ベーランは2塁から
ここは野球の独立リーグ、その1チームの練習風景。というか、練習時間。
監督の野際はベースランニングを選手達に指示していた。しかし、彼等はなぜだろうか。本塁に集まりだした。
「おい、お前達。どこからベースランニングを始める気だ?」
「は?本塁からだろ。普通」
どっちっかつーと、野際がおかしい。そんな意見が大半であった。
ベースランニングは、本塁、一塁、二塁、三塁、また本塁と。ダッシュで周るという練習だ。ただ速いだけでなく、いかに速さを維持して、周るかがキモである。これが直線短距離とは違うので、いかに短く周れる技術を持つかも問われる。
「とんでもない回数を指示して、また変なことっすか?」
「まったく……」
ベースランニングとは、………
「そもそも野球がなにかというのから始めよう」
「野際。そこからかよ」
このチームはまさにチーム改革の最中であった。
「走塁から見た野球で考えれば、いかに本塁を踏むかというゲームだ。荒野、打者が一気に本塁まで還って来るにはどーする?」
「そんなのホームランしかねぇじゃん!!」
「その通りだ。だったら、俺はホームランを打つする練習に切り替える。モチベーション上がるしな」
「じゃあ、なんのためのベーランだ。ってなるわけですね」
「菊田。理解がはやい」
選手達を引き連れて、野際が向かったのは2塁ベース。
「さっきも言ったが、本塁を踏むというゲームなら。2塁から本塁まで一気に帰ってくるだけの時間が速くなれば、十分だ。2塁から1ヒットで得点される。それだけで相手にもプレッシャーが掛かるし、こっちの得点が増量する」
「……確かに言われて見れば」
「納得です!」
「ここからスタートで良いわけか!」
とはいえ、単なるベーランで済ませない。実践式でとにかく積ませていくのが、野際の指導法。こーいう時の彼は意外と熱が入って、話が長い。選手に納得させようとしているからである。
「各々リードをとり、投手が投げ(空で投げる)、俺がスイングしてからスタートな。それから順番で3塁コーチャーをやれ(独立リーグは選手がコーチャーを勤める)」
2塁から本塁への走塁は、本塁から2塁に向かうより走者は難しい。
打球に背を向けて走るため、判断能力がさらに問われる。3塁コーチャーが走者の目となって、指示を走者に飛ばすこと。走ることに集中するのは当然のプレイであり、迷いは作らせないのがコーチャーなり仲間の役割。
「想定は9回2アウト2塁、1点負け。必ずホームに還らないといけない場面でのヒット。全力で走るのも当然だが、無理な時は必ずコーチャーが止めろ」
なかなか無いケースではあるが、どんなスポーツも0-0から始まる。
野際が出した例えは極端だったが、先取点と追加点のことも考えて欲しいからだ。ミスをしないというプレイだけなく、チャンスを続けて活かすプレイも時に必要だ。
「1ヒットで出塁する走者は、逆転の走者だ。いいか、よく判断して回せ」
2塁から本塁へのベースランニング
「それじゃあ、200本!!開始!」
「やっぱり量が多い!!」
「陽が暮れてもできる練習だからな」
「あぁ、照明設備がある球場が欲しいね……」
秋とか冬のトレーニングって、体力作りばっかりで辛いよねぇ。でも、そーいうのがあって春と夏に繫がるわけなんよね。
この時期の野球は体力作りばかりで、退屈なんですよね。
でも、寒くないと体力作りのトレーニングなんてできないです。
球児の皆さんは頑張ってください。