涙
2、涙
放課後の教室。
部活がまだ決まってないため席に横になる。
誰もいない教室、一人の空間。を壊してひとりの少女が入ってきた。
「…真城さん。どうしたの」
「忘れ物…取りに来ただけ」
うーん…。なんか苦手なんだよなこの人。
「そっか、何忘れたの?」
俺が問いかけると真城さんはしばらく俯いた。
「病院に行くから――――カード取りに来た」
「えっ…真城さん具合悪いの?」
意外だった。そんなことないだろうと冗談交じりで問いかける。
「…そうね――――あなたになら言ってもいい。」
そう言うと真城さんは俺の目をまっすぐに見て口を開いた。
「私…心臓病なの。20歳まで生きられない」
俺は息を飲んだ。冗談だろ?そう聞きたかったが冗談ではなさそうだ。
俺は何も言えなかった。彼女が抱えるもの…それが命、恐怖。
「あの…えと―――――。」
俺の心情を悟ったように真城さんは続けた。
「いいの、気にしないで。私が死んだって悲しむ人はいない。私はずっと一人。これからもね」
どこか悲しげな目でそう言うと、真城さんは教室を出ていった。
なぜだろう。真城さんは後ろを向いて出て行ったはずなのに
俺には彼女に流す涙が見えたような気がした。
いや、それはきっと彼女の心を写したのだろう。
俺は追うこともできず、その場に立ち尽くすだけだった。