おやすいごよう
似てる…やっぱり似すぎてる…
俺はセイジと共に、次の授業が行われる広場に移動しながらそんなことを考えていた。もちろんそれは、謎の転校生、ミレア・フリージアのことだ。
早い話、彼女は俺の昔の幼馴染に瓜二つと言っていいほど容姿が似ているのだ。昔…というのも、彼女はすでに亡くなっていて、俺が見た瞬間にミレアがその子に似てるとわからなかったのも、死んでしまってから随分長い時間が経過してしまっていたからだ。
にしても…彼女は一体何者なんだ?あの子が生きているわけはないし、そもそもミレアがあの子だったんなら、すぐにでも俺に気づいて話しかけているはずだ。だけど、俺と目があってもそれらしき反応は無かったし…。同一人物ってことはありえないか…。もしかして姉妹とか?いや、そんなこと聞いたことないし。
すると横にいたセイジが俺を横目で見て、少し低い声で言った。
「…おいレンヴィル。さっきから何ブツブツ言ってるんだ。復学そうそう、変な人だと思われるぞ」
その言葉に俺はピタッと固まる。
「え、俺なんかブツブツ言ってた?」
「ああ。あの子がどうとかなんとか…」
セイジはサラッと答えた。どうにも俺は自分でも気づかないうちに心の声を口に出してしまっていたらしい。セイジは俺が苦笑いを浮かべるのを見て、まるで子どもに呆れた親のようなため息をついた。
「あのミレア・フリージアって子のことだろ。レンヴィル、あの子と目があってからずっと考え込んでるもんな。考えるのは別に勝手だけど、でも今からは実戦授業だ。ボーっとしてたら怪我するから、今は切り替えた方がいいぞ」
「おう…そうだな」
「授業が終わったら僕にも話してくれよ。一緒に考えるからさ。久しぶりに会った親友の悩みだ…手伝わせてくれ」
言ってる言葉とは裏腹に、セイジはそっけない態度で言った。だが、その言葉に感銘を受けた俺は素直に感謝の意を述べた。
「ありがとな、セイジ!」
セイジは前を向きながらニッと唇の端を上げて言った。
「おやすいごようだよ、レンヴィル…」