読書は窓辺で 【月夜譚No.399】
掲載日:2026/04/26
窓辺で読書をするのが好きだ。自然の光の中で文字を追い、時折外の風景を眺めて物語の情景に思いを馳せる。
暖かな季節には、窓を開いて風を感じるのも一興だ。時たま強い風に煽られてページが捲れてしまうこともあるが、頬を撫でる風は心地が良い。
春の陽射しについうとうとと舟を漕いでいた彼女だったが、小鳥の鳴き声が耳に入ってはっと目を開ける。何処まで読んだのだったかと膝の上に広げたページに目を落として、ふふっと笑みが零れた。
物語を刻む文字の上に、一片のピンクの花弁が載っている。それがなんだか微笑ましく思えたが、ふと桜はもう散ってしまったのではないかと思い至って、窓の外に目を向けた。
しかしながら、そもそもこの窓から見える位置に桜の木は存在せず、どれほど探したところで見つかるはずもない。
何処かでまだ咲いている木があるのか、それともぼんやり見ていた夢から飛び出てきたのか。
彼女が花弁を摘まんで撫でたページには、満開の桜の描写が咲いていた。




