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第一印象は地の底から  作者: ゆめぴりか
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前半、メルティナ視点。

後半、エリック視点です。


 ヴィル様がそそくさと行ってしまわれたので、このまま扉の前で立ち尽くすのもどうかと思うので、部屋の中に入ってみることにしました。

 数回ノックすると、中から返事が返ってきたので、そっと扉を開けて中をのぞくと……。


目に飛び込んできた光景を見て、私は、絶句した。


 何をしているのですか?


 素直な感想でした。

 扉を開けた室内では、扉の真正面に大きな窓があり、扉から向かって左側に四人掛けくらいのソファーと、ソファーの前にはアンティークな机がありました。

 ソファーは丁度、扉を開けてすぐに目に入る位置にあり、そのソファーでは、第二王子殿下と思わしき男性に、妖艶な見知らぬ令嬢がすがりついている光景が目に飛び込んできたのでした。


 数秒?数十秒?数分?

 わかりませんが、「申し訳ありません。」と頭を下げて、すぐに扉を閉めました。


 あれは、不貞の現場なのでしょうか?

 見てはいけないモノを見てしまったようです。


 ヴィル様もセレンもまだまだ戻ってきそうにありません。

 初めての王宮なので一人で歩き回るわけにもいかず、扉の横の壁に張り付くようにして、二人を待つ事にしました。

 30分ほど経ったあたりで、足が辛くなってきたので、しゃがんで待ちました。

 その間、暇だったので、不貞の現場?を目撃したことについて手紙をしたためる事にしました。


 お父様、何て言うかしら?戻ってこいって言ってくれるかしら?…………ない。ないわぁ。このくらいなら、何らかの条件ふっかけて自国を優位にして終わりだわ。

 これ幸いと微笑を浮かべるお父様しか想像できない。

 しかしながら、手紙を書かずに落ち着くこともできそうにないので、見たままを、詳細に書き連ねていきました。


 喜んでくれるかしら?お父様。

 なんだか、虚しいわ。

 隣国に来て早々、この仕打ち。

 ヴィル様も敢えて、この光景を見せたかったのかしら?

 嫌がらせ?

 私、何もしてないはずなのに、既にかなり嫌われてるの?

 もう、帰りたい……。


 等々、待っている間、どんどんマイナス思考に陥っていきました。


 小一時間くらい経った頃でしょうか?

 扉が開き、中から、先程ソファーに令嬢と座って何やらいたしていた男性が出てきました。

 しゃがみこんでいたので、見上げた私を見下ろすようにして、目が合いました。

 驚いたのか、目を見開き、少し後退ってました。

 そのまま、少しの間、二人とも硬直していましたが、部屋の中から令嬢が、男性の腕に絡んでくるのと同時に、ヴィル様とセレンが戻ってきました。


 「あら?その娘、誰ですの?」


 皆が目を丸くして、沈黙するなか、始めに声をあげたのは、どこぞのご令嬢でした。


 「エリック殿下……」


 真っ青な顔で、両手の拳を震えるほど握りしめて、ヴィル様が声をかけました。


 「今日のご予定はお伝えしてましたよね?お忘れになりましたか?」

 「予定?………っ!あっ!………まさか?」

 「まさかではありません。」


 えっ。私が来るの知ってたの?

 ないわぁ。最悪の印象だわぁ。

 私の中の、エリック殿下に対する印象が地の底に着地した瞬間でした。


 最低限の会話をすると、ヴィル様は、第二王子を放置したまま、私とセレンの背中を押して進みだしました。

 気付けば、たぶん、私の為に用意したであろうと思われる部屋に押し込まれていました。

 




※※※




 今のはなんだ?


 突然訪問してきた、グレゴール侯爵令嬢の対応をしていると、静かに扉をノックする音が聞こえたので、返事をすると、小柄な見たことのない女性が、中を窺うように扉を開けた。

 一瞬、目が合った気がしたが、その女性は、すぐさま、「申し訳ありません。」と言って出ていってしまった。

 追いかけようにも、グレゴール侯爵令嬢がじゃっ……いたので、追えず……。とにかく、グレゴール侯爵令嬢にはお帰りいただこう。


 なんとか、かんとか、グレゴール侯爵令嬢の機嫌を損ねることなく帰宅にもっていくのに、小一時間程かかってしまった。

 帰っていただこうと、扉をあけると、先程の女性がしゃがみこんで見上げてきたので、驚きとともに、後退ってしまった。

 しかしながら、今度はしっかりと目が合った。


 なっ!可愛い!!

 まあまあ、いや、かなりタイプだ!


 小柄な体型がしゃがみこんでいたので、さらに小さく見えて、大きな赤い瞳がキラキラ輝いて見え、サラサラの銀髪が美しく、……ウサギ!うさぎだ!良く似てると思う!

 いや、違う違う。

 動揺してるな、私。


 とりあえず、こんな所で何をしてるのか聞こう。

 と思っていたら、部屋の中から、グレゴール侯爵令嬢が私の腕にしがみつきながら、「あら?その娘誰ですの?」と聞いてきた。

 私だって知りたい!

と思っていたら、ヴィルに声をかけられた。


 …………なんか、メチャメチャ怒ってる。

 …………怖い。


 「エリック殿下……。」


 ……低い!いつもの何万倍も怖い低い声だった。


 ………これは、ヤバいのではないか?

 私がやらかした系か?


 そんなトボケタ事を考えていると、予定を忘れたのかと問われた。


 ……予定……予定。


 ………!!!!

 今日、隣国の私の婚約者が到着する……予定……だった……。

 

 やってしまった。

 完全に見られてしまった!どころではない!現在進行形で見られている!!頼むから、グレゴール侯爵令嬢消えてくれ!

 と、願っても消えるはずもなく……。


 ヴィルが婚約者達を連れて離れてくれたので、急いでグレゴール侯爵令嬢を帰して、三人の後を追った。


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