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3話


 特能:完全なる身体(パーフェクトボディ)

 あらゆる状態異常を受け付けない。万人を癒し、何者にも汚されず、何者にも屈することのない最強の肉体を得る。毒無効化、病無効化、精神異常無効化、呪い無効化、状態維持、身体能力向上、最適化、絶倫、精力増強、超再生。

 

 涼は一つの項目を見て声をあげて喜んだ。

 

 「絶倫キターーーーーー!!」

 

 涼が望んだのは最強の肉体でも万人を癒すことでもない。絶倫になりたかったのだ。別に自身の男性機能に不満があったわけではないのだが、やはりそこは男の夢。声をあげて喜びを噛みしめていた。当然大声をあげて絶倫になったことを歓喜しているのを女神は聞いており、呆れられていた。


 『最低です』

 「男の夢だから女には理解できないだろうな」

 『理解したくありません。心の底から望んでいたのがそんなことだなんて呆れを通り越して尊敬しますよ!他に何かなかったんですか!』

 「何もないな!断言できる。んーでもなんか余計なのもあるんだよな」

 『どういうことです?』


 女神は涼の手に入れた力が絶倫のみだと思っていたようなので説明した所、声も出ないほど驚いていた。


 『あらゆる状態異常の無効化に最強の肉体ですか?涼さん、貴方はこの世界でも危険なようです。次の世界に行きましょう。いや、もう神様になってください。私と一緒に世界を支配しましょう』

 「嫌だよ、面倒くさい」

 『世界の半分をくれてやりますので手を組もうじゃありませんか!』

 「お前それ絶対一人で管理するの面倒なだけだろ」

 『ぐっ、何故それを......。ふーんだ!そうですよ!悪いですか!世界の管理って大変なんですよ?四六時中観察しているわけにもいかないので世界を見るのは数年に一度になっちゃいますし、代理を立てようにも私の変わりが出来る神なんていませんもん!その点、涼さんなら問題ないですし!どうですか?一緒に神様やりません?』

 「やらないって、まぁ報酬さえ払ってくれるなら簡単な頼み事くらいしてもいいが」

 『本当ですか!?厄介ごと頼んじゃいますけどいいんですか!?魔王とか魔王とか魔王とか基本魔王関連しかないんですけどいいんですか?』

 「暇な時ならいい。ていうか魔王多いな」

 『そりゃあ世界の九割に魔王がいますからね!大変なんですよ、一々勇者決めるの』


 科学の発達した世界は全体の一割以下で、約九割が魔法の存在するファンタジーな世界らしい。ファンタジーな世界には大抵魔王がいて、その多くが破壊的な思想を持っている為、定期的に討伐しないと世界が破滅してしまうらしい。女神は直接世界に干渉することは出来ないので女神の代理人として勇者を決め、魔王を討伐させているようだ。直接干渉は出来ないが、勇者に特殊な能力を与えたり、武器を授けたり程度なら可能で、百年に一回は行っているとか。


 『まぁ危なくなったらお願いしますね。勇者や魔王て言っても涼さんの足元にも及ばない雑魚ばかりなので』

 「そうなのか?まぁいいさ」

 『はい!お願いします!っとそろそろ私、仕事に戻らないといけないので涼さんを本来送るはずだった森へと転送します!女神チャンネルと念じてもらえれば私とまたこうして楽しい会話が出来るので、最低でも一か月に一回はかけてくださいね!それから、えーと、えーと。涼さんが倒した金のゴリラですが、あれ国を滅ぼすことが出来るレベルの魔物なので死体とはいえ、人前に晒さないことをお勧めします。絶対パニックになるので!ではでは!よい人生を!』


 初めの転移と時と同じく、問答無用で転移させられた涼は、気が付くと普通サイズの木々、普通サイズの虫が生息している森の中にいた。


 「普通だな」


 異世界に来て早々、現実離れした森の中にいたせいか、転移早々、緑色の身体をした小人に囲まれても反応は薄かった。


 「鎌鼬」


 涼を囲むように陣を組んでいたゴブリンは一匹残らず首を斬り飛ばされていた。

 戦闘にすらならない圧倒的な戦力差。人が蟻を踏み潰すように、涼の前では何者も障害にはならない。


 数十分ほど森を歩くと街道に出ることが出来た。

 街道と言っても少し整備されただけの砂利道だったが、歩く必要のない涼にすればどっちに街があるか分かるだけで充分だった。


 「転移」


 道なりに短距離転移を繰り返せば、あら不思議。たったの一分で街が見えてきた。距離にして四十キロはあったはずだが、視認出来る範囲であれば転移を行うことが出来る涼にとって距離は何の意味も持たなかった。手違いこそあったものの陽が昇っているうちに街につけるだろうと判断した涼は街へと向けて歩き始めた。






 迷宮都市グレイフィアはキューリエ王国の南端に位置する迷宮を中心として生まれた都市であり、辺境にも関わらず、国内でも有数の大都市である。人口はおよそ二万人、日本と比べれば少なく感じるかも知れないが、これでもかなり多いほうなのだ。辺境にも関わらず、これだけの人が集まったのは一重に迷宮のおかげと言えるだろう。迷宮は魔物を生み、財宝を生む。資源の宝庫だ。まだ見ぬ宝を求めて冒険者が集まり、資源を求めて商人が集まり、宿が出来、街となる。世界中に同じような迷宮都市が存在するが、グレイフィアはその中でも人気の高い迷宮となっている。街は高さ十メートル程の壁に囲まれており、北と南の門以外からの侵入は不可能となっている。これはグレイフィアに限ったことではなく、魔物や外敵からの攻撃に備えた防壁の役割を果たしている。


 「身分証はあるか?」


 街に入る為には検問を受けなくてはいけない。身分証があれば簡単に入ることが出来るが、身分証のないものは簡単な質問を受けることになる。涼のように。


 「ありません」

 「では幾つか質問に答えてもらおう。この街に来た目的はなんだ?」

 「冒険者登録をしに来ました」

 「まぁそうだろうな。では犯罪を犯したことはあるか?ないと言うならこの水晶に触れてくれ」

 「......。」

 

 やばい。犯罪を犯したことがありすぎる。他国に大災害を起こしたり、過激発言を繰り返すバカを病気に見せかけて殺したり、マフィアを殲滅させたり、テロ組織を壊滅させたり、世界にとっては良いことが多い気がするが、どれも犯罪だよな。なんて答えればいいんだ。くそ、いつまでも無言はまずい。こっちの世界じゃまだ何もやってないんだ。イチかバチか触ってみるしかない。涼が触れると水晶は青白い光を放った。

 

 「問題はないようだな。じゃあ最後に名前、年齢、種族を教えてくれ。仮の身分証を発行する」

 「名前はリョウ、年齢は十七歳で種族は人間」

 

 ここでは名前しか名乗らない。というのも名字を名乗っていいのか判断出来なかったからだ。もし指摘されれば名字を言えばいいし、指摘されないのなら名字があるのは一部の人間のみ、貴族や王族のみの可能性が出てくる。或いは名字自体が存在しない世界なのかもしれない。今更ながら、女神の説明のいい加減さを感じる。


 「仮身分証明代は銀貨二枚だ。冒険者になるなら以降はギルドカードが身分証になるだろう。ギルドに登録したら仮身分証を持って俺か門兵に話かけろ。銀貨一枚が返金されるからな」

 

 犯罪歴を聞かれた時は焦ったものの、結局何事もなく、街に入ることが出来た涼は、冒険者登録をするよりも先に、今晩の宿を探すことにした。



次回、宿屋のトイレに涙する。

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