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第二十話:裏切り者の覚悟

トーマの呼びかけによって、とっさに身を低くした2人はその"何か"を間一髪で免れていた。


「なっーーーー」

「キエーーーー!!俺様のミラクル低空飛行攻撃をかわすなんて、お前らは本当にムカつくほど運がいいなあ!?!?」

「この声は...!?」


空から降ってきたのは、甲高く耳障りな声。

聞き覚えがある声にハッとして上空を見上げると、


「キエーーーー!久しぶりじゃねぇか勇者どもぉ!こっちの世界で会うのは初めてだな?」


そこにいたのは、

1度目は、ニスリル国を出発してすぐの時に。

2度目は、エルダ村を出発した後、生ハムで罠を仕掛けた時に遭遇したあの大鳥であった。


禍々しい魔界の空を背景に、大鳥は鋭い眼光で船を見下ろしている。


「あ、あなたは...!!」

「アンタ、また懲りもせずにやられに来たわけ!?」

「キエーーーー!!女ぁ!!口には気を付けろぉ!そもそも前回俺がやられたのはセイン様にであってお前らじゃーーーー」

「ファイアッ」

「キエッ!?アッツ!?キッエ!?アッツ!!相手がしゃべってる時に攻撃するとか失礼か!キエーーーー!!!」


聞く耳持たずといった態度で、ユーリンは次々と上空の鳥にめがけて炎をくりだす。


「悪いけど私達には時間がないから。邪魔は、させない...!!」


すかさずシャロンも矢を射ることで、ユーリンの攻撃に加勢する。


「キエーーー!!??待て待て待て!!確かにあわよくばお前らを倒しにはきたが、その前にやることあるんだよ!お前らは後!あーと!!だからちょっと攻撃やめて!?」

「やること...?」


鳥の言葉に、ユーリンとシャロンは武器は構えたままではあるものの、一旦攻撃を中断した。


「そうだ。てめえらの前にっ

ーーートーマぁぁ!!!」

「ーーーっ!?」


攻撃が止んだ一瞬の隙をついて、大鳥は荒々しい呼び声とともに、舵を取っているトーマの方へと急降下していく。


そして、舵を握っているトーマの手の上に着地したと同時に、鋭い爪を手に食い込ませてトーマの動きを封じた。


「ぐっ...!?」

「トーマ君!!」

「おっと!いいのか勇者?そっから攻撃すると、トーマに当たるぜ?」

「ーーー!!」


ユーリンの魔法、シャロンの矢は依然として大鳥から照準は外れていない。しかし、その鳥が言ったとおり、その間合いにはトーマが入ってしまっている。


「俺はトーマと話をするだけだ。大人しくしてな、女ども!!」


鳥は威勢よくユーリン達に啖呵を切ると、ぐるりと首を回してトーマを真正面から睨みつける。


「トーマ。計画に失敗したようだな?それで?何でコイツらを魔王のところまで運でんだよ?」

「...」


トーマは何も答えない。

鳥の爪が食い込んでいる手の痛みに耐えている表情を見せながらも、真っ向から鳥を睨み返している。


「おっと、俺は別にその事を責めてないぜ?命でも握られてこんな事やらされてんだろ?コイツらすぐに俺らのこと移動手段にするもんな、分かる分かる。」

「失礼ね!アンタはさておき、トーマを脅してなんかいないわよ!」


この鳥には珍しく、ユーリンの反論にも反応を見せず、トーマへの一方的な話し合いを続ける。


「可哀想になぁ。計画も失敗して、脅されて不本意ながらも勇者を魔王様のところまで運ぶなんて。でも大丈夫だぜ、トーマ。

お前はここでーーー勇者共々死ぬ。」

「ーーー!?」


次の瞬間、鳥は空に向かって「キェェェェ!!」と、ひときわ甲高い鳴き声をあげた。


「これは、エルダ村の時の...!」

「仲間を呼んだ声だわ...!」

「キエキエキエ。そのとおり。

ザッと150は集まってくるぜ?どういうわけかあのキザなファイター野郎とアホ剣士は今いねえみたいだし、どれだけ倒せるかね?」


すでに遠くで大量の翼がはためく音が段々と近づいてきているのが分かる。


「話し合いするだけとか大嘘じゃない!」

「キエキエキエ!信じる方がアホなんだよ!」

「どうしてトーマ君まで狙うの!?トーマ君はあなた達の仲間なのに...!」

「仲間ねえ...計画に失敗したならまだしも、勇者どもに利用されてるようじゃあ、トーマも魔王様にとっては邪魔ってこった!」


鳥はキエキエと悪意をまるで隠さない甲高い声で笑った。今すぐコイツを海に突き落としたい気持ちは山々だが、まずはこの船に迫っている大群を減らすことを優先とした。


船上でも戦えないことはないが、広範囲にも攻撃が及ぶユーリンとシャロンでは、トーマを巻き込む可能性もあるからだ。


迫りくる敵からトーマを背で庇う位置に着く。


「ユーリン...!魔法でどれくらい遠くまでの対象を狙える?」

「だいたい80メートルぐらいまでなら使えるけど、狙いは外れやすくなる!50メートル圏内に入れば何とか...」

「とにかく、この船に辿り着く鳥を1匹でも減らさないと...!!」


鳥の大群はすでに上空から少しずつ船に向かって下降をしている。


「ーーもうすぐよ。準備して!」

「さあ、お前ら全員ここでくたばっちまえーーー!!!」


勝利を確信するように、

羽を広げて高らかに咆哮する大鳥。

ーーーその足元で


「ーーーお前こそ、早くここから離れないと、消されるぞ??」


血に染まる手の甲の痛みに耐えながらも、トーマが静かに宣告した。


「キエ!?ど、どういうことだよ!?」


先ほどと一変して、動揺している様子の鳥に驚いて、ユーリンとシャロンがトーマの方を振り返る。

2人の視線には目もくれず、トーマは言葉を続けた。


「僕は今朝、セイン様からの言伝がきたんだ。 “計画に失敗したなら、せめて最後の誠意として勇者共々死んでくれ。あと鳥どもも、もういらないからついでに始末してくれ"ってね」

