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キミのタマはボクのモノ 巻の二  作者: しかも・かくの
第一章 由々しき病と麻太智の試練について
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第六回

「あ、荒城殿!? 違うのです、これは父が無理矢理に、私はそんなふしだらな女ではなく、で、ですが誤解なさらないでください、決して嫌というわけではなくっ」

「分っております。少し落ち着かれよ」

 顕光が混乱の極みといった様子でしがみつく。麻太智は手つきこそ優しくしながらも、顕光を冷静沈着に引き剥がすと一人で立ち上がった。

「ああ、荒城殿……」

 布団の上に置き去りになった顕光が切なげに手を伸ばす。幾許かの情を覚えぬでもなかったものの、とりあえず構っている場合ではない。

 顕成は禍々しさを湛えた面で麻太智を睨む。

「おのれ、ひとたびは我が娘をたぶらかし手篭めにしておきながら、今さら逃げようというつもりか。そうはさせんぞ。そなたは三条の家に入るのだ。さすれば西園寺とて恐るるに足りん。ぬしを通じて(あお)(きみ)をも手中に収め、儂が天下を支配するのだ!」

 頭は確かか、などと改めて問うのも馬鹿らしかった。顕成は明らかに己を失っている。

 ――いや、というより憑かれているのか。

 麻太智は相手を慎重に見定めつつ手刀を作った。甚だ気は進まないが、今の顕成を鎮めるには昏倒でもさせるより他なさそうだ。

「荒城ぃ、顕光を抱かんかぁ!」

 顕成が両手を前に突き出して掴みかかる。麻太智は身をずらしてかわしざま、手刀を振り上げた。

「ふぁ……」

 だが振り下ろすことはなかった。顕成の口から欠伸のような声が洩れ、膝ががくりと崩れ落ち、上体が前に倒れ込む。麻太智は即座に攻撃を中断して、力の脱けた身を支えた。常軌を逸した精気は跡形もなく失せている。

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