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キミのタマはボクのモノ 巻の二  作者: しかも・かくの
第一章 由々しき病と麻太智の試練について
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第五回

 顕成の伏す部屋は邸の最も奥まった場所にあった。風も通らなければ陽の光も当たらぬが、重病人の体にはかえってそれらは障ると考えれば、あながち異なことでもない。

 顕光に続いて麻太智も入室する。入れ替わりに看護に付いていた召使は出て行った。顕光が人払いを指示したのだ。

「父上、荒城殿がおいでくださいました」

 顕光が枕元に膝をつき、その横に麻太智も座す。

 顕成の具合はかなり悪いようだ。頬の肉がすっかり削げ落ち、肌は木の皮のように瑞々しさを欠いている。ごく微かな息の音がなければ、既に身罷っているのだと見違えかねない。

 もはや満足な受け答えはおろか、我が子が話し掛けていることさえ定かに分らぬのではないか。麻太智は心中ひそかに嘆息した。

 顕成はうっすらと目を開けた。ゆるゆると顔が横を向き、まず娘を視野に入れ、次いで麻太智の方へと移る。

「婿殿!」

 途端、瞳が爛々と光って、布団の中から伸びてきた手が麻太智の手首を捉えた。あたかも仕掛け罠のごとく、ぎりぎりと締め付ける。

「一体どこで何をしておった、ああ、いやそんなことはどうでもよいのだ、務めさえ果たしてくれるのなら文句は言わぬ、さあさあ早く儂の血を継ぐ跡取りの顔を見せてくれ、今すぐ顕光と子作りに取り掛かるのだ!」

「ち、父上!? いきなり何を言われるのです!?」

 顔を真っ赤にした顕光が悲鳴を上げる。病人の豹変に呆気に取られ、麻太智は応じる術が思いつかない。しかも顕成の力は驚くほどに強く、ちょっとやそっとでは振りほどけそうになかった。

「ぼさっとするな、床ならばここにあるではないか、いざ始めよ!」

 あろうことか顕成は布団から起き上がり、自分が今まで寝ていた場所へ麻太智を突き飛ばした。さらに続けて己が娘まで投げ倒し、麻太智は自分の上に落ちてきた顕光を受け止める破目になった。

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