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第五話 : 恐怖の魔窟


「ここ...か?」


四人は洞窟らしき所に到着する。

その洞窟の入り口の周りに生えている木々はほとんど全てが枯れていて明らかに異様な雰囲気だ。


「...なんか、不気味ね」

「まぁ行くっきゃないだろ!行くぞ!!」


そして、アーサーを先頭に洞窟へと入っていった。


中は真っ暗。何も見えない。

人一人がやっと通れるくらいの幅の細い道を、四人は手探り状態で少しずつ進んでいく。


今のところ、モンスターらしき気配はない。


やがて、入り口から手で伝ってきた壁が途切れた。

広いところに出たようだ。

...と同時に、アーサーは何か違和感を感じた。


「...何か、居るーーー?

ユーリン!光、光!!」

「あ、そっか」


ユーリンは思い出したように呪文を唱える。

すると四人の頭上に火の玉が現れ、辺りを照らした。


「...え、ええーーーーーっ!!?」


アーサーは目の前の光景を見て目を疑った。

そこには色とりどりのスライムがびっしり並んでいる。


「なんだ...この数っ!!」

「アーサー、腕の傷は...万全か?」

「...はは...は」


クラウドの問いにアーサーは苦笑する。

もちろん二人とも万全ではない。


そんな会話をしていた直後、突然先頭にいた青スライムが襲いかかってきた。他のスライム達もゆっくり動き始めている。

四人はそれぞれにそれをかわし、攻撃を開始する。


続いてその青スライムが水魔法のようなものを使い、水の塊がアーサーに向かって飛んでいく。

アーサーは軽くそれをかわして、剣を振り上げてそのスライムを上から真っ二つに切り裂いた。


「...やったか!?」


しかし、そうなっていたのも束の間、二つに分かれたスライムは再びくっついて元の状態に戻ってしまう。


「戻った...!!?」


アーサーはしばらくぽかんとしていたが、すぐに正気に戻り、もう一度同じようにスライムを斬った。

すると今度はうめき声を上げ、灰に変わる。


「...?」

「アーサー!!コイツら、二回攻撃しないと倒れないみたいだ。それと色によって攻撃が異なる。赤は火、青は水、黄色は電気...いわゆる麻痺効果だ。」

「何ーーっ!!?」


クラウドは、見極めたスライムの性質についてひととおり語った。

彼は実験か不本意か、すでに左腕が麻痺状態だった。


「それで、クラウド!後もう一色...あの、紫のは...?」

「あれは...」


他の色に比べて圧倒的に数が少ないが、紫色のスライムも居る。

クラウドは言いにくそうに答える。


「確信は無いが...恐らく毒。」

「毒っ!?死ぬっ死ぬって!!」

「あぁ、危険だ。アイツらを優先して倒した方がいいな。」

「了解!」


四人は紫スライムを中心に数を減らそうと攻撃を続けたが、一向に数は減らない。むしろ、増えてる...?


