威圧感を放っているように感じられた。
「いやあ、助かったよ。君らは入部希望者かい」
「見学希望者です」と女子生徒。
「右に同じく」と僕も言う。
「ああ、なるほど。来てもらってきたのに申し訳ないんだが、あいにく今日は休みの日でね。部員は来ないんだ」
「え、でも、しおりには今日は活動日って……」
言いながら女子生徒はしおりを先生に見せる。先生はそれに顔を近づけて、ああ、それか、と言った。
「ごめん。それ、ミス」
情報量が少ない上に、ミスまであるとは。なんとも役立たずな部活動紹介ページである。
「先生は文芸部の顧問ですか?」
と女子生徒が訊いた。
「そうだよ。私は祝井。英語でセレブレーション・ウェル。二年の数学を担当している」
左手の人差し指を立てて先生はそう言った。オーバル型のメガネフレームが理知的な雰囲気を醸している。
「え、数学なんですか? 現代文とかじゃなくて?」
「そう。しかし弓道部の顧問だって弓道を受け持っているわけじゃないだろう。担当する科目とは違っていてもいいじゃないか、神野くん」
女子生徒は、え、と漏らす。
「私のこと、ですよね」
「そう、君のことだ。もちろん、君が男性だと思って『くん』という敬称をつけたのではないよ。私は生徒のことは一律でそうやって呼ぶ」
「自己紹介、してませんよね?」
「生徒の名前は皆覚えているのさ。教師としては当然だ」
そう言いながら、祝井先生は机の上に置いてあった本を、本棚の空いているところに差し込み始める。神野、と呼ばれた彼女はどこか唖然とした表情を浮かべている。感動しているようにも見えた。
何か変だ。この人。
「……いや、上履きを見ただけですよね」
と僕は言う。先生が本を差し込む手を止めてこちらに視線を流す。
「上履き?」神野さんが繰り返した。
「上履きに名前が書いてあるよね」
神野さんが視線を自分の足元に落とし、あ、と言う。
「それを見れば名前はわかる。さっき本を集めるためにかがんでいたから、その時にさりげなく見たんですよね」
「……ああ、そう。その通り、よくわかったね」
祝井先生はあっさり認める。悪びれるところがないところを見るに、ちょっとしたいたずらのつもりだったらしい。
「嘘つくの、よくないですよ」
と神野さんが言う。特段、気を悪くした様子はなかった。
「すまない。些細なコミュニケーションの一環さ。別に騙して無理に入部させようだなんて思っちゃいない。そもそも私は、嘘が苦手なんだ。他人を騙すのにも向いていないし、嘘を見抜く才能も持ち合わせていない。君、名前は?」
先生は僕の目をまっすぐ見て、問いかけた。
「渡波祥と言います。波が渡る、と書いて渡波」
「なるほどね。私の嘘を暴いたお礼に、もしも私の授業を受ける機会があったなら、君を多く指名しよう」
嫌な報復宣告をもらい受けた。文理選択で理系を選択したら、少しやっかいなことになるかもしれない。
「先生、文芸部って何をする部活なんですか?」
神野さんは、先ほど僕にした質問を祝井先生にもした。
「本を読んだり、書いたり、そういう部活だ」
「そう、それは知っているんですが……こう、部の雰囲気とか、ここで得られるものとか、ここでないとできないものとか、そういうものが知りたくて」
「なるほど、表面的な情報ではなくて、もっと本質的なものが知りたいと。そういう質問ができる人間は少ない」
背中を曲げた先生は少し考える表情を見せる。
「そうだな……文芸部、というのは文学を対象とする部活だ。そもそも君は、文学って何だと思う?」
「文学、ですか? 小説とか詩とか、ですかね?」
「うん、そうだね。渡波くん、君はどうだい? 文学と訊いてどんなイメージを持つ?」
矛先が僕へと向く。あ、えっと、と繋ぎの言葉を発して、考えをまとめる。
「何かこう、言葉で表現されたものを指すんじゃないでしょうか。小説とか詩もそうだけど、演劇とかも文学に分類されますよね。だから、広い意味の言語表現を指して、文学と呼ぶのだと思います」
