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飜譯匣

征服者蛆虫

作者: エドガー・アラン・ポー(原著) 着地した鶏(翻訳)
掲載日:2024/09/21

さあ、いざ!

ひとり寂しき晩節の 

祭(まつり)の夜ぞ、騒がしく!

天(あま)つ御国(みくに)の御使(みつか)いは

群れ成し、翼を携(たずさ)えて

覆絹(ヴェール)でその身を飾り立て

涙をポロポロ零(こぼ)しつつ

腰掛け観(み)ゆる劇場は

希望と絶望の物語

管弦楽(オーケストラ)は息も散り散り

天球(せかい)の音楽(おと)を奏でたる


道化師は、

高き御主(みおや)の身振りを真似て

低き地声で噤(つぐ)み呟(つぶや)き

あちらこちらを飛び回る……

斯様(かよう)な者すらも右往左往の操り人形、

あちらこちらに舞台を回す

形(かげ)なき巨影(かげ)に振り回され、

大禿鷹(コンドル)の翼を羽撃(はばた)かせ

姿(かげ)なき悲哀を振り散らす!


此(こ)の雑多な舞台劇を

……嗚呼(ああ)、確かに

忘れることはないだろう!

幻影を絶えず追えども

捕らえられぬ群集が、

宛(さなが)ら円環を巡るが如く

自(おの)ずと同じ処(ところ)に還(かえ)り往(ゆ)く、

そして多くの狂乱と多くの罪悪と

魂(こころ)からの恐怖がこの舞台の物語なのだ


しかし見よ、

真似事ばかりの群集の真っ只中を

押し入り這(は)いずる者の姿を!

血塗(ちまみ)れの赤き姿が

舞台で独(ひと)り身を捩(よじ)る!

死に逝く痛みの中で……身悶(みもだ)え!……蠢(うごめ)く!

道化師はその者の餌食(えじき)となり

人の血で染まる、その蛆虫(うじむし)の牙(きば)を見て

御使(みつか)い達は啜(すす)り泣く


消える、消える

……灯(あか)りが消える

……皆(みな)ども全て闇の中!

慄(ふる)え強張(こわば)る道化師に

舞台の緞帳(とばり)が、

棺(ひつぎ)の覆布(とばり)が、

嵐の如く降ろされる

天(あま)つ御国(みくに)の御使(みつか)いは

皆(みな)、青褪(あおざ)めて血の気なく、

立ち上がり、覆絹(ヴェール)を脱ぎ捨て、言い放つ


 此(こ)の舞台は悲劇、題して「人間」


 主役の名は「征服者蛆虫(うじむし)」

原著:「The Conqueror Worm」(1843)

原著者:Edgar Alln Poe (1809-1849)

(E. A. Poeの著作権保護期間が満了していることをここに書き添えておきます。)

翻訳者:着地した鶏

底本:「The Works of Edgar Allan Poe: The Raven Edition」(Project Gutenberg) 所収「Poems of Method: The Conqueror Worm」

初訳公開:2024年9月21日


【訳註もといメモ】

ポーの短編「ライジーア(Ligeia)」にも登場する人間の生と死を謡った詩。

版によって第二パラグラフ最終行の「Invisible Woe!(不可視の悲惨さ)」が「Invisible Wo!(不可視のワォ!)」となっており、訳出揺れが認められるので注意。

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