「ねぇ...何か、増えてない?」

「気のせいだろ?」

「...いや、多分...だが、奴ら、少しずつ分裂しているんじゃないか?」

「まじかよ!そんなのキリがねぇよっ!!」


アーサーが嘆いた。

しかし、紫スライムの数だけは順調に減らしていったため、残り一体となっていた。ラストの紫スライムは、シャロンと相対した。


「シャロン!大丈夫か?」

「うん!大丈夫っ」


シャロンは矢を放つ。

一発目の攻撃は無事命中。


そして、もう一度矢を構えた時、突然背後に赤スライムが現れた。


「きゃっ!?」


赤スライムは火の玉を放ってくる。

シャロンはそれをかわした拍子にバランスを崩し、迫ってきていた紫スライムに突っ込む...ーーーーー。


「きゃあああ!!!」

「シャロンーーーーーっ!!!!」


クラウドの反応は一瞬遅れ、間に合わなかった。そのままシャロンは紫スライムに飲み込まれる。

クラウドは血相を変えて紫スライムをぶん殴り、最後の紫スライムは灰に変わる。


シャロンはその場に倒れこんだ。


「シャロン!!しっかりしろ、シャロンーーーっ!!!!」


クラウドは駆け寄って叫んだ。アーサー達も攻撃しつつ、そちらを見る。

しかし、シャロンは返事が出来ず、苦しそうにうなっている。

さっきよりも明らかに顔色が悪い。


「シャロン!!!」

「...く...る...しーーー」

「がんばれ...もう少しだ。

ーーーーーくそっ!!!」


クラウドは悔しそうにスライムをにらんだ。


直後、クラウドの後方に黄スライム。


よける暇も無く、クラウドは攻撃を浴び、動きが停止した。


「うあぁあっ!!」

「クラウドっ!!!?」


アーサーがカバーに入り、黄スライム撃破。

しかし、クラウドは戦える状態では無くなってしまった。


「くっ...すまないーーー」

「謝るなよークラウド!後は任せとけって!!」

「...」


とりあえずクラウドは、動かないはずの身体を無理やり動かし、自分への攻撃はおかまいなしに、シャロンに攻撃してくるスライムだけを何とか倒していった。彼の動きはかなりぎこちない。


アーサーはスライムに向き直り、小さくため息をついた。


「...とは、言ったもののーーー」


まともに戦えるのは二人だけ。ピンチだ。


アーサーは心の中で、やっぱりセインに来てもらえれば良かった、とつくづく思っていた。


後悔しても仕方がない。

とにかく、どうにかしてこの状況を切り抜ける方法を考えなければならない。


時間がかかりすぎると、スライムは分裂を始める。


二回攻撃しなければならないのは、奴らの攻撃耐性が高いからであろう。


ならば、一気に大ダメージを与えるしか方法はない。


(でも、どうやってーーー...)


「危ない、アーサー!!」

「えーーー」


アーサーが振り返ると、赤スライムが背後に飛びかかってきていた。


ユーリンは天井の岩を一部魔法で砕き、それをスライムの頭上で落とした。


見事岩は命中し、スライムは岩に潰されて灰になった。


「もー!何ぼーっとしてるのよ!」

「あ、あぁ。ごめん、ユーリン、ありがとう...」


アーサーは岩で潰れたスライムを見て、あることを思い付いた。



しかし、それはあまりにも危険すぎる。シャロンもクラウドも負傷しているし、アーサーもユーリンも体力は限界に近い。


それでもアーサーは方法はこれしかないと悟った。


「ユーリン! お前の魔法で洞窟の天井を全部ぶっ壊せるか!?」

「えっ...?どうして?」

「洞窟ごと破壊してスライムを全部潰すんだ!!」


ユーリンは大きくかぶりを振った。


「無理よ!私たちまで潰されちゃうわ!そんな大きな魔法を使ったらテレポートの魔力も残らない!!」

「それでもーーー」

「駄目よ!!危ないわ、そんな駆け引きは!」


ユーリンはアーサーの意見に賛成する気はなく、変わらずかぶりを振り続けた。


「シャロンもクラウドも怪我しているのにーーー」

「俺は大丈夫だ。」

「ーーー!?クラウド!?」


クラウドは必死の形相でシャロンを守りながら、ユーリンとアーサーに向かって言った。


「やってみてくれ、ユーリン。俺なら...まだ走れる。」

「でも...でもーーー」

「このままじゃここで野たれ死ぬのは確実だ。だったら一か八か...頼む、ユーリン!」


クラウドの言葉に押され、ユーリンはついにうなずいた。


「わかった...!」


そして、短い呪文を詠唱しーーー


「みんな、伏せて!!!」


ユーリンは天井に強力な光線を放ち、広範囲にひびを入れた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


天井からは岩が降り出し、地面が振動し始める。


「逃げるぞ、みんな!!」


シャロンを背負うアーサーを先頭に、四人は洞窟の出口を目指した。


しかし、彼らの後を大量のスライムが追ってくる。


「うおあああ!!ついてきてるっ!ついてきてるううっ!!」

「もうすぐよ!全力で走って!!」


出口が見えてきた。

ーーーが、洞窟はすでに崩れかかっている。


「ーーーよしっ抜けた!!

