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第12話 華麗な初戦闘

 坑道の奥へと進んでいけば、予定通りのヴェノムスパイダーを発見。

 薄暗いながらも電灯はまだ生きているので完全に暗いわけではない。


 丈夫な導線を生命線とする白熱電球が、敵の姿を映し出してくれる。


 さあ、前に出て戦いなさい。


「さあ行くぜクソ蜘蛛! テメーに目にものお見舞いしてやらぁ!」


「お手並み拝見といこうじゃないの」


「が、頑張って下さ~い!」


 すぐ後ろで見物する私達。私はともかく可愛い子の黄色い声援がつくんだから、頑張って欲しいところ。

 

「まあ見てろ、過去に何度も狩ってきた相手だ、赤子の手をひねるように蹴散らしてやろう」



 にらみ合いをする両者。




 先に動いたのは――エルだった。




「あ! 可愛いメス蜘蛛!」


「……は?」


 エルの声に反応して、目の前の蜘蛛は後ろを振り向く。


 え? うそ!?


 その隙を突いて、持っていたマッチを数本火を付けて次々と投げつけるエル。

 この坑道から天然ガスの類が確認されて無いから出来る芸当ではあるけれど。


 完全に油断したあの蜘蛛は、突如自分の体に火が付いた事に驚き慌てふためく。こうなればもう終わりだろう。


 エルは足元に落ちていた拳大の岩を持ち上げると、やつの顔面めがけて思いっきり投げつけた。


「喰らえ必殺! 隕石アタック!!」


 見事頭部に命中。結構重い音が響く。


 痛みにひるんだ蜘蛛に向かって、エルは懐から取り出した殺虫スプレーを思いっきりふりかける。


 火そのものは強くなかった為既に鎮火していたが、痛みにより暴れる気力すら完璧に失った蜘蛛は、そのまま帰らぬ虫となる。


「ふ、我ながらスマートだぜ」


 いや、何カッコつけてんのよ。


「その腰にぶら下げた剣は飾りか何か? アンタの戦い方って、なんか姑息よね。そうは思わない?」


「え~と。た、戦い方は人それぞれですから。……いや、普通に卑劣なんだけどさ」


 苦いフォローを入れたあとにブツブツと何かをつぶやくティターニ。きっと呆れてるんでしょう。


「うるせえな、勝てばいいんだよ!」


「はいはいそーですねー」


 てっきり剣でズバッとやって見せると思ったから拍子抜けだ。

 見かけ倒しじゃない?


「とりあえずこれで一匹だ。ほら写真に撮って。きっちり仕留めたってところを見せねぇと金払ってくれねぇんだぞ、ギルドってところは」


「分かってるわよ。はいチーズ」


 背負っていたバッグからギルドから借りたカメラを取り出して、亡骸めがけてシャッターを切る。


 まばゆいフラッシュと共にカチっと音が鳴れば、しばらくして写真が現像されてカメラから出てくる。


 普通のカメラだと現像に時間が掛かり、その間は当然報酬が振り込まれないのでインスタントを使用する。カメラにしては大きくてかさばる上に、フィルムが少ないのが珠に傷。


 うん、我ながらバッチリ!


 しかしカメラの進歩って早いものだ。ちょっと前まではセピアだったけど、技術が発展すればもっと色がつくようになるのかな?


「うん、綺麗に撮れたわね。アタシったら結構な腕前でしょ? これでも里じゃ観光客にカメラを頼まれてたからね」


「へぇそうなんですか。でも、確かにお上手ですね」


 ティターニの素直な褒め言葉がちょっとくすぐったい。エルはまずしないから、そういうの。


「お前の里って観光客が来るようなところなのかよ。……まあいいや、フィルム代はギルド持ちっていったって無駄に撮ってると無言の圧力をかけてくるからな、気を付けろよ」


「はいはい」


 そういう説明は事前に受けている。結構シビアなところがあるってのもエルが語るところ。

 コイツはいい加減だけど、お金が絡むなら間違ったことは言わないでしょうから、その点じゃ為になる。


 私達は写真を撮り終えると、死体を埋めて奥へと進んでいく。


 毒蜘蛛を埋めて大丈夫なの? なんて思われるかもしれないけれど、あの蜘蛛の持っている毒は動物に対して有効なのであって、土壌に対してはむしろ栄養を与えてくれる。らしい。


 これに関してはエルの説明がいまいち歯切れが悪かったから、自信はない。

 大方コイツ、講習とか話半分に聞いてたんじゃないの。

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