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ネカマーズ

アキ『はぁ…』


エル『どったのアキちゃん?これみよがしにため息なんかついて』


疲れたようにため息を吐く白髪の少女に、黒髪メガネの花魁のような格好をした美女が魔法を唱えつつ尋ねる。

彼女の手に握られた魔法書から魔法陣が、まるで閉じ絵本のように湧き出て広がり、森の中にド派手に展開される


アキ『この前臨時で野良パに入ったんですけど』


エル『あー、金曜日?』


アキ『そーそー。その時共闘した剣士くんに、次の日呼び出されて』


エル『あっ⋯⋯(察し)』


アキ『告白されました』


エル『だろうねwww』


愉快そうに笑う、エルと呼ばれた美女。もちろん彼女の手から生み出される魔法はこの間も、目前のウルフ系モンスターを狩り続けている。

そのため肩を揺らしながら笑う様が、まるで死にゆく狼を嘲笑うようで酷く残虐に見える。まあオンラインゲームではままある事なのだが。


カタリナ『こくはく!?』


一拍遅れて青髪の、盾を持った少女が反応する。顔以外を無骨な鎧で覆っているが、それでも愛らしさは一向に失われていない。


エル『リナちゃんは相変わらずチャット遅いねぇ』


アキ『なんか一種のキャラクターになりつつありますよね』


カタリナ『お変事は!?』


エル『変事…?アキちゃん、まさかそういう…』


アキ『もちろん断りましたよ!カタリナさん敵!敵!!』


焦って興奮したように白髪の少女に詰め寄る青髪の少女。その間、役割を放棄したために、一斉に黒髪の美女目掛けて敵が流れ込む。


アキ『『私、男です』ってハッキリ言って断りました』


エル『あらぁ…意外と残酷なことするわね』


アキ『カタリナさん白バフ撒きますー。残酷?』


純白の光、防御アップ効果を敵に囲まれているカタリナに付与するアキ。一向に減らない敵に辟易しつつ、雑談を続ける。


エル『普通に振るだけでも良かったんじゃない?』


アキ『あー…今思えばそうですね。言われて初めて気づきました』


カタリナ『ありがとうございますアキさん』


アキ『そこまで考える余裕なかったので…いえいえー』


エル『アキちゃんも罪な女ねぇ』


アキ『男なんですけどね』


カタリナ『アキさんは可愛いです!』


アキ『男なんですけどね』


なんで連投させられてるんだと苦笑する。おっとエルさんの青バフ切れかけてる、補充しとこ。

該当するショートカットキーを押すと、青いクリスタルの周りを木が覆っている杖の先から青い光がエルへと飛ぶ。タイミングよくかかった瞬間に彼女の魔方陣から魔法が発射され、カタリナの周囲の狼を仰け反らせた。


エル『もう1枚火力が欲しい』


アキ『分かる』


エル『知り合い居ないのー?』


アキ『ネカマって前提を除けばいるんですけどね…』


カタリナ『いません』


そう、白髪の白ローブ美少女と黒髪の花魁メガネ美女、そして青髪の鎧少女で構成されたこの美少女パーティー。

全員、中身は『男』なのである…ッ!


アキ『別にネカマに限る必要は無いのでは?』


エル『なに?この美少女だらけのパーティーにケダモノを一匹ぶち込んで、犠牲者を増やしたいの?』


アキ『いや、普通にバラせばいいんじゃ…というか犠牲者ってケダモノ側じゃないですかヤダー』


エル『全員ネカマのパーティーに入りたがるかしらねぇ…』


アキ『探せばいるんじゃないですか?』


カタリナ『男の人はイヤです』


アキ『いやカタリナさん、我々も男なんだけれども』


エル『リナちゃんもこう言ってるし、ね?』


カタリナ『ケダモノ…w』


あ、時間差でウケてる。良かったねエルさん。

そうこのパーティー、『ネカマであること』が参加条件なのである。

元々エルさんと私、アキが色々あってネカマ同士仲良くしていたら、カタリナさんが入ってきて出来上がったパーティーなのだ。

結構ネカマ同士の共通の話題も多いので、なるべくネカマ以外は避けた方がいいのかなと思っていたのだが…意外と入れられない理由多いな。


カタリナ『でも、火力は急務です』


アキ『そうですよねー。となると女性プレイヤーから探すか…』


カタリナ『ダメです』


カタリナ『女の子はもっとダメです』


エル『リナちゃんのチャットスピードが加速した…ッ!?』


アキ『カタリナさん、ネタなのか本気なのか分からないです』


男もダメで女もダメってもうアウトじゃないか。UMA?UMA呼び出しゃいいの?

まあでも、本当の女性ならネカマへの忌避感はより強いかもしれない。好んで自分側の性別に偽るとか、意味が分からないだろうから。


カタリナ『ごめんなさい、横槍ばかり挟んで』


アキ『いえいえ、仲間ですし、むしろドンドン言ってください。迷惑とかでは全然ないです』


そう話すとカタリナさんは近寄ってきてハートマークを出してくる。うん、嬉しかったのは分かったから狼引き連れたままこっちに来るのはやめようか?さっきからゲシゲシ痛いから。

急いで自分の体力を回復しつつ考える。しかしその日のうちは、やはりいい答えは出そうもなかった。

ちょっと長くなってしまった

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