「ーーーキエ!?」


ギョッとして思わずトーマから離れようとしたが、その隙をついて、トーマは片手で鳥の足を掴み、自らの手の甲の上に固定させる。


「えっ!?トーマ、何をーーー」

「ああ。鳥どもが船に着地した時に、この船の爆弾に火をつけろってね。あの大群がこの船に着いた途端、僕はこのスイッチを入れて、この船を爆発させないといけない。」


鳥の足を捕らえていない方の手で、トーマはポケットからリモコンのような小型の機械が取り出す。


「トーマ!?本気なの!?」

「トーマ君!ダメよ、そんなことしたらーー」

「うるさい!魔王様の為だ!お前ら勇者も僕と一緒に死ね!」


トーマの怒鳴り声が彼に駆け寄ろうとしていた2人を止める。


「で、でもなあ!?だとしても俺らを始末する必要なんかねえだろ!?俺らは優秀な魔王様の使い!そんな俺らをーーー」

「そんな事はしらないよ。第一、セイン様が何を考えてるかなんて僕らには分かりっこないよ。そうだろ?」

「...」


鳥を逃すまいと、トーマは自ら深く手の甲に鳥の爪を食い込ませる。


「さあ、どうする?僕らと一緒に死ぬか?」


「てっーーー撤退ーー!!撤退撤退撤退キェェェェ!!命が惜しいなら撤退ーーー!キェェェェ!!」

「ーーーっ」


翼で風を巻き起こすことで、鳥は足からトーマを無理やりに引き剥がした。トーマは風に煽られて、そのまま仰向けで床にたたきつけられる。


「トーマ君!しっかり!」

「キェェェェ!お前ら今のうちにズラかるぞぉぉぉ!!キェェェェ!!」


自由の身となった鳥は翼を広げたまま、上空で待機している大群の方へと向き直り、飛び去っていく。


「あ、待てこのアホ鳥ーーーーー!!」

「プハーー!!ピラニア討ち取ったりいいいい!!!!」


その時、海面からものすごい勢いで飛んできた何かが、飛び立つ鳥の尾に食らいついた。


「キェェェェ!いでええええええ!!覚えてろおおおおおお!」


鳥はフラフラしながらも、空へと姿を消していった。突然大慌てでターゲットから離れた司令塔の異変を察知したのか、大群も一時停止した後、司令塔の後を追う判断をしたのか、引き返していった。


「見てみてみてみて!!!ピラニア討ち取ったりいい!...あれ!?俺がさっき投げたピラニアは!?どこいった!?」


帰っていく鳥の群れを見つめる3人をよそに、船のヘリからのそりと現れたのは、服がところどころピラニアに食われてボロボロになっている水浸しのアーサーだった。


「えっとぉ...俺がいない間に何かあった?」


倒れているトーマに寄り添っているユーリンとシャロンを一瞥して、アーサーは不思議そうに問う。


「実はーーー」

「何にもねえよ!」


シャロンの言葉を遮るように、トーマは声をあげた。


「昨日のお前との戦闘で身体のあちこちが痛いんだよ、ボケ!!」

「え...うっそ...マジごめん...」


シュンとするアーサーを一瞥して、フンっとトーマは仏頂面で鼻を鳴らす。


「ふん...借りは返したぞ...バカ勇者...」



小さな声でそう呟いたトーマに「傷が痛むのか」と心配して伸ばしたアーサーの手は強くはたき落とされてしまった。










「俺が案内できるのはここまで。この先を行けば魔王の城があるから。」


港に船を止めて上陸すると、眼前にはすでに禍々しい黒い森が広がっていた。

遠くを見渡すと、森の奥に魔王の城らしきものを確認できる。


「トーマ、本当にありがとな。おまえのおかげでここまで来れたんだ。」

「ふんっあたりまえだな!」


アーサーはおもむろにトーマに手を差し出す。


「ーーー約束は、必ず守るから。」

「...うん。」


手を取って握手に応えてくれたトーマに、アーサーはニコリと笑顔を見せた。


地平線の彼方へ消えていくトーマの船を見届けると、アーサー達は不気味な黒い森の入り口の前に立った。


「よしっ。ーーーーいくぞ!」


こうして激動の海旅を終えた勇者一行は、いよいよ魔王がいる島に足を踏み入れたのであった。

鳳月でございます。

珍しく早めに更新できた今回!とうとう船旅が完結しました!!とうとう目指す魔王城は間近なのか…?!

という所で次回は本編はちょっとお休みです。誰のお話なのかは…お楽しみに!


誤字脱字の指摘、感想のコメント等々いつでもお待ちしております!!

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