僕の答えに、先生は静かに頷いた。
「渡波くんのほうがやや具体的だが、言わんとしていることは同じだね。小説や詩、ひいては言語表現全般。それらを指して文学と呼ばれる。だから小説や詩ではない言語を使った表現、例えばゲームとか音楽とか、そういったものも場合によっては文学に分類することが可能だ。ではもう一つ質問。文学は文字を使って何を表現しようとしているのだろう?」
「何だろう……人の心とか、ですか?」
「うん。悪くない回答だ。君は?」
少し考える。文学が表現しようとしているもの? 神野さんが言った、人の心がもっとも適した答えに思えた。
「わかりません。何ですか?」
「それがね……」
先生は意味深な間を空けて、再び口を開いた。
「実は、よくわかっていなんだ」
「え。どういうことです?」
持って来た本を全て空いている箇所に仕舞い終えた先生は、窓際の机に腰かける。教師にしては少々行儀が悪い。
「文学に何ができるのか、というのが人間にはまだわかっていない。確かに物語で感動する人はいるし、救われる人もいる。しかし他方で、同じ物語を読んでも響かない人間だっている。結局、物語が機能するかしないのかは、読み手次第なのさ」
「……もしかして、ネガティブなことを言っていますか」
「見方によってはそうかもね」
と先生はあっさり肯定する。見方によってはポジティブなのか?
一生懸命に何かを書いても、それが届かない人間だっている。先生はそう言っているのだ。だけどその理屈は納得できなくもない。他人と抵抗なくコミュニケーションができて、自分が言いたいことが相手に十全に伝わり、そのうえ相手の言いたいことが過不足なく理解できるのであれば、人類はもっともっと素晴らしい種族になっているはずなのだ。それを「できない」とわざわざ言葉にするのは、やっぱり悲観的なことに思われた。
「それでも、人に何かを伝えたいという思いが文学として立ち現れる。報われるかどうかはわからない、表現したものがまっすぐ相手に届く保証もない。その曖昧な揺らぎこそが文学なんだ。だから、ま、例えるなら、先の見えない暗闇に言葉という手がかりを持って、手探りで進んでいくのがこの部活だね。つまり……」
先生はそこで少し間を空ける。手を顎に添えて、考える仕草を見せた。
「人のことを知ろうとする部活、と言えるかな。手探りで相手と自分の輪郭を確かめようとする部活。それがここ、文芸部だ」
「……なるほど。よくわかりました」
祝井先生の説明は抽象的だったが、神野さんには伝わったらしい。ちなみに僕は、何を言っているのかがいまいちよくわからなかった。なんというか、複雑で抽象的な言葉で煙に巻かれたような気がしたのだ。それも先生の言う「わからなさ」なのだろうか。
「いくつか私も質問してもいいかな。君らはどうして、文芸部に興味を持ったんだい?」
「僕は、本に興味があったから……」
何か少し、理由を言うのも気恥ずかしかった。先ほどの先生の言葉が印象に残っているせいか、僕は何か、壮大なことを口にしている感じがする。
先生はそんな僕の気持ちなど知らず、良い理由だ、と肯定してみせる。
「私は全ての部活を見回っているんです」
「へえ、そうなんだ。真摯だね、神野くんは」
「……努力が、努力ができる部活を捜しているんです」
小さな声で神野さんがそう言った。何か切羽詰まったような響きが、その声にはあった。
「珍しい評価基準だね。努力をする、しないで部活を選ぶ人間なんて、滅多にいない」
「自分を困難な状況に投げ込みたいんです。努力は必ず報われる。私は私の限界に挑戦してみたい。それがたとえ向かないことであっても、一つのことに没頭して、必死にもがくことはきっといい経験になります」
「それは……」
先生が何か言葉を続けようとしたのに重なって、ノックの音が部屋に響いた。




