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第十二話 : 罠


「…アーサー!ユーリン!早く…起きて!!」

「…んー?シャロン、どうしーーーっ?!」


辺りを見渡すとそこは暗雲が広がって陰湿な雰囲気が漂っており、元の世界の面影は一つもなかった。


そして、四人はすでに無数のゾンビに囲まれていた。


「ちょっ…!?こんなおもてなし冗談じゃないわよ!!」

「まったくだ。おそらくセインの仕業だろうな。

…この数だと逃げ切るのは難しーー」

「あーー…いつパイナップルずし食べるか…今でしょ!!」

「いい加減起きなさい!それとそのセリフもう古すぎるわよ!!」

「うっ…?!え…もう魔界か!!」


ユーリンのげんこつでアーサーはようやく目を覚ました。アーサーの瞳が自分たちを今にも襲おうとしているゾンビ共を捉える。


「!?おい、これって…」

「あぁ、ゾンビだ。気をつけーー」

「すっげぇええ!!本物のゾンビじゃん!うわぁ!初めて見たよ本物!本当に気持ち悪い(・・・・・)んだな!!」

「ちょっと、アーサー!…きゃあ!!」


“気持ち悪い”という言葉に反応し、ゾンビ達は一斉に飛びかかってきた。


四人はそれに応戦する。


「アーサー!!敵を刺激するようなことを言うな!!」

「ごめんな、クラウド…。なぁ、それよりこのゾンビ飼わない?」

「黙って戦え!!」


アーサーはクラウドの言葉に、渋々ゾンビへの攻撃を始めたのだった。



しかしあまりの数の多さに四人は徐々に押され始め、気がつけばすぐ後ろには崖ーーとうとう追い詰められてしまった。


「…まずいな。」


クラウドがふとシャロンの方に目を向けると、ちょうど一体のゾンビが彼女の背後から襲いかかろうとしている。


「シャロン!危ないっ!!」

「えっ…きゃあ?!」


クラウドが慌ててシャロンを背に庇った

ーーー直後。



ゴゴゴゴ………



突然、地響きのような音と共に地面が大きく揺れ始めた。


「何…だ?」


嫌な予感がする…。





そして、次の瞬間ーー。





凄まじい轟音が鳴り響き、状況を理解しないまま、クラウドの身体は宙に投げ出されていた。


「なっ…ーー?!!」


クラウドは咄嗟に視界の端に捉えたシャロンの腕を掴み、引き寄せた。


「シャローーーン!!!クラウドーーーーーっ!!!!」


アーサーの声を最後に、そのまま二人は崖下へと落ちていった。







落ちた先は幸いにも、川だった。

しかしシャロンを庇ったクラウドは水面で背中に強い衝撃を受け、一瞬息が止まる。


シャロンは気を失っているようだ。


クラウドは痛みに堪えながらも、なんとかシャロンを引っ張り川を泳ぎきった。


そして岸に這い上がったクラウドはそのまま地面に倒れ込み、呼吸を整える。


すると少しして、気を失っていたシャロンが目を覚ました。


「…ぅ…うん……私…?」

「…無事か。」

「うん……えっ…クラウドっ?!!嘘っ大丈夫…!!?」

「あぁ。」


クラウドはゆっくりと上体を起こし、不安げな表情を浮かべるシャロンに笑ってみせた。


「そういえば…私達、どうしてこんな所に…?アーサー達は…?」

「…。」


クラウドは無言のまま上を見上げた。

川を隔てた向かい側には、ずっと上に向かって高い崖がそびえ立っている。


「え、まさか…」

「あぁ、落ちたんだ。」

「あんなに高い所から…?!でも…私、何ともーー…まさか、クラウドっ!私のことを庇ったの…?!」


クラウドはシャロンに視線を戻すと、少しだけ微笑んだ。


「…お前が無事で、良かった」

「何もよくない…!バカ…っ」


シャロンはうっすらと涙を浮かべながらクラウドに抱きついた。


その時だった。


「グルルルル…」


不気味な声に顔を上げると、そこにはいつしかの狼の姿をした二足歩行の獣達が二人を取り囲んでいた。


「こいつらは…」

「確か…レーボン村で戦った…?」

「その通ーーりっ!」


獣達の間から現れたのは、四人が同じくレーボン村で戦った手下達だった。


「お前らは…!!」

「あの時は世話になったなぁ、勇者さんよ。

たっぷりとお返しさせて貰うぜ…!!」

「…っ!」


手下達は一斉に銃口を二人へ向ける。クラウドは何とか立ち上がると、シャロンを背に庇った。


「さぁ、覚悟は良いな?」


手下達は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。クラウドは彼らを睨みつけたまま、小さく呟いた。


