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8話


 『殺す』


 念話越しに魔力を込めた殺気を送ると『ひぃぃぃ』と叫び声が聞こえた。

 どうやら無事に殺気を送ることが出来たらしい。


 『何本気で殺気送ってくれてるんですか!』

 

 何を言ってるんだこいつは?人の話を聞いていなかったのか?と涼はその有り余る寛大な心を持って同じ言葉を口にした。


 『殺す』

 『な、なんで二回も言うんですか!ちょっとした冗談じゃないですか』

 『なんだ、聞こえてたのか』

 『聞こえてますよ!さっきのはいきなり駄女神呼ばわりされてちょっとイラッとしたというか、つい心にも思ってないことを口にしてしまったというか。ですから、そのごめんなさい!謝りますのでこれ以上殺気を送らないでくださいぃ』

 

 涼の魔力を込めた殺気は神にも通用するようで、女神は失禁寸前まで追い込まれていた。

 だが残念なことに念話ではその状況まで伝えることが出来ない。悟られまいと女神が平静を装ったのだが今回はそれが裏目に出ることとなる。


 『そうかそうか、もっと欲しいか』

 

 女神の謝りますからという上から目線の謝罪に腹を立てた涼が更に強く殺気を送ると女神の声が次第に小さくなり、プツンッという音と共に反応が消えた。

 どうやら念話を切られてしまったらしい。最後のほうは小声で『出ちゃう、出ちゃうからぁ』と聞こえた気がしたがきっと気のせいだろう。童貞特有の都合のいい幻聴に違いない。まさか女神が(笑)殺気を送られて(笑)失禁するなんて(笑)ことはないはずだ(笑)。

 ほぼほぼ女神が失禁したことを確信している涼は満足したのか、意識を現実へと戻す。

 するとやはりというべきか、突然黙ってしまった涼に奴隷一同戸惑い、途中で部屋に入ってきたバリエントが涼の様子を不審に思い、受付の少女に事情を聴いている所だった。


 「あの、リョウ様うちの奴隷が失礼を、大変申し訳ございません」


 バリエントは事情を聞き、涼に対して謝罪した。

 幾ら見た目が格好良すぎる(・・・・・・)からと言ってフードを被ってくださいは失礼に当たる。奴隷達に悪気がないのは分かっているが、気に入っているなら照れて顔を隠すんじゃなく自分を売り込みにいってほしいものだと心の底からため息をついた。


 「あぁ、こちらこそ悪かった。少し考え事をしていただけだ。別に怒ってはいない」


 涼の言葉を聞き、内心ほっとしたバリエントはコホンッとわざとらしい咳をすると、


 「あの、失礼でなければお顔を拝見させてもらっても?」


 と表では何とも思ってませんよと装ってはいるものの、まだまだ傷心中の涼の心に追撃を仕掛けた。

 勿論バリエントに悪意はない。単純に自分の持つ奴隷達が頬を染めるほどの涼の素顔に興味があっただけなのだ。

 が、自分が美形と思われていることを知らない涼からすればそれは宣戦布告以外の何物でもなかった。


 俺を笑い者にするつもりなのか?俺の顔ってそんなに酷いのか?決めた。俺この戦いが終わったらイケメンになれる魔法を開発するぞ。多少痛みを伴うだろうがそこは我慢だ。さて、今後の方針も決まったところで戦争を始めますか。


 『ってちょっと待ったぁぁあああああ』

 

 魔法でこの店に隕石を落とそうとした瞬間、女神のストップがかかった。

 

 『何隕石落とそうとしてるんですか!!店だけじゃなくて街が崩壊しちゃいますからやめてください!』

 『邪魔すんなよ。これは全ブサメンとそれ以上の顔面偏差値の奴らとの戦争なんだよ!』

 『何なんですかそれ、全く理解できないです。取りあえず事情を説明してください』


 涼は話したくないと渋ったが、結局最初から最後まで話してしまった。涼は性悪女神のことだから笑うと踏んでいたのだが、何故か盛大なため息を吐き、後で鏡を見ることをお勧めしますと言われた。


