表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/211

13.加わる者、外れる者

 歌の余韻に浸りつつ、バイロンと一緒に店を後にした。


 アリーチェの進化からは予想外の満足を得られた。

 彼女は伸びる! とは分かっていたものの、これほど早いのはまるっきり予想外だ。

 まさに嬉しい誤算だ。


 その余韻を味わいつつ、ついて来たバイロンに問うた。


「で、何しに来たんだ?」

「偶然通り掛かって、殿下のお姿が見えましたので」

「嘘だな」

「え?」


 驚くバイロン、俺は歩いたまま笑顔で振り向き、知り合ったばかりの商人を見上げた。


「商人が時間を無駄に過ごす訳がない、成功している商人なら尚更だ」

「……」


 今度は違う意味で絶句するバイロンだった。

 目玉が飛び出そうなくらい目を見開かせて、俺を凝視してきた。


「どうした」

「いえ、そのお歳で……しかも貴族のお方が商人をそこまで理解している事に驚きました」

「こっちは逆に、時間を無駄にするのが仕事のようなものだからな」

「さすが親王殿下」


 俺はフッと微笑んで、ちらっと背後を見た。

 アリーチェがいる店が徐々に遠ざかっていく。


 彼女のパトロンになったのは貴族特有の習性から来るもの。

 ぶっちゃけ道楽であり、道楽とは無駄を楽しむという意味も併せ持っている。


「商人だと、ああして育てはしないだろう」

「いえ……あっ、まあ」

「何を言いかけた」

「えっ、その……」


 バイロンはばつの悪そうな感じで言いよどんだが、やがて観念して答えた。


「妾としてなら金や時間を掛ける者も」

「ふっ、なるほど」


 俺が六歳児だと思い出していったんは口をつぐんだわけだ。


「で?」

「はい、殿下にお願いしたいことがございまして……そろそろ今年も、王宮で使用人を採用する時期がやってきました」

「ふむ」


 バイロンの言うとおりだ。

 王宮は毎年に一度、女の使用人をまとめて大量採用する。


 名目上は使用人の採用だが、もちろん陛下の目に止まれば夜伽を命じられ、妃などに成り上がるチャンスもある。

 それ故に、選考の基準も厳しく、応募の人数も多く毎年狭き門だ。


「それがどうした」

「その、何か選ばれる傾向などはお分りになるかなと」

「王宮に女を送り込みたいわけだ」

「……」


 バイロンは真顔で頷いた。

 「政」と「経」は古来より切っても切れない関係にある。

 息の掛かった人間が王宮内にいればいち早く情報を得られるし、万が一妃に、さらに皇后になっちゃったりすれば商売にものすごくプラスに働く。

 バイロンはそれをしたいわけだ。


「もちろんタダでとは申しません。わたくしめの気持ちはもう、お屋敷の方に届けさせております」


 前払いか、やるな。

 ここで「成功した暁には――」なんて言い出したら二流だ。


 さて、どうするか。

 別にもらうだけもらっても別にいいんだ。


 俺は親王、皇帝の実子。

 商人の献上物なんて、もらうだけもらって「よくやった」の一言で済ませることも出来る。

 親王とはそういう身分だ。


 だが、俺はこの男を気に入っている。

 彼が見いだして養女にしたあの少女。

 それをしたバイロンという男を気に入っている。


 だから何かないかと、色々考えた。


 ふと、二人の顔が頭に浮かんだ。

 一人は今し方別れたアリーチェ、もう一人は王宮にいる皇帝陛下だ。

 陛下は今俺を気に入ってる、俺が推薦すればすんなり受け入れてくれるはずだ。


「一つある」

「なんでしょう」

「……俺が気に入るような女なら、口を添えてやれる」


 そう言ったあと、ちらっと背後を――アリーチェのいる方角を見た。


 無条件にじゃない、本当に俺が気に入った人間だという事を匂わせる。

 バイロンはどうやら賢かった。

 俺とアリーチェのいる店を交互に見比べたあと、大喜びして頭を下げた。


「ありがとうございます! お眼鏡にかなう娘を選びます」

「うん。まあ本番は一発勝負だが、俺の所(予選)は何度でもチャレンジさせてやれる」


 恩情と、ダメ押しに誤解されないように付け加える。


「寛大な御心、感謝致します!」

「ん……まだ何か言いたげな顔をしてるな」


 頭を上げたバイロンの顔からそれを読み取った。


「な、何故それを」

「そんな決意した顔をされれば嫌でも分かる」

「さすが十三殿下、ご慧眼恐れ入ります」

「話してみろ」

「はい……もしよろしければ、わたくしの看板に、殿下の紋章を入れさせて頂ければと」


 これは驚いた。

 自分の看板に俺の紋章をいれる。

 それはつまり、完全に俺の下につくって事だ。


「いいのか?」

「はい! まだお目にかかって日が浅いですが、これまでの殿下の凄さを目のあたりにして、是非とも麾下に加えさせて頂ければと」

「ああ、いいぞ」

「本当ですか?」

「裏切りだけは許さないからな、俺は」

「ありがとうございます!」


