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第五十七話 シラー隊 VS 青狼群(2)

遅くなりました。

今日は水曜日なの忘れてました……(汗)

楽しんでもらえますように。


 青い絨毯(じゅうたん)はコルテナを囲むように敷かれていく。コルテナの四つのゲート、そのすべてから侵入しようとしているのだろうか。演習の時のように、綺麗に三つに分かれた隊士達がそれぞれの目的地に全速力で向かう。


 シラーは更に速度をあげて、そのまま真正面のゲートに群がる青狼(ブルーウルフ)どもに突っ込んでいった。


「ゲートは閉まってるか? ……そのまま開けるなよっ」


 異常を知った門番たちが早々にゲートを閉めたようで、青狼が塀の外に溢れている。ここまで守護隊が青狼の群れの中に入り込んでも、ヤツらの第一は街の中に入ることのようで、隊士たちには不自然なほどに視線も向けはしない。


「なにがなんだか理解できないが、チャンスだ!」


 シラーたちは手当たり次第に周りの青狼を切り捨てていった。だがさすがに害されようとすれば抵抗はするらしい。その後は人獣入り乱れての戦闘になった。


 土に草に誇りにと大いに巻き上げ、青い絨毯が波打つ。間に守護隊の白い隊服がちらほらと。白が赤く染まっていく。隊士の怒号と青狼の咆哮が乱れ飛ぶ。


 シラー達が青狼の一部と戦っている間に、コルテナの塀回りにいる先頭の青狼どもに何やら動きがあった。


「なんだと?」


 シラーは何を見せられているのかと、理解できなかった。


 一部の青狼どもが、次々と街の中へと飛び込んでいくのだ。普通ならば越えられない高さの塀を、複数の仲間を踏んでいくことで可能にして。


「きゃーっ!」


 塀の向こうから街の人の悲鳴が聞こえてくる。シラーは、はっと我に返った。


 信じられない。この青狼どもは足りない高さを補うために複数の仲間を上に重ね、踏み台として使っている?


「街の中に、なにがあると……」

 

 思わず呟いた。

 どうしても、どんな犠牲を払っても、中に入るのだという恐ろしいほどに強い意志を感じた。


「分隊長!」


 部下に声をかけられ、とにかく斬りまくれと叫んだ。

 戦闘は長い時間かかって行われた。ゲートは開かせない。援軍の為になど、どのゲートも開けさせはしなかった。だが、三隊だけではこの大量に湧く泉のような青狼どもが街の中に染み入るのを防ぐことはできなかった。


(中にはここの数倍の隊士がいる。大丈夫だ。隊長とカーラント達が、きっと撃退してくれる)


 街の中の悲鳴と、戦う怒声、青い狼の咆哮。巻上がる土煙りで、耳と口が使い物にならなくなる。


 シラーと隊士たちは無援状態の中、必死に青狼に剣を振り続けた。


 どのくらいの時間が経ったか、シラー隊へ向けてゲート上から声が響いた。一面に散った青狼の死体の海の中、ゼイゼイと息を切らせて、多くが握った剣を地面に突き刺し、体を支えていた。


 横たわるは重傷者のみで、座り込む者はほぼおらず、隊士たちはその声にゆっくりと顔を、視線を向けた。


「街周囲の魔獣、制圧したようです!」

「ゲートを開きます!」


 ぎぎぎ、と重苦しい音が四方で聞こえる。塀の外で闘っていた隊士たちを迎え入れる為、それぞれのゲートが開かれた。


「終わった……のか?」


 ()()()()()()()()()との対峙に、シラーであっても息が上がって、全身青狼の牙と爪で傷だらけだった。

 

 よく見ると、手にしていた愛剣も刃こぼれしている。それを感慨もなくぼうっと見つめて、もう一度今しがた終わった戦闘の痕を見渡す。


 遠くで見たときは綺麗な青い絨毯だったものが、今では赤く、濃茶色に塗れている。塀にも舗装してある道にも、血と青狼とで染めていない箇所はなかった。


「守護隊全員が街へ入ったら、すぐにすべてのゲートをもう一度閉じろ。重傷者は各詰め所で応急処置を受けさせてくれ。救護隊が到着するまで頼む」


 迎えてくれた隊士に早口で指示を出す。その隊士の抜刀した剣にも血糊がべったりとついていた。


「軽症者は街を捜索しながら、入り込んだ青狼を討伐するぞ!」


 これで終わりではないかもしれない。まだどこからか魔物が沸いて来るかもしれない。


 ぜぇぜぇと肩で息をしながらも、それだけは傷だらけの隊士たちに聞こえるように振り絞って声を出した。

 

 シラー率いる守護隊の被害はなかなかのものだった。峠で遭遇したときと、街についた後の青狼は別物のようだった。一部がまるで邪魔は許さぬとでも言いたげに隊士と相対した。重傷者が数人、一刻も早く医者に診せなければならない。


「中は、街はどうなっている」


 足早に歩きながら、シラーはゲートを開けた隊士に尋ねた。


「はい、それが青狼ですが、あいつら塀を飛び越えたあと、多くが一直線に向こうへ」


 指の差す方は。


「あの方向は……守護隊本部があるが……」


 自分たちが一番よく知っている方面へ青狼は向かったのだと教えられた。


 まさか狙いは本部だろうか。しかし、あそこにはあいつらがいる。


「全員が入ったら、またすべてのゲートを閉めるように。人が来ればその都度入れろ」


 再度同じ指示を出し、シラーは傷だらけになった自身の愛馬に跨った。


「重ねて言うが、重傷者にすぐに応急処置を施してくれ。本部に連絡を。すぐに救護隊を寄越してくれるようにと」

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