表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

異聞エジプト王国記

番外編です。

短編集です。

 隕石が落ちず、恐竜が生き残った異なる地球(アナザーアース)、この地球もその後何度も絶滅フェーズを迎えた。

 だが、「大絶滅」でない、個別の絶滅の繰り返しに、恐竜たちは種と棲息範囲を減らしつつ、未だ生存と進化を続けていた。

 そんな中、アフリカ大地溝帯と呼ばれる地域で、急峻な山に遮られた場所から生まれた、直立歩行するサルが、環境適応力の異常な高さから世界に拡がり始める。

 氷河期と呼ばれる、恐竜たちには辛い環境時に、サルから進化した人類は、一気に世界に拡散した。

 そんな中で、熱帯地域に隣接した者たちは、全く異なる知恵ある異種族に出会い、時にお互いが滅びるまで戦い、時に妥協して共存を選び、一定の棲み分けが出来た。

 その異種族を、人類は神、または悪魔と呼んだ。





■ナイル河流域 エジプト王国:

「彼の方々は何と仰せか?」

 神王ファラオは神官に訊ねる。

 神官は、エジプト王国の南に棲まう、声帯を持たない竜人セベクたちの言葉を理解し、通訳出来る能力者である。

 耳を特訓すれば、v音、f音、b音、w音から始まる竜人の発音を聞き分けられ、文法も分かるのだが、彼らは特権を維持する為、一切を秘密にしている。


 さて、ファラオが「神の眷属」たる竜人との交渉を求めているのは、戦争が理由である。

 メソポタミアという地域の覇者と、エジプトは、共に乾燥期に大河の周辺に人が密集した事から王権と文明が生まれた共通点を持つ。

 彼等はシナイ半島にてぶつかり合った。

 その時、エジプト南方の竜人たちは

「ヒト同士の戦いに我々は関わらない」

 と中立、と言うより無関心だった。

 彼等は圧倒的な戦闘力を持つが数が少ない。

 エジプト王国が作る小麦や豆には興味が無い。

 生贄を捧げれば、彼等は国境を侵さない。

 それがエジプトと竜人の協定であった。


 だが、今回の相手、カンビュセス2世という男相手には勝てそうも無い。

 エジプト王プサムテク3世は、最近滞りがちだった生贄の増加と共に、援軍を願った。


「彼の方々は、約束を守るなら勇者を216人送る、との事」

 竜人の指は3本、折って数えての6進法で物を考える。

 だが、竜人1人で人間5人分以上の戦闘力が有るのと、人間では一部の神官以外聞き取れないコミュニケーション能力を使った連携攻撃をして来る為、少数でも侮れない。


「よし、これで勝った!

 我が軍はペルシウムに出撃せよ!」


 エジプト軍は戦車と歩兵からなる軍を出撃させる。


 そして思わぬ事態に直面する。


「キュプロスの町がペルシアに寝返りました」

「サモスの僭主ポリュクラテスが艦隊ごとペルシアにつきました」

「同盟軍のヘラス(ギリシャ)軍と竜人たちが我々を攻めて来ます!」


 恐慌パニックに陥ったエジプト軍は壊滅した。


 ペルシア帝国「王の王」カンビュセスは嘯いた。

「戦争は戦場に着く前に形を作っておくものだ。

 どの勢力も、商業的に豊かになる一方で、約束を守らず、危機が迫ってから甘い事を言って来る者を信用するものか!

 ヘラスも竜人ティアマトスも話はつけてある」


 エジプトからは「セベク」、ペルシアからは「ティアマト」と呼ばれるドロマオエサウルス科の進化生物は、人類の国家で例えればスパルタという都市国家を、より収奪型にした共同体を持つ。

 国王は居ないが、母系の氏族の長たちによる合議制を採る。

 人類程に領土や物資への欲は無く、逆に食糧や生存に対する欲が均等に高い為、集団になる事で誰かに引っ張られるのではない、集合知性が発生する。

 今回、その集合知性が下した判断は、約束を数年守らなかったエジプトではなく、即座に生贄を送り、ナイル河南方には攻めない、逆に攻め取って良いと言ったペルシアの方を信じる、というものだった。


"我々を偽る者は、我々に偽られても仕方ナイ"


 人類とは違うが、似た結論にも辿り着くのだ。

 馬に匹敵する走力と、その足のナイフのような中指による殺傷力でペルシウムのエジプト軍を蹂躙すると、ほぼ時を同じくして、竜人たちはエジプト南方に攻め込む。

 そして撃退される。

 深追いして来たエジプト軍は、狩猟型縦深陣に誘い込まれた事を察知した刹那、爪と牙と原始的な鈍器によって壊滅した。


 連絡役として竜人ティアマトス軍に入っていたペルシア軍人は思った。

(もしも彼等が投射兵器を手に入れたら、手の付けようが無くなるな……)


本来、恐竜が居なくなったニッチを哺乳類が埋め、進化するのに1000万年ズレがあるので、馬やヒトがこちらの地球と同じペースで進化するとは考えられませんが、人類と恐竜人類が共存していたなら、ってストーリーにする為、あえて同じ名前、同じ王国、同じ状況の人類史の推移としました。

番外編ですし、ご容赦下さい。


なお、リアルに考えると、アナザーアースでの第四紀にあたる時期、哺乳類の進化から考えて

・ヒト科はチンパンジーとまだ分岐していない

(ゴリラとは分岐した)

・馬はメリキップスという三本指の種

てな感じです。

・恐竜人類が生きているのは熱帯から亜熱帯

・他に角竜や小型肉食竜もいるが、それぞれウシ科、ネコ科と競合し、小型化

・海は、ダニアン期の10万年で白亜紀末大絶滅に近い状態になり、早くから哺乳類の進出が為される

・特に北極南極からの寒流の為、海生爬虫類は海亀やイグアナ程度のサイズ


恐竜人類の根拠は、元々コミニュケーション取っていた種がいた事と、気候寒冷化に伴い生息域減少、それで個数の密集が起きた為、ヒト科の文明化とはやや様相が異なる社会化が起こり得るというものです。

ヒト科のと違うのは、多分彼等は牧畜までは考えても農業に辿り着かず、収穫の調整や分配はあっても、多数による生産にはならないでしょう。

故に、奴隷が居ない社会になる。

ヒト科でいえば遊牧民社会に似ていて、分配の頭数を少なく出来る為、スパルタのように強兵を作る。

故に恐竜人類都市は、狩猟の兵士、卵や幼体を守る守備部隊、幼体を育てる教師、少数でも強くある為簡単な武器を作る技術者、そして正しく分割する行政官という様子になるでしょう。

生産より分配と、取り過ぎを防ぐ調整の為、数学は発展するでしょう。

書いたように、彼等の指は三本なので、6進法の人類とは異なる体系になりますが。

音声ネットワークの関係で音楽は生まれる可能性がありますが、文学は出来るかどうか。

指が三本なので、細かい文字は出来るかどうか。

また、声帯が無い音楽ネットワークなので、多彩な語彙も出来ない可能性が高い。

なので、神話やフラのような伝承はあっても、言葉をこねくり回す文学は難しいと考えてます。


というのを前提に、本編とは別に番外編をいくらか書いてみようかと思います。

人類と竜人が共存する仮想歴史を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