 バイロンは往来であるのにも関わらず、人目はばからず俺に片膝をついた。


 その瞬間、


――――――――――――

名前:ノア・アララート

アララート帝国十三親王

性別:男

レベル:1/∞


HP F   火 F

MP F   水 E+SS

力  F+F 風 F

体力 F+F 地 F

知性 F+F 光 F

精神 F+F 闇 F

速さ F

器用 F+F

運  F+F

―――――――――――


 バイロンが配下に入ったことで、知性と精神の二つに「+」がついたのだった。


     ☆


 夜、自室でステータスを眺める。

 バイロンが部下になった事で上がったステータスを眺めていた。


 そろそろ一通り埋まってきた。

 あの魔道書を吹き飛ばさなきゃ風にも「+」がついてたんだが、まあそこは今言ってもしょうがないだろう。


 念のために、使用人をよんで、「表向き」のステータスも呼び出してもらった。


――――――――――――

名前:ノア・アララート

アララート帝国十三親王

性別:男

レベル:1/∞


HP F   火 F

MP F   水 SSS

力  E   風 F

体力 E   地 F

知性 E   光 F

精神 E   闇 F

速さ F

器用 E  

運  E  

―――――――――――


 こっちにもちゃんと反映されている。


 俺はこれをみて満足した。

 これからもまだまだ増えていく。


 皇帝の実子、十三親王。

 この立場では、下につく人間を増やさないというほうが難しい。

 そして下につく人間が増えれば増える程、「+」分が増えるし、実際の能力もあがる。


 実際にも上がるのは、レヴィアタンを忠犬化させたことが証明している。


 このまま貴族で居続けて、配下を増やしていくだけでどんどん強くなる。

 想像する未来は明るく、俺は満足した。


 しかし、異変が起きる。


「――っ!」


 俺は弾かれるようにパッと立ち上がった。


 今見ているステータスが変わったのだ。


――――――――――――

名前:ノア・アララート

アララート帝国十三親王

性別:男

レベル:1/∞


HP F   火 F

MP F   水 E+S

力  F+F 風 F

体力 F+F 地 F

知性 F+F 光 F

精神 F+F 闇 F

速さ F

器用 F+F

運  F+F

―――――――――――


 水が減った。

 直前までSSだったのが、Sになった。


 何が起きたんだ?

 「+」の後は配下の補正だ、そして水のSSはレヴィアタンを屈服させたときに、Sはおれが生まれた直後、アルメリアを俺の封地にすると陛下が宣言した瞬間についた。


 つまり――アルメリアの異変。


 しかも俺の配下から外れるような異変。


「……っ」


 俺は駆け出した。


「ご主人様」


 部屋を飛び出すと、廊下に控えていたメイドがびっくりして、俺の後についてきた。


「どうかなさったんですかご主人様」

「馬車を用意しろ、王宮に行く」

「は、はい!」


 メイドは「どうして?」と問える身分ではない、俺の命令に慌てて従い、馬車を用意した。


     ☆


 夜、しかもいきなり訪ねてきたのにもかかわらず、陛下は俺と会ってくれた。

 図書館ほどもある陛下の書斎で、俺は片膝ついて、陛下に報告した。


「アルメリアに異変が起きています」

「……何故分かった」


 え?

 なんだこの陛下の反応は。

 まるで――。


「知っていたのですか?」

「いいや、兆候を掴んでいるまでだ」

「であれば」


 俺は片膝ついたまま顔を上げて。


「間違いなくそれが起きました」

「……」


 陛下は眉をひそめて、俺をじっと見つめた。


 しばらくして、陛下の腹心、宦官クルーズが入ってきて、陛下に耳打ちした。


「そうか。わかった」


 陛下が頷くと、クルーズは腰をかがめて書斎から退出した。


 陛下は一つため息をついて、それからおれの方を見て。


「すごいな、ノア」

「……では?」

「ああ」


 頷く陛下。


「アルメリアで反乱がおきた」


 やっぱりそうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●感謝御礼

「GA FES 2025」にて本作『貴族転生、恵まれた生まれから最強の力を得る』のアニメ化が発表されました。

mrs2jpxf6cobktlae494r90i19p_rr_b4_fp_26qh.jpg
なろう時代から強く応援してくださった皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公に対する登場人物の感想が「すごい」ばかり 小学生か?
[一言] ステータスの変化ばかりに注力して肝心のストーリーが おざなりになる。そのうち描いている本人も嫌になってきて 中途半端に終わるパターンだろう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