わたしと親友。
この作品が初めてのオリジナルなので、かなりドキドキしています。
誤字・脱字があった場合は、指摘していただけると助かります。
<回想>
「ちぃ!」
後ろから声が聞こえた。大切な、誰よりも大事な友達の声。…わたしの親友である、野上 由希波だ。
「おはよう。由希波。」
由希波の方へと振り向くと、さらさらでツヤのある金色の髪が、ふわりとたなびいた。
「おはよ!ちぃの髪、今日も綺麗だね!」
由希波は毎日、わたしの髪を褒めてくれる。
「そうかな?」
わたしの自慢の髪。でも、黒色じゃない。金色だ。瞳の色だって、みんなとは違う。灰緑。それが、わたしの瞳の色だ。
…ハーフ。お父さんは日本人だけれど、お母さんは確か…カナダの人、だったと思う。わたしは生まれも育ちも日本で、海外に行ったことさえないから、よく分らないけれど。
「何か考え事でもしてる?」
「ううん!何でもないよ!」
答えてから、しまった!と思った。これじゃあ、考え事してました、って言ってるようなものじゃん!
「考え事、してたんでしょ~?」
由希波がからかうように尋ねてくる。
「してた…けど…。何でもないよ。」
由希波は、すぅっと目を細めた。嘘をついているのは、分かってる。そう、言っているかのように。
「絶対に嘘!また、自分はハーフだ、とか、人とは違う、とか思ってたんでしょ!?」
わたしは、一瞬返答に詰まった。思わず目をそらす。すると、由希波はこう言った。
「あのね、ちぃはちぃのままでいいの!わたしの親友は、ちぃなんだから!他の誰でも嫌!そのままのちぃがいいの。綺麗な金色の髪がいい。純粋さを映す、灰緑の瞳がいい。ちぃじゃなきゃ、駄目なの!」
はっと目を瞠る。…わたしのままで、いい。人とは違う、金色の髪も。日本人とはかけ離れた、灰緑の瞳も。全てを肯定してくれるの?そのままのわたしがいい。そうまで言ってくれるの?
「…ありがと、由希波。」
わたしは小さく、ありがと、と言った。慰められた気がした。そして、思い出す。由希波は初めて会ったときあの時からずっと、同じことを言っていたな、と。保育園の時。小学校の時。中学校の時。そして、今。そのたびに慰められて、ホッとして。癒されて。
「ん?わたし、事実を言っただけだよ?…ね、ちぃ。」
由希波が、改まった口調でわたしの名前を呼んだ。
「なぁに?由希波。」
わたしは首を傾げた。…珍しいな。由希波。
「わたしと友達に…親友になってくれてありがとう!」
「と、突然…なに?」
わたしは思わず、そう問いかけた。
「わたしが寂しい時。辛い時。弱音を吐けば、ちぃはいつも聞いてくれた。相槌を打ちながら、一緒に悩んでくれた。楽しかったことを話したら、一緒に笑ってくれた。わたしの下らない話も、全部真面目に聞いてくれた。」
それは、わたしだって同じだ。全く同じことを思っている。
「由希波。わたしも、おんなじ。わたしだって、由希波に悩み事をいっぱい聞いてもらった。いつだって真摯に受け止めて、マシになる方法を一緒に考えてくれた。ずっと一緒だった。友達が居なかったわたしに、初めてできた親友。誰よりも仲が良くて、誰よりも大切で…わたしを全部肯定してくれて。初めてだった。そんな人。」
今まで溜めてきたもの全部、伝える。…以心伝心。今まで、お互いの気持ちが判らないことなどなかった。…一期一会。由希波との出逢いこそが、わたしの奇跡。
「わたしの親友は、由希波。他の誰でもない。たった一人の、大事な親友。」
わたしは、由希波を真正面から見つめた。
読んでくださり、ありがとうございます。更新は不定期でしょうし、文字数は2,000字以内である場合がほとんどでしょうが、よろしくお願いいたします。