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第一印象は地の底から  作者: ゆめぴりか
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少し長くなりました。

 思いがけない人から助けていただきました!

 ちょっと………どころではなく、ヤり過ぎてしまって、困っていたところ、都合良く現れて下さりましたよ!王太子様!

 私ごときが頑張ったところで、大したことは出来ないのに、“お手伝いするから見逃して?”作戦でお許しを貰えたばかりか、後始末も引き受けて下さったのです!


 とりあえず、感謝して、いそいそと自室にもどってきました。


 疲れた。

 と、思っていたら、………コンコン。



 侍女長がやってきました。


 「どうぞ?」


 入室を許可すると、綺麗な礼をして、侍女長が入ってきました。見かけない一人のご令嬢を連れて。

 彼女も、ゆっくりと礼をしてくれました。


 とりあえず、私も礼をしましょう。


 「はじめまして、でよろしかったかしら?メルティナ・ラインハートと申します。侍女長様、そちらのご令嬢は?」


 私の質問に対し、侍女長は、再度恭しく礼をとり、説明をしてくれました。


 「彼女は、メドセーナ伯爵家のご息女、マリアです。この度、王宮に、行儀見習いとして、召し上がることになりました。歳も16と、メルティナ様に近いので、話し相手にも丁度良い歳ですし、側仕えとして、置いていただければ、と連れて参りました。以後、よろしくお願いいたします。」


 ……………。もう、決定なのですね。

 側仕えならば、セレンがいるので、十分ですが。


 「メルティナ様、どうぞよろしくお願いいたします。」


 マリア様は、侍女長より一歩前に出て、恭しく礼をしてくれました。

 彼女は、赤みがかった茶髪で、緩くウェーブがかかった柔らかそうな髪と、ブルークォーツのような、少し灰色がかった、青い瞳の整ったお顔立ちのご令嬢でした。

 背は、私より、頭一つ分くらい高く、胸もふくよかで、腰は細く、スタイルのいい、美人さんです。


 うっ、羨ましくなんてありませんよ……。

背なんて、どうしようもないのです!頑張ったところで、伸びないものは伸びないのです!そんなところ、気にしてもどうしようもないのです(泣)

 まだ、胸は大きい方かと思っているので、大丈夫です!


 何が大丈夫なのかは、聞かないで下さい。


 「わかりました。こちらこそ、以後、よろしくお願いいたします。」


 いろいろと思ったことはありますが、何食わぬ顔で、返事を返しておきました。


 他にも挨拶回りがあるのか、侍女長は、退室の挨拶をして、マリア様を連れ、いそいそと出て行かれました。


 「お嬢様、お茶の準備をして参りますね。」


 そう言って、セレンも一旦下がりました。





 「メドセーナ伯爵家………」


 身元はハッキリしているようですが………。

 お父様がよく言っていました。“自分の側に置く者は、自分で確かめよ。特に、他国の者は信じるな。”でしたか。

 エリック殿下の時のような事もありましたし、侍女長の言葉だけでは、信じられないのです。

 ヴィル様は、あの時以降、私に気を使い、エリック殿下より私に尽くしてくれるので、今のところ、この国で一番信用のおける方かと思っています。


 とゆーわけで、彼を呼びましょう。


 「リュタン」

 「お呼びですか?」


 ウオッ!………今日はそっちからですか。

 ぬっと私の座っているソファーの左横に現れたので、少しビックリ………はしてませんが、ビクッはしたかな………。


 リュタンは、ラインハート家から連れてきた、私の影、密偵です。この国では、誰にも聞かれてないので、連れてきていることは言ってません。護衛も兼ねているので、誰かに聞かれるまでは、教えるつもりはありません。

 ちなみに、リュタンは、深緑色の髪でアメジストのような紫色の瞳です。年齢不詳のちょっとチャラい感じに見える、整った顔立ちです。


 「リュタン。先ほどのメドセーナ伯爵令嬢を調べてほしいのです。彼女と彼女の御実家、伯爵家について。」

 「畏まりました。いつまでに?」

 「何でもいいので、わかり次第報告を上げて下さい。」

 「承知しました。では、御前失礼致します。」


 霧のように消えていきました。

 

 「お嬢様、お茶の用意ができました。少しお休み下さい。」


 リュタンと入れ替わりのように、セレンがお茶の用意をしてもどってきました。


 「ありがとうございます、セレン。」


 セレンが淹れてくれた紅茶を一口、口に含みました。

 ハーブティーです。落ち着きますね。


 「お嬢様、先程のメドセーナ伯爵令嬢様、少し気になりますね。何故、今、お嬢様の側仕えなのでしょう?」


 セレンも同じコトを思っていたのですね。口角が上がってしまいました。クスッ。


 「その通りね。気になるわね。セレン、言葉がわからないフリは継続のままで、彼女の周囲に気を付けてね。些細な事でもかまわないので、教えて下さいね。」

 「畏まりました。」


 何を企んでいるのかしら?