「…シャロン、戦えるか?」

「うん、もちろんーーあ、あれ?矢が…ない…?!」


シャロンは蓋が取れて空っぽになった矢筒を見て、みるみるうちに青ざめていく。


「川で流されたのか…」

「ごっ…ごご…ごめんなさい…っど、どうしよう…っ?!」


シャロンは今にも泣き出しそうな顔をしている。

見かねたクラウドはシャロンの頭をそっと撫でた。


「…大丈夫、お前のせいじゃない。俺が何とかする。心配するな」

「……うん」


シャロンの表情が少し緩んだ。それを見てクラウドは一先ずほっとする。


…とは言ったものの、どうにかできるものだろうか。シャロンに武器がなく、自分も負傷したこの状況でコイツら相手は、分が悪すぎる。


考えろ…何か…何か打開策は無いか。


クラウドは唇を噛み締めた。




ーーと、その時。




「ちょっと待ちなよ。」



聞き慣れた声が響いた。


その声を聞いた手下達は余裕の表情から一変、恐怖へと変わった。

声の主はもちろんーー


「せっ…セイン様ーーっ!!!」


手下達をかき分けて二人の前に姿を現わしたセインはいつも通りの表情を浮かべている。


「セイン……っ!」

「やっぱり来たんだね。待ってたよ。僕が準備しておいたおもてなしはどうだったかな?」

「…最悪だな。」

「それは良かった!」


クラウドの表情が強張るのを見て、セインは先ほどよりも少し楽しげに話を続ける。


「さて、ここでひとつ君に質問させて貰おうかな。…君は馬鹿じゃ無いから分かるよね?

ーーこの状況で、ここを突破できると思うかい」

「…さぁな。」

「相変わらず正直じゃないね、君は。だったらもうひとつ。僕達に降伏する気は?」


クラウドは不敵な笑みを浮かべると、自信満々に答えた。


「無い!」


「なるほど、どうやら君も馬鹿だったらしい」


セインが左手を挙げると、手下達は再び銃を構えた。セインの表情は変わらない。


「意見を変えるなら今だよ?」

「誰が」

「得策じゃないね。本気で突破できるとでも思ってるのかい?…そんなお荷物まで抱えて?」

「っ!」

「…。」


セインの冷たい眼差しに、シャロンは思わずぎくりとする。


クラウドは少しだけ背後を振り返った。そしてもう一度セインに向き直ると、言い放った。


「…黙れーーっ出来るか、出来ないか、なんて関係ない。やらなきゃならねぇんだよ…っ!行くぞ!!」

「きゃっ!?」


クラウドはシャロンの腕を掴み、走り出した。


「撃てーーーっ!!」


その声を合図に手下達は二人に向かって次々と発砲し始める。

と、ほぼ同時に二人は川へと飛び込んだ。


「あっ…あいつら川に飛び込んだぞ?!」

「正気か?!」


手下達が困惑する中、セインだけは表情ひとつ変えずに二人の飛び込んだ川を見つめていた。


「…やっぱり彼はすごいなぁ。あの身体でまだあれほど動けるとは。その度胸と根性だけは認めるよ。

ーーだけど、それも次で最後だよ、クラウド君。」







何とかピンチを切り抜けた二人はそのまま川に流され、適当な所で岸に上がった。

そして近くに見つけた小さな洞窟に身を隠す。


「これで、しばらく、はっ……ゲホッ…くっ…」

「…無理しないで、ね?」

「あぁ…っ悪い」


シャロンは無事だったものの、川に飛び込む直前、クラウドには数発の銃弾が掠っていた。崖から落ちた時の負傷と重なり、川を泳いだ疲れもあって彼の身体はそろそろ限界を迎えていた。


シャロンは心配そうにクラウドを見つめる。


「クラウド、寒くない…?大丈夫?」

「ん。お前は」

「私は、大丈夫だから…。大丈夫…だから、私の心配なんて…しなくても……っ」

「…シャロン?」


シャロンは俯いてしまった。ぎゅっと握られた拳には光るものが零れ落ちる。

クラウドは困惑した表情でシャロンの顔を覗き込んだ。


「どうしーー」

「ごめん…っごめんね、クラウド…!!私…っ!何も出来なくて…守ってもらってばっかりで…本当に…本当にお荷物だよ…ねっ」


もし彼が自分を庇っていなければ…

もし自分が戦えていれば…

そんな考えだけが頭の中を埋め尽くす。


それを悟ったクラウドは、シャロンに優しく微笑んだ。


「庇ったのも、川へ飛び込んだのも、全て俺が勝手にやったことだ。お前が謝る必要なんてどこにも無いだろ」

「でも…っ!」

「謝らないでくれ。何も心配しなくていい。

お前は絶対に、俺が守るから」

「ーーっ!!」


再び溢れ出した涙をクラウドはそっと拭ってくれた。


途端にカッと顔が熱くなり、鼓動が速くなっていくのを感じるーー


(何…これ…)


シャロンは俯いたままぎゅっと左胸の辺りを握る。


(これ、この感じ…確か、あの時ーー図書館にいた時と…同じ?)


心臓がうるさいほどに音を立て、胸の奥が苦しくなる、この感じ。




以前、自分がアーサーに言ったことじゃないか。




"「心臓が痛い。」"

アーサーはそう言っていたっけ。

シャロンはふっと笑顔を浮かべる。


(…間違っては、ないかもね?)


そうだよ、これはーーー





「…シャロン?」


不意に聞こえたクラウドの声に、シャロンはバッと顔を上げる。


クラウドと目が合う。


「クラウド……」

「うん?」


優しい表情の彼に、シャロンは満面の笑みを向けた。そして精一杯の想いを込めてーー



「ありがとう」



「…えっ…あ」


突然の笑顔に怯んだクラウドは思わずシャロンから顔を背けてしまう。


そんなクラウドを見たシャロンは、もう一度笑顔を見せたのだった。





いつもお読みいただきありがとうございます!

どうも、由豆流に代わりまして、後半戦担当の鳳月でございます。


やって参りました、魔界。

そしてクラウド&シャロンのターン!


次回、シリアス加速の予感…!


今後とも宜しくお願いしますm(_ _)m

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