予備校
予備校の授業が終わった。
帰る人とこれからの人がまばらに行き来する外へ出る。
すっかり暗くなっている。
一緒に通っている恋人が、さっき教室に残って先生に質問をしていた。
一緒に帰りたいので待つ。
壁沿いに並んでいる自販機と駐輪場の間に、壁を背にして寄りかかる。
ちらほら人が通過するからうつむいてスマホで暇を潰す。
そんなに待たない内に恋人が出てきて、「お待たせ」と手をつながれた。
正面を人が通ったから、ちょっと照れて指に力が入る。
たぶん勘違いをした恋人が、もう少しにぎり返してくる。
(そうじゃないけど)と更に照れながら「うん」と顔を上げる合間に、いま正面を通った人がガシャンとチャリを出す音が立つ。
「帰ろ。どっか寄ってく?」
そこから恋人の声もする。
「えっ」とすくんでそっちを見ると恋人がチャリを押している。
反対側でこわばる片手は優しくにぎりしめられている。
こっちの隣は自販機だった。
振りほどけないし見れない。
終.