 きっと、碌でもない事でしょうけど………。


 「それと、お嬢様?第二王子殿下がお越しです。」


 それ、早く言ってよ。

 セレンがニヤニヤしてる。わざとなのね。


 「わかりました。用意します。」


 と、言っても、何もすることはない。

 とりあえず、殿下のお相手を致しましょう。

 ついで、と言ってはなんですが、先程の側仕えの令嬢の件も確認しておきましょう。

 なんとなく、理由は察しがつきますが……。




 ソファーから、立ち上がって待っていると、エリック殿下が颯爽と入ってきました。

 今日はご機嫌?なのでしょうか?まあ、動作だけで、人の気分なんて、私にはわかりませんが……。


 「メルティナ!今日も可愛いね!待たせたかな?」


 待ってません。

 無駄に爽やかな感じです。そして、この挨拶は、エリック殿下とお茶の時間を取るようになって2、3日目くらいからの定番の挨拶になりました。

 ほぼ毎日言われていると、何も思わなくなるものですね。


 「いいえ、今日は少しバタバタしておりましたので、殿下とのお茶の時間に間に合わないかと焦っておりました。」


 嘘ではない。お茶の時間は忘れていたが、嘘ではない。

 心の中で、よくわからない言い訳をしてしまいました。


 「バタバタ?……そうか、貴女にもいろいろあるのだな。私の都合で勝手に来てしまい申し訳ない。そうだ!お茶の時間を決めてもよいだろうか?貴女の都合もあるだろうから、時間が決まっていた方が何かといいだろう?」


 何が?何がいいの?

 お茶の時間を止めればいいのでは?殿下も忙しいのだし。

 わざわざ休憩時間を合わせなくてもいいのに………。

 婚約者じゃあるまいし………あっ、婚約者だった……。

 あーーー、これは、アレですね。周囲に、仲の良さをアピールしつつ、交流を深めるとゆーやつですね。

 とゆーことは、私にも、その義務は発生するわけなので、このお茶の時間は継続すべきものなのですね。了解しました。


 「そうですね、わかりました。殿下のほうが、お忙しいと思いますので、殿下の休憩時間に合わせます。」


 「メルティナ!ありがとう!では、急用がない限りは15時でいいだろうか?」


 「かまいませんわ。では、そのように致しますね。」


 「ありがとう!」


 とても嬉しそうに笑われた顔が、少し幼く見えて、何だか可愛らしく思ってしまいました。

 そんな自分にも、少し、驚きました。


 ああ!肝心な事を聞き忘れるところでした。


 「ところで、殿下。先程、侍女長がわたくしの側仕えにすると、説明して、一人のご令嬢を紹介していきました。何かご存知ですか?」


 「あっ、ああ、メドセーナ伯爵令嬢か………。」


 やはり、ご存知だったのですね。

 エリック殿下は、かなり引き吊った表情で説明してくれた。


 「……前にも、話したように、私の婚約について、よく思っていない国内の貴族がいる。メドセーナ伯爵は、その一人だ。彼は、伯爵位ではあるが、資金が潤沢で、発言力もあり、少し……ではないな、かなり厄介な人物でもある。……もしかしたら、メルティナに害をなすつもりかもしれないが……。申し訳ないのだが、貴女に付けさせてくれないだろうか?私も、動向には、注意を払うつもりだ。」


 そこまでわかっていて、ですか。

 ある意味、私が見張りをしろとゆーことデスネ……。


 「わかりました。わたくしにはセレンがいますので、大丈夫です。お引き受けしますわ。」


 「ありがとう!やはり、貴女は私の天使だ!心より感謝する!」


 日に日に、表現がウザク……ウッゲフンゲフン。

 ご機嫌取りの社交辞令が大袈裟になっている気がします。

 気にしたら負けな気がするので、スルーします。

 とりあえず、ニコリと微笑んでおきました。


 エリック殿下は、満足そうに、紅茶を口に運び、軽く雑談をすると、退室していきました。

 これからの事を考えただけでも、ドッと疲れが出て、ソファーに深く沈み込みました。


 「お嬢様、見張りの件、承知致しました。お任せ下さい。」


 と言って、セレンが臣下の礼をしました。

 頼もしい侍女です。リュタンへの依頼の件もあるので、しばらくは様子をみる予定です。

 

 何が出てくることやら。ある意味楽しみデスネ。




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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