第10話 一方その頃の地球では
一方その頃の地球では――。
「ギャババババババッ、望杉の一人娘が死んだってよぉ!」
一人のモヒカン頭が舌をベロベロ振り回しながら叫び。
「それは本当か本当なんだな本当だったよなぁ!」
人を刺殺できそうなほど尖ったサングラスをかけた男が叫び。
「望杉家からこの世界を奪い返してやるぜぇ!」
ショッキングピンクの髪色の、ショッキングのタンクトップを着て、ショッキングのタイツを履いた男が叫んだ。
世界の支配者望杉家の一人娘である望杉香峯子の訃報は、そういう類の組織や団体やらに何故か伝わっていた。
そんな男達が騒いでいるのは、太平洋のとある島、地図に載っていない未知の孤島。
その孤島を、彼らの組織は本拠地とし、望杉家が支配するこの世界を虎視眈々と狙っていた。
そんな孤島の遥か上空、更にその先、もはや上空などでは言い表せられない程遠く離れた場所――月で。
「ああん? なにが世界を奪い返すだクソ共がっ!」
望杉家が占領した月内基地の中、膨大な数あるモニターの一つを睨みつけているのは、ショートヘアーの黒髪に緑のメッシュ一つ入れている、少し吊り上がった目を持つこれまた綺麗な女性――望杉香峯子の母である、望杉華羅美。
華羅美は、手に持っているスイッチを感情に任せて押す。
ポチッとな、と言う電子音が聞こえたかと思うと、華羅美の見ていたモニターに映る孤島へ向かって、極大の光線が一直線。
「香峯子は死んでねえよ! いや死んでんだけど戻ってくんだよ!」
クソがっ、と華羅美は言い放ち、その部屋を後にするのだった。