クラウド、ユーリン、急げ!!」


洞窟を脱出したアーサーとシャロン。


ユーリンが後ろからクラウドを支える形で二人も外へと急ぐ。

ーーーが、クラウドの身体を痛みが確実に蝕んでいた。


「うっ...」


ついに出口が目前の所でクラウドは止まってしまった。


「クラウドっ!大丈夫!?」


背後からじりじりと距離を詰めてくるスライムーーー


ーーーその時、クラウドの頭めがけて、大きな岩が降ってきた。


「危ない、クラウドーーー!!!」


ユーリンはクラウドを出口の方へと突き飛ばし、洞窟の外に逃がした。


「ーーーっっユーリン!?」


クラウドが洞窟の中へ呼びかける。

が、返事はない。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ...


洞窟はいよいよ崩れようとしている。


ユーリンはスライムと対峙していた。大量のスライムが今にもユーリンに襲いかかろうとしている。


(私一人ぐらいならテレポートできる...けど...)


もし、自分がこのまま逃げれば、スライム達も洞窟の外に出てきてしまうかもしれない。


(...こうなったらやるしか...!!)


残っている魔力全てを使ってこいつらを倒すーーーーー!!!


スライムがユーリンにとびかかってきた。ーーーと、同時にユーリンは両手をスライムにかざした。

そしてーーー


「ーーー爆破魔法 "フレア"ーーー!!」


次の瞬間、閃光と共に強烈な爆風が洞窟から吹き出した。


思わず目を瞑った三人。彼らが目を開けた時には、入り口は完全に崩れさって無数の岩に塞がれていた。



「っーーー...ユーリン...!?」


急いで洞窟の所へ駆け出すアーサー。


「どこだっ!?ユーリン、返事しろ!!」


瓦礫を掻き分けてユーリンを探すが、彼女の姿はどこにもなかった。


「まさか...ユーリン、まさか...」


シャロンが涙目になって青ざめる。


「...俺のせいだ...俺を助けたから...」

「...ユーリンは、そんなことを責めるやつじゃないだろっ...ユーリン...」


アーサーは持っていた岩を地面に叩きつけて、思いっきり叫んだ。


「ユーリイイイイイインッッ!!」




「...はーい...」

「ーーー...え?」


遠くの方で、ユーリンの声が聴こえた気がした。か細いが、はっきりと。


「あっちから声が...」

「行くぞ!」


声がした方へ行ってみる。

そこにはーーー


「...!!ユーリン!」


そこには、確かにユーリンがいた。

衣服も体もボロボロで倒れてはいるが、アーサー達を見て微笑む彼女は間違いなく生きている。


「ユーリン!よかった、生きててくれて...本当によかった!」


シャロンは涙ぐんで心の底からユーリンの存命を喜んだ。


「...どうしてこんな所まで...?」

「爆破魔法を使ってね...ここまで、爆風、で、飛ばされた...の。安心して。スライムは、全部洞窟の奥まで飛ばしたから、きっと潰れて全滅してるわ...」

「ユーリン、すまない、俺を助けたせいで...」

「ううん。謝らないで、どうってことないわ、生きてるんだし...ね」


クラウドを慰めるように、ユーリンは優しく微笑んだ。


「ありがとう、ユーリン。今回はおまえのおかげでみんな助かったよ。」

「...うん。」


ユーリンはボロボロであるにもかかわらず、上半身を起こして言った。


「さぁ、みんな歩ける程度に傷を治したら村に帰りましょう。そして、メロから本の在処を聞き出すわよ」


ユーリンの言葉にみんなが頷いた。

ーーーが、


「ちょっと待て!!」

「?なんだよ、アーサー。」


アーサーはいつになく深刻な顔をして答えた。


「その前に村長に生ハムとオレンジジュースを買って帰ってやらないとダメだろう!!?」

「よく覚えてたな、そんなこと!」



ともあれ、スライム討伐を完了した四人は傷を癒した後、村へと帰った。ーもちろん、生ハムとオレンジジュースを買って。





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