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アイラブ☆吾が君  作者: 白亜凛
運命の糸のゆくえ
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妹がほしい12

 

 次の日、アラキが仮装パーティ用にと用意した仮装は洸が予想した通り平安時代を思わせる衣装だった。

 洸に用意されたものは二藍の直衣。夏らしく、三重襷の文様が透けて見える紫色の単衣が美しい。


「コスプレじゃないか」

「プレイをするわけではないので仮装ですよ」


「暑い」

「会場は普段以上にエアコンを利かせているそうですから、ご心配なく」


 直衣姿でいつものようにゆったりとソファーに座り、洸がブツブツ文句を言いながらコーヒーを飲んでいる頃、飛香もサワに手伝ってもらって着替えていた。

 飛香の衣装は、十二単ではなく外出時の服装である壺装束である。

 平安女性の旅姿なので着物の裾は引き上げられていて歩きやすい。被る笠には薄い垂れ布がついているので顔が隠れるためマスクをつける必要もなくもってこいの衣装だった。


「まぁ素敵。よくお似合いですよ」

「かわいい!」


 平安の都で着たものとは着心地が随分違う。

 動きやすいうえに軽い。どんな構造になっているのか色々とチェックしながら、飛香は大はしゃぎで喜んだ。


 支度を終えてリビングに行った飛香は、息を飲んだ。


 ――頭中将!


 窓辺に立って飛香を振り返った洸は、正にあの日、突然目の前に現れた頭中将そのままに見えた。


「へえ、可愛いね」


 飛香をしげしげと眺めながら、洸がにっこりと微笑む。

 頭に被った市女笠からは、カーテンのような薄い垂れ布ついているために飛香の顔ははっきりとは見えない。


「笠を外しましょうか」

「あ、は、はい」


 笠を取るその時まで、不自然なほど驚いていることを誰にも気づかれずに済んだ。


「よくお似合いです」

 アラキも感心したように頷き、「そうだろう?」と飛香の着物を選んだサワは満足げに胸を張る。


「会場に着いたら、こちらをお忘れなく」

 飛香は薄い布を頭から被っているのでマスクは必要ないが、洸には目元を隠すマスクが必要だ。

「はいはい。わかりました」


 車に乗っている間、市女笠を取っている飛香は洸の横の席で気が気ではなかった。

 洸があまりにも頭中将そのものなので、ジッと見つめていたくなる衝動に襲われる。それを堪えるのが辛い。


「眉毛も綺麗に隠したんだね」

「はい。サワさんがやってくれました」


 飛香の実際の眉は薄いテープを貼って隠してある。そのテープの上から化粧をしているので遠目にはわからない。

 そしてその上にスッと眉が引いてある。唇に塗る紅は、平安当時のように紅花由来のものだというのサワのこだわりだ。

 今日の車はセダンではなくリムジンのせいか、車内はしんと静まり返っている。

 見たいという衝動にかられ、耐えられなくなった飛香がチラリと隣を見ると、洸は瞼を閉じていた。


 ホッとして、そのままその横顔を見つめる。


 ――間違いない。この人は本当に頭中将の生まれ変わりなんだ。


 飛香は不思議な縁を思った。

 どんな縁なのかはわからないが、自分がいて家族も同じで、初恋の人や頭中将までいるこの世界。

 それならば、やはり同じ疑問がよぎる。


 ――私と"飛香"は、入れ替わる意味があったのだろうか。


 そんなことを思いながら、今ここで生きていることを確認するように、飛香は痛いくらい唇を噛んだ。


 30分ほど走らせたところで、車は青扇学園に着いた。


 飛香が座る側のドアを洸が開ける。

 目元を隠す布を巻いているのが残念なくらい素敵な笑顔で「さあ、どうぞお姫さま」と手を差し出した。


「ありがとうございます」

 リムジンに乗った平安貴族がレディーファーストをしているのがなんだかおかしくて飛香はクスクスと笑った。


 続々と到着する車に降りてくる人々。


「ん?」


 その中に洸の見慣れた車が何台かある。それだけならそれほど驚くことではないが、問題は衣装だ。


「うわーすごいですね!」と飛香が喜ぶ。

「なんなんだ、示し合わせたように平安時代じゃないか」


 知ってる面々が皆、洸と同じような直衣や狩衣姿で歩いてくる。連れの女性たちは飛香のように壺装束だ。


「お疲れさまです」

 聞きなれた声に振り返ると、そこにも平安貴族がいる。


「なんだ、君もか」

 目を半分だけ装飾した眼帯で隠してはいるが、紛れもなくそれは洸の秘書鈴木だ。

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