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アイラブ☆吾が君  作者: 白亜凛
アイラブ☆吾が君
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11

 

「いってきまーす」


「いってらっしゃい」


 クスクス笑いながら手を振る飛香にあきらめたような笑みを浮かべて頷いてから、碧斗は視線をやや上に向け眉間をひそめた。


 碧斗と目が合ったのは、晴れて堂々と飛香の恋人に昇格した西園寺洸だ。


「じゃあね、お兄さま。ちゃんと送り届けるからご安心を」

 勝ち誇った笑顔でひらひらと手を振る。


「まだお前の兄になったわけじゃない」


 肩をすくめて洸がクスッと笑い、閉じてゆく玄関の扉に碧斗の澄ました横顔が消えてゆく。

 スッと伸ばした手で掴んだのは、少し大きめの飛香のバッグ。


「ありがとうございます」


「さ、じゃ行こうか。天気が良くてよかった」


 心配していた台風もさほどの爪痕も残さず予定より早く通り過ぎた。冴え冴えと晴れ渡る青空が眩しい。


「洸さんは晴れ男ですもんね」


「まあね。普段の行いがいいから」


 クスクスと笑う飛香の手をひいて、向かうのは軽井沢の別荘だ。

 9月は連休が多い。おまけにこのところ仕事も順調に片付いている。ノー残業は多少崩れつつあるが、それでも去年と比べれば随分と時間に余裕もあり、スムーズにカレンダー通り連休で休むことも出来た。

 愛する恋人と手に手を取り合って小旅行にも行ける。


 結局千年前も今も同じだった。

 碧斗の話を信じれば、千年前の蘭々と洸の結婚の話は本人を無視した親同士の話だったらしく、紆余曲折の果てに流れたらしい。


『あの時点ではまだ話は進んでいたんだ。嘘をついた訳じゃないぞ』


 そしてその後、洸こと頭中将は足しげく朱鳥姫のもとへ通っているという。


 飛香も朱鳥も同じようにお互いの境遇を思い悩んだのだろう。10月に鏡を通してふたりが話し合う日を迎えるまではと、自分の気持ちを抑えながら過ごしていたようだ。


 あとたったひと月なのに、どうして待てないんだと碧斗はあきれていたが、それい対して

「それはお前が恋を知らないから言えるんだ」

 そう答えながら、自分も随分と変わったもんだと洸はしみじみと思った。


 たとえ1分だって、離れたら切ない。


 こうして手を繋いで歩いていても、それだけじゃまだ足りない。


 エレベーターを待つ時間が惜しくて、飛香を抱き寄せてキスをした。


 千年前の今が同じように幸せでも、明日のことはわからない。


 それでも洸は願った。



 ――今この一瞬に放つ深い愛情よ、千年先まで届け。


 永久に僕は君を愛する。

拙いお話を最後まで読んでくださってありがとうございました。


あらすじ--------------------


平安時代、貴族の姫である朱鳥は、初恋も叶わず貴族の姫としての人生にも馴染めずにいた。

鬱々としていたある時、朱鳥は陰陽師である兄の力によって、千年後の自分と入れ替わることになる。

平安時代から平成に行った朱鳥(飛香)の元に現れたのは、平安の都の初恋の君や気になる公達に瓜二つの男性たち。


かたや平成では、『恋? そんなものに溺れるようになったら人間おしまいだね』と言いのける皮肉屋の御曹司西園寺洸のもとに、神秘的な女性、飛香が現れる。


平安貴族の姫と平成御曹司の恋の物語。

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