忌み子と謎の二人組
依頼板の前でぶらぶらしているチェーニ。
そこには数々の依頼が貼られている。
貼られているが、彼は依頼を受けることができない。
彼の入局に反対するものが数多くいるせいだ。
さすがのギルドマスターも、ギルドメンバーの殆どに反対されては、
おいそれと通すわけにはいかない。
で、彼は暇を持て余しているのだ。
その時、勢い良くギルドのドアを開けるものがいた。
「おー! すっげー! これがギルドかー!」
「リディ、ちょっと静かにしてや」
「せやかて、憧れのギルドなんやから、ちっとは許してや、テー」
(うるさいな)
チェー二はそう思った。
リディと呼ばれた少年――リドルのテンションがロートに似ていたからかもしれない。
と、リドルはチェーニ見ると、目を輝かせて寄ってくる。
(げっ)
チェーニは子供が苦手だ。
特にリドルぐらいの年頃の子供が。
もう似た目は殆ど大人なのに妙に純粋で、自分よりはるかにか弱い。
そのくせ一人前の扱いを受けたがる。
下手に邪険に扱うと後が面倒だし、どうすればいいか分からない。
彼が忌み子として恐れられるようになってから、近づいてくる者は格段に少なくなったが、
それでも彼は子供にはなるべく近寄りたくない。
それなのにリドルはチェーニを前にして、はしゃぎ出した。
「すっげー! オッドアイやん、格好えー!」
チェーニの背中ををバンバン叩く。
その行為には信頼の気持ちが込められているのだが、
チェー二が気づく訳もない。
と、テーと呼ばれた少女――テラがゆっくり歩いてきて
「リディ、初対面の人に失礼やろ」
そう言った。
(これで俺から離れるだろう)
チェー二が安堵したのも束の間、
テラはチェーニをじっと見て
こう言った。
「ちょお、しゃがんでくれん?」
チェー二が言われた通りしゃがむと、
「耳ー! めっちゃもふもふやん、きゃー!」
狂ったように耳触りまくる。
(勘弁してくれ)
チェー二はロートを見る。
そこには自称親友が必死に笑いをこらいている姿があった。
「お嬢ちゃん達、何しにきたんだい?」
呆れ顔でカルマが声をかける。
「あ、うちら試験受けにきたんやん」
「せやせや」
「じゃあ、そこの赤髪に聞いてくれ」
チェーニは言った。
もはやロートを睨む気力もないようだ。
トテトテと走っていく二人を見てチェー二は椅子に座った。
「大変だったな」
カルマが苦笑する。
「ありがとう」
お礼の言葉に少し止まっどった様子のカルマ。
でも、
「ありがとう」
チェーニが繰り返すと恥ずかしそうに
「どういたしまして」
と返した。