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【完結】センセイの恋のリハビリは君の初恋でした  作者: 伊藤あまね。
*4 いい奴のようで、いい奴じゃないのかもしれない彼
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*4-1

 浅間がちゃんと口止めしてくれているかを確認しようにも、僕の担当教科は週に一度の二枠の芸術の時間しか彼に関わることができない。

 一応僕は合唱部の副顧問ではあるのだけれど、浅間はそこの部員でもないため、放課後に顔を合わせることもないし、ましてや僕は担任を受け持ってもいない。

 四六時中張り付いているわけにはいかないし、現実的ではないけれど、せめて校内にいる時くらいはちゃんと秘密を守っていてくれるのかを把握しておきたい。こちらがにらみを利かせて見張っていれば、きっと浅間も下手に吹聴しようとはしないのではないだろうか。

 そして一番の問題は、先日ベテラン教師が言っていたように浅間は遅刻魔なのだ。

 出席簿を確認してみると、音楽の授業を受け始めた今春からすでに半年近くが経とうとしているが、まともに始業から出席していたことがほぼないことがわかった。


「これは……まずはまともに出席してもらわないといけない、ということじゃないのか?」


 ほとんどの生徒も職員も帰宅した時間帯、職員室でひとり出席簿に並ぶ浅間の出席状況を前に僕は呆れて呟く。チャラいやつだろうと思っていたが、ここまで典型的だとは思わなかったからだ。

 とは言え、担当教師としてこのまま放置していくわけにはいかないので、担任を通してまずは注意をしてもらわないといけない。

 さっそく翌日、浅間の担任の住吉(すみよし)という英語科の教師に声をかける。

 浅間のことなんですけれど……と、僕が切り出してすぐに、住吉はああ、と心得たようにうなずき、そして大きく溜め息をついた。


「浅間の遅刻でしょう? 俺も困ってるんですよ。怒るに怒れないから」

「起きれない体質とか持病があるとかですか?」


 僕がそう首を傾げて訊ねると、住吉はそうではないと言うように首を横に振り、また溜め息をつきながら、「家庭の事情なんですよ」答える。


「家庭の事情……親に問題があるとかですか?」

「んー、なんて言うのかな……虐待の疑いがあるとかではなくて、いわゆるヤングケアラー的なものなんですよ」


 ヤングケアラー。機能不全家族のなかで大人が担うべき役割を子どもが担っているケースを指すと聞いたことがある。例えば親や祖父母の介護であったり、自分も子どもでありながら兄弟の世話を大幅に任されたり、と言った感じに。


「浅間の家には両親が留守がちだったりするんですか? だから、彼が家族の世話を担っていて遅刻をするとか……」


 それはもはや児相案件ではないのか? と僕が口にしかけると、住吉は少し首を傾げ考え込んで言葉を選んでいる。


「そうと言えばそうなんですけどね、ちょっと違うと言うか……なんて言えばいいかなぁ……」

「どういうことです?」



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