告白されたお話
━━━心地よいそよ風が、純白の髪を揺らす。
柵に手をかけ、先を見すえるその持ち主。眼下には中世的な石畳の道路、石造りの家々。徐々に傾きかけた日差しが、街並みを茜色に染めあげる。
『キレイだろ?ここ。俺のお気に入りなんだ』
その顏でどれだけの女を骨抜きにしてきたのか?そう問いたくなるほど神秘的な造形の、夜闇のような黒髪の男が隣に並ぶ。鍛え抜かれ完成されたその体躯に見合う、大ぶりの無骨な鉄剣を背負って。
『本当……こんなところがあるなんて、知らなかった…』
ピンクのプリンセスドレスを身にまとった少女が、感慨深げにそう呟く。サファイアのような透き通った瞳には、人々の生活の灯火が映り始める。
『綺麗…』
『お前も、綺麗だよ』
『えっ…』
パッと振り返る少女。つられてスカートがフワリと揺れる。
振り向くと、艶やかな黒髪の青年が目と鼻の先。少女の小ぶりな顎を手に取って、囁く。
『出会ってからずっと、好きだった。一目惚れだった』
『えっ、えっ、えぇ……』
困惑した様子の彼女の耳に、男は畳み掛けるように愛を落とす。
恥ずかしげに顔を赤らめながら、それでも真っ黒な瞳を合わせて。
『俺と、付き合ってくれ』
言った。言ってしまった。
男の言葉に、完全にフリーズする少女。顔が次第に青くなっていき、白磁の肌がそれを際立たせる。
『あ、あの…その…』
『…悪い、困らせるつもりじゃなかったんだが』
『ち、違うの、その…』
少女の様子に何かを察したのか、困ったように笑う男。その姿すら絵になるのだから、罪なものだ。
しかして彼女は否、と首を振る。何かを言い淀むようにえづきながら、そして━━━
『ごめんなさい、私━━━━』
今日一番の風が、2人の対象的な髪を揺らした。音をかき消すように、木の葉が舞う。
『━━━━男なんです』
されど少女の爆弾発言は、彼に届く。
よろしう