 『取りあえず!顔を見せても問題ないのでフード取ってくださいね。それと今時間を止めてるんで魔法を消したわけじゃありませんから、念話が終了次第隕石降らせるの中止してくださいね?』

 『嫌だ』

 『何でですか!?』

 『条件がある。というかこっちが本題だ』


 そもそも涼が女神に話しかけたのはクレームをつけるためではなかった。勿論憂さ晴らしの意味もあったのだが、本題は別だ。


 『特殊能力よこせ』


 涼は悩んでいた。確かにどれも容姿はいい。だが容姿がいいだけなのだ。涼は凄腕の魔法使いだが何でもできるわけじゃない。殺気や構えなどからどれくらいの腕かということは分かっても、綺麗なだけの少女を並べられて、この中で武術の才能があるものを見つけなさいと言われてもそれは出来ない。出来るのかもしれないが涼にはイメージが出来なかった。女神に言われて自分のステータスを出した時は納得できた。そのほとんどが涼の知っていた情報だからだ。だが他人のものとなると全く別だ。自分のステータスを表示させた時のようにイメージすればいいのだろう。それは分かっている。だが無意識の内に見ただけで相手の情報が得られるなんてことは出来ないと思っているのだろう。この部屋に入ってきた奴隷全員に試してみたが自分が知っている情報を表示させることは出来てもそれ以上のことは出来なかった。


 『ってことでただの奴隷を戦闘メイドにするには才能とかも大事だと思うわけですよ。それを判別したいから特殊能力くれません?嫌って言うならお前がおもらっ『分かりました!貴方に鑑定の能力を授けましょう!』そ、そうか』


 黄金水の話をしただけであっさりと要求が通った。

 可哀想だしこれでいじるのは後二回だけにしてやろう。


 『ですから、あのことは誰にも言わないでください!他言無用ですよ!いいですね?』

 『分かってる分かってる』


 弄るのは後一回だけにしてやろう。必死さが怖い。

 その後、見るだけで相手のステータスを確認出来るようになったことを確かめた涼は約束通り隕石を落とすのをやめ、再び美人揃いの奴隷達へと視線を向かわせた。

 一瞥。

 結果、碌なのがいませんでした。というか見たくもない情報が山盛りなんだけど。何これイジメ?左から経験人数三桁突破してる清純そうなお姉さん。両親を殺しバラバラにして家畜の餌にした少女。自分よりも可愛がられていた妹に嫉妬し顔を剥いだ少女。この三人は別格でやばかった。後の七人もどれもが罪を犯していた。つまりここに連れてこられたのは犯罪奴隷ということになる。容姿が優れていてとても犯罪を犯したようには見えない。軽い人間不信に陥りそうだ。


 「あのー無理にとは言いませんので」


 っと危ない危ない。時間を止めて女神と話していたせいで忘れていたが顔を見せてほしいってことだったよな?んーまぁ気乗りはしないけど仕方ないか。


 「別に構わないですよ」

 

 と涼がフードを取った瞬間、バリエントは自分の目を疑った。

 奴隷達の報告通りの美少年がそこにいたからだ。黒髪黒目は珍しく、恐らくこの国の出身ではないのだろう。その異国を感じさせる目や髪が作り物のように整った彼の顔立ちを更に引き立たせていた。そして何よりもバリエントが驚いたのはフードを被っていた時には感じなかった神々しさだ。見る者を魅了し離さない何か、カリスマを超越した何かがそこにはあった。


 「リョウ様」


 バリエントが思わず跪き、涼のことを様付けで呼んでしまうのも仕方なかった。バリエントにはそれが何か分からなかったが自然と心が身体が平伏し、それを嫌だと感じないほどに涼に魅了されていたのだ。


 「え」


 涼が嫌な予感を感じるとその予感はすぐに的中する。


 「お話があります。一先ずフードを被っては頂けませんか?」


 涼の(ハート)は二度目の崩壊を始めた。


 

次回奴隷買います3


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