レイラ・サイネリア
ーあの人がレンヴィル・グリフィアか。なんだかイメージと違うな…ー
わたしは右後ろに座る少年をチラリと見てそう思った。
あのアークスをわたし以外に倒した人って聞いた時は、アークスよりも大柄で筋肉質の男性を頭に思い浮かべてたものだったが、実際の人物はそれに比べると随分と華奢だった。短めの黒髪とくるくる変わる表情ががやんちゃそうな印象を与えている。
やっぱりどこからどう見ても、アカリファ先生があそこまで絶賛する人物には思えない。
…いやいや、落ち着け〜わたし。第一印象で…おまけに話してもいないのにその人を判断してしまうなんて、それはいけないことだよ…うん。わたしだって味方は一人でも多い方がいいし、ここは一度話す機会をうかがわないと…。
そう思っていた時だった。ふいに横から伸びてきた手がわたしの肩をポンと叩いた。考えごとをしていてまったく気づかなかった。
わたしが驚いてバッと振り返ると、そこにはこちらをまっすぐに見つめている女の子がいた。
「あ…ごめんなさい。驚かすつもりはなかったの…」
綺麗なソプラノの声だった。よく見ればその容姿も相当な美形だ。スッととおった鼻筋と腰までとどくほど長く、しかしキチンと揃えられた薄紫色の髪が大人びいた印象を与えている。
思わず見とれてポーっとなっていたわたしに、女の子は再び「あの…」と声をかけてくれて、わたしはあわてて現実世界へと意識を引き戻した。
「い、いえっ!こちらこそごめんなさい。ちょっと考え事してて…!」
それを聞いて女の子は再び驚いた顔になるが、今度はすぐに顔をほころばせ、クスッと笑った。
「わたしはレイラ・サイネリア。レイラって呼んで。よろしくねミレア」
「う、うん!よろしく!」
わたしはレイラの白く細い手を握った。レイラは再び目を細めて静かに笑った。
同時に、レイラの胸元に掲げられたピンバッチが、金の縁取りをいっそう美しく光り輝き、二人を